わが谷は緑なりき
劇場公開日:1950年12月29日
解説
「静かなる男」「怒りの葡萄」などの名匠ジョン・フォードが、19世紀末ウェールズの炭鉱町で暮らす家族の絆を1人の少年の目線から郷愁たっぷりに描き、1942年・第14回アカデミー賞で作品賞、監督賞など5部門に輝いたヒューマンドラマ。イギリス、ウェールズ地方の炭鉱町で暮らすモーガン家の男たちは、まだ10歳の末子ヒューを除く全員が炭鉱で働いている。貧しくも平和な日々を過ごす彼らだったが、炭鉱の経営者が賃金カットを断行したことから、組合結成を巡って父と息子たちが対立し、一家はバラバラになってしまう。末子ヒューを演じるのは、後に「猿の惑星」シリーズなどに出演するロディ・マクドウォール。
1941年製作/119分/アメリカ
原題:How Green Was My Valley
配給:セントラル
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2023年3月21日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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■19世紀末、ウェールズの炭鉱町。
モーガン家の男たちは炭鉱で働いていて、貧しいながらも平和に暮らしていた。だが炭鉱経営者が賃金カットを断行したことから波乱が生じていく。息子たちは家を出て、家族は末っ子・ヒューを残してバラバラになってしまう。
◆感想<Caution! 結構内容に触れています。>
・学はなくても、一家を支えて来たモーガン家の父親の凛とした姿が素晴しい。六男、一女そして働き者の妻からの敬愛を受ける姿。
ー 夕食を囲むシーン。父親の前に肉料理が妻から供され、父親はそれを子供達に切り分けるシーン。食事中は私語厳禁である。だが、皆嬉しそうに食事を摂っている。-
・だが、彼らが働く炭坑は賃金をカットしていって・・。
ー 時代的には仕方がないのだが・・。労組を結成しようと動く兄たち。だが、父親はそれに反対する態度を取る。故に、父親に対し炭鉱夫たちが取った態度に毅然として、雪降る中モーガン家の母親が言い放った言葉。”私の夫に何かあったら、許さないよ!”この父にしてこの母在りのシーンである。だが、その帰り際、母と末っ子のヒューは凍てつく川に落ちてしまう。-
・一方、姉のアンハードは清廉な牧師に恋するも、(そして、牧師も彼女に惹かれつつも、神の道を選んだと言って、彼女の想いを判りつつも身を引く。が、彼の想いは後半の教会での民に対する言葉で爆発する。)炭坑の主の尊大な息子との結婚を承諾するのである。
■今作を彩るのは、冒頭から炭鉱夫たちが出勤、退勤時に奏でる歌声である。同じく炭鉱夫たちが結成した楽団が名誉を得る「ブラス!」は、明かに今作の影響を受けている。
・そして、春を迎え、療養していたモーガン家の母親が回復するシーン。炭鉱夫たちはモーガン家の前に参集し、祝いの歌を捧げるのである。
ー それを、恥ずかし気に、けれども嬉しそうに、皆の前で聞く婦人の姿。又、ヒューも牧師の支えにより、歩く事が出来るようになる。-
・ヒューが、村で初めて学校に通うシーン。愚かしきジョナス先生の言葉にもめげずヒューは学校に通うが、当然の如く級友、先生からの嫌がらせを受ける。
ー ココでも、炭鉱夫たちは、ヒューの窮状を救うのである。多少、荒っぽいが・・。-
■学校を首席で卒業したヒューが選んだ職業。それは炭鉱夫であった。
ー モーガン家の彼の両親はそれに驚くが、止めない。-
・兄、イヴォールが炭鉱事故で亡くなるも、彼の子供を美しき妻ブロンが産むシーンも印象的である。
・そして、アンハードが夫の元を離れ一人暮らし始めた時に訪れたヒューが言った言葉。更に根拠のない噂を言いふらす町の人々に言い放った牧師の怒りの言葉。
ー 根拠のない噂を言いふらしていた女性達が、眼を伏せる姿・・。-
■だが、モーガン家の父も炭鉱事故で命を失う。
<今作は、或る炭鉱の町で生きる家族の流転の人生を描いた作品である。
だが、今作の根底には、人間性肯定の視点に基づく、家族の絆をベースにした深い感動が込められている。それが素晴しいのであり、心に響くのである。
初見であるが、ジョン・フォード監督の作品の中の傑作の一品であろう。>
2022年8月13日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
1941年。ジョン・フォード監督。イギリス・ウェールズの炭鉱町。誇り高き炭鉱夫とその家族の物語を末息子の視線から描く。ストライキ、事故、合唱隊、教会、階級という職業や共同体のあり方と、学校、結婚、恋愛、出産、父離れという家族のあり方がそれぞれ時に分裂し、特に結合しながら複雑にからみあっていく。決して一枚岩にならないところがすばらしい。
ロケーション最高。坂の上の炭鉱とその途中にある労働者の街並みの物語上の効果がすばらしい。普段は仕事終わりの炭鉱夫たちが歌いながら坂をだらだらと降りてくるのだが、一端なにかあると、人々は息せき切って坂を駆け上がる。歌が好きな人々が時折合唱するのもすばらしいし、主人公が抑揚をつけて家族の名を呼ぶのもすばらしい。冒頭で姉の名を呼んでいた主人公がラストで事故にあった父を探すときにその独特の呼び方をする。心が震えます。
歩けない主人公が小高い丘の上で花に囲まれて歩き出すシーンは「ハイジ」そのもので、フォード監督が宮崎駿監督(アニメ版)より早く世界的にヒットしたハイジの原作を自分のものにしていることがわかる。むしろ、原作にはないアニメ版「クララの意気地なし」に近い関係が描かれているのだから、この映画を見て宮崎駿監督の数々の名場面が着想されたのかもしれない。炭鉱町を扱った「ラピュタ」には鉱山の男の喧嘩シーン(ボクシング的)があったし。ただし、宮崎監督は一般的に近代黎明期の「蒸気」の時代に執着しているので、特定のこの映画ではないかもしれないが。
2021年11月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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西部劇映画で有名なジョン・フォード監督がこのようなヒューマンドラマを作っていたとは驚きである。
炭鉱で働く家族の話で、50年間住んでいた炭鉱の町を去る主人公を通して、子供の頃の思い出が語られる。炭鉱のスト、姉の結婚や学校でのいじめ問題もあるが、中心は家族愛で、泣くことはなかったが実に感動的な物語だ。成績がよかった主人公が進学を諦めざるを得なかったのが切ない。
その主人公の子役のロディ・マクドウォールが可愛い。大人になってからも結構活躍しましたね。猿の惑星シリーズでは猿にも変身しました。