若妻の匂いのレビュー・感想・評価
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女優は綺麗。映像も綺麗。 で、物語はエロティックに意味不明。
WOWOWプラス(スカパー!)にて。 『青い体験』『続・青い体験』のサルヴァトーレ・サンペリ監督作品(兼共同脚本)。 ※映画.comの説明に “監督は「スキャンダル愛の罠」のサルヴァトーレ・サンペリ” と書かれているが、S.サンペリが撮ったのは『スキャンダル』(‘76)であり、『スキャンダル愛の罠』(‘85)の監督はジュゼッペ・パトローニ・グリフィである。二人が同一人物ということはないと思う。 年の離れた弁護士であり議員でもある(のか?)夫と、体が不自由な義母と暮らしている若妻アンナ(フローレンス・マンゾッティ)。 その家には若いメイドのアンジェラ(カトリン・ミケルソン)が住込みで働いている。 夫は、若くて綺麗な妻に執心する様子もなく、昼夜問わず忙しく働いている。 アンナは義母の看病を一人で行っているようで、抑圧のなかで生活している。 そんなアンナの性欲を刺激したのは、勝手口から若い軍人を連れ込んでいたアンジェラの姿だった。 わがままで横柄な義母は、若いメイドに対しても辛辣だ。その義母にアンジェラが男を連れ込んでいたことを隠したアンナに、アンジェラは礼を言い、徐々に関係を接近させてくるのだった。 ハンガリーの動乱の様子がテレビで報じられ、自由闘争についての議論が交わされる場面があるので、時は1950年代の後半だろうか。 アンナは修道院の禁欲生活で育ったらしい。小麦粉工場で管理職として働いている姉のもとを訪ね、夫の無関心やメイドの態度などの愚痴をこぼすと、姉に労働者階級から見れば恵まれていると、言われる。 そんな、社会的背景を織り込んだりしているのだが… 結局は、ウブな若妻を奔放なメイドが耽美の世界に誘う「性の手解き」ものであり、最後に主客転倒させる逆転サスペンスでもある。 さて、金持ちが住込みの家政婦を雇う風習は世界中に見られる。 日本でも昭和の高度経済成長の頃までは、こういう雇用関係が残っていたのではないだろうか。 貧しい家庭の女性が給料と衣食住を確保する方法として、貧富格差の大きい社会では合理的な関係だったのかもしれない。 そんな、若い女性がメイドとして同居する環境にエロティックな想像を巡らせるのは、スケベ男のサガだろう。 清楚な淑女がきっかけがあれば性に開放されていくというのもまた、スケベ男の煩悩によるファンタジーだろう。 この映画では、若妻アンナとメイドのアンジェラとの間に確執が生じるのだが、その二人の攻防の展開が唐突で解りづらく、彼女らの心理の変化も説明がつかないのだ。 アンジェラが突然アンナをサディスティックにいじめ始めるのも意味不明なら、それを受けているアンナの心理描写も不充分だ。 S.サンペリは、ヒロインがイジメられるシーンが好きなようだ。 究極は、アンナが関係をもった行きずりの男をアンジェラが家に招き入れて、そこで展開する乱交の宵のシークェンスだ。 どちらがどちらを刺激しているのか、お互いが何を求めているのか、理解しがたい。 アンジェラが、男と楽しんでいたはずなのに最後の一線を拒むところに強い違和感があったが、そこをアンナに抑え込まれて「自業自得よ」と言われて犯されてしまう… 最後、アンジェラは妊娠したためにアンナの家を出ることになるので、性に奔放に見えた彼女もメイドを続けるためには妊娠するわけにはいかなかったのかと、やっと解るのだ。 そういえば、家に連れ込んだ若い軍人ともその一線は越えていなかったから、妊娠のリスクには相当気をつけていたのだ。 一方のアンナも妊娠したようだが、夫は喜んでいる。はてさて、誰の子供を身籠ったのか… 貧しい家庭に生まれた女性がメイドとして働く格差社会の縮図がこの映画のテーマではない。 女優の裸をいかに美しく撮ってみせるかが、この映画のテーマであり、価値でもある。 産毛に光が反射して神々しいほどの裸体。 池に入って水面に映る自らの股間を見ながら自慰をするシーンは、二人の若い女性が向かいあっている人物配置によって、淫靡というより健康美さえ感じる。 逆に、金網越しに愛撫するシーンは、淫靡で淫乱で刺激的だ。 女優のアップを多用することで、表情の演技力が稚拙な面を補って、美しさを際立たせてもいる。
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