わが谷は緑なりき

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説

「静かなる男」「怒りの葡萄」などの名匠ジョン・フォードが、19世紀末ウェールズの炭鉱町で暮らす家族の絆を1人の少年の目線から郷愁たっぷりに描き、1942年・第14回アカデミー賞で作品賞、監督賞など5部門に輝いたヒューマンドラマ。イギリス、ウェールズ地方の炭鉱町で暮らすモーガン家の男たちは、まだ10歳の末子ヒューを除く全員が炭鉱で働いている。貧しくも平和な日々を過ごす彼らだったが、炭鉱の経営者が賃金カットを断行したことから、組合結成を巡って父と息子たちが対立し、一家はバラバラになってしまう。末子ヒューを演じるのは、後に「猿の惑星」シリーズなどに出演するロディ・マクドウォール。

1941年製作/119分/アメリカ
原題または英題:How Green Was My Valley
配給:セントラル
劇場公開日:1950年12月29日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第14回 アカデミー賞(1942年)

受賞

作品賞  
監督賞 ジョン・フォード
助演男優賞 ドナルド・クリスプ
撮影賞(白黒) アーサー・C・ミラー
美術賞(白黒)  

ノミネート

助演女優賞 サラ・オールグッド
脚色賞 フィリップ・ダン
編集賞 ジェームズ・B・クラーク
作曲賞(ドラマ) アルフレッド・ニューマン
音響録音賞  
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映画レビュー

3.5炭鉱町で毅然と生きた人々を描いた人間ドラマ。

2024年10月15日
PCから投稿

19世紀末から20世紀初頭にかけて、ウェールズの炭鉱労働者の一家の歩みを、末っ子だった男性の幼いころの回想という形で描いた、ヒューマンドラマ。

老父と5人の兄が働く炭鉱町。賃下げをきっかけにしたストライキに、老父は参加しなかった。末っ子のヒューと仲良くなった牧師は、姉アンハードと思いを寄せあうが、神への信仰を優先する。

貧しい田舎町でも、誇りを持って生きる人々を描いたヒューマンドラマ。炭鉱労働者のコミュニティで、慎ましく生きる家族に訪れた変化を、郷愁を誘うタッチで、しみじみと、かつ、堂々と描いた人間ドラマだ。

甘い話と言われればそうかもしれないが、古典的なハリウッド映画らしい感動がある。多くの悲しみに遭遇しても、毅然と生きる人生を、悲痛ではあるが、実に美しく描いたドラマだ。

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瀬戸口仁

4.0映画造りの見本市

2024年10月12日
PCから投稿

構図とカメラポジションをガチガチに決めて、大道具、小道具も念入りに用意したうえで、出演者の動きやセリフ回しから間の取り方に至るまで、撮影と演技に必要な全ての要素を完璧に揃えて監督のイメージ通りに一糸乱れず撮影した、というような作品です。

換言すれば完全無欠な段取り映画であり、さすが巨匠のお手並みがうかがえて映画学校の教科書です。

重厚な家族映画が大河的に展開しますが、単純な王道ストーリーの割に一つ一つのシーンが短いのでテンポが非常に早くストレスを感じません。

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越後屋

5.0わが思い出も緑なりき‼️

2024年9月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、DVD/BD

泣ける

楽しい

興奮

わが敬愛するジョン・フォード監督の超、超名作‼️ いいなぁ‼️"西部劇の神様" ジョン・フォード監督が描いた人間ドラマとしては「怒りの葡萄」と並ぶ作品だと思います‼️いいなぁ‼️19世紀のウェールズの炭鉱で働く家族の物語‼️いいなぁ‼️強い家族愛で結ばれながらも、ストライキ、落盤事故、長女と牧師の恋などの様々な出来事を、末っ子であるヒュー少年の視点で描いています‼️いいなぁ‼️ある者は亡くなり、ある者は谷を去っていく。環境問題が根底にあると思うのですが、それを社会派的に小難しく描くのではなく、あくまで人情、人間のドラマとして温かい眼差しで描いているところが、さすがはフォード監督‼️いいなぁ‼️その詩情性と郷愁性がたまりません‼️いいなぁ‼️古き良き時代のウェールズの炭鉱町を再現したセットや、そこにかぶさるコーラス主体の音楽の使い方もホントに素晴らしい‼️いいなぁ‼️凍りつく池に落ちて足を動かせなくなったヒューが、牧師の励ましで歩けるようになるエピソード‼️いいなぁ‼️ヒューがボクシングを教わり、いじめっ子を打ちのめすシーンのユーモアとカタルシス‼️いいなぁ‼️長女と牧師の胸を打つ悲恋劇‼️いいなぁ‼️一つ一つのエピソードが心和ませ、胸を打つ素晴らしさで、思い出すだけでも目頭が熱くなる‼️いいなぁ‼️ホントにホントに大好きで大好きでたまらない作品‼️そして長女を演じるモーリン・オハラの、モノクロ画面なのにその自慢の赤毛が映える美しさ‼️さすがは "総天然色の女王" ですね‼️いいなぁ‼️

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活動写真愛好家

5.0かつて緑の谷であった心のふるさと

2024年6月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、DVD/BD

悲しい

幸せ

萌える

感想

ウェールズ地方の炭鉱の街にプロテスタンティズムに基づく敬虔な信仰心を持ちながら世代を越えて生活を営んできたある家族の姿を通して、当時の文化と移り変わる時代の変革を反映しつつ、時代がいくら変わろうとも、永遠に変わることのない人間的良心とは何か。また家族の絆とは何かを、周囲を取り巻く様々な人間模様を含め、淡々とした視点で描いた一大人間叙事詩とも言える作品である。

ジョン•フォード監督の考えるアメリカ合衆国の成り立ちの根幹を担う英国民の移民に至る歴史的かつ代表的な経緯と変遷の中にあったエピソードが気に入り、ひとつの家族が様々な事情により世界に分散して、変化していく様を移民の歴史とオーバーラップさせる描写を意図したのではないかという印象を持った。さらに全ての登場人物の心象風景の描写と人間の機微、何処にあっても変わらない確固たる信仰。またプロテスタンティズムをバックボーンとする人々の信念とは何であるかを、説明し述べることなく、事象として映像化し、観る者に静かに訴えかける。映画を観ている者がどのように感じ考えるか、という事が重要である。という主張を一貫して最後まで貫き通しているところが監督らしい。素晴らしいと思う。この映画が大好きな理由である。

日々の信仰から創作されてきた讃美歌が生活の中で自然と歌われ、さらに美しく豊かな民謡合唱の数々と美しいウェールズの炭鉱風景やボタ山のシーンが相まって、心の中の故郷の風景とはこういうものだという気持が映画を観るアメリカ人に芽生えるのだろう。美しいウェールズの風景に溶け込んでいる合唱に心を癒す。(実際は第二次大戦の影響でウェールズロケは出来なかったようだ)

冒険家•小説家であるC•W•ニコル氏とありがたくも直接話をする機会があった。ニコル氏によると産業革命から19世紀の末頃までに石炭を燃焼させるためにウェールズ地方では森の木が伐採され、美しい森が無くなってしまった時期があった。雨が降ると土砂崩れや鉄砲水が発生するようになったため、山に植林を開始して現在はある程度昔の姿に戻ったという。本作品を制作した頃はかつてあった森も無くなってしまったため、原作者のリチャード・ルエリンはかつて緑の谷であったのは懐かしい思い出として本のタイトルをわが谷は緑なりきとしたという。

我々日本人にはキリスト教は余り馴染みがないかもしれない。キリスト教の中にもローマン・カトリックやイギリス国教会、ロシア正教会等、様々な分派があるが、この映画に描かれているのはカルヴァン派メソジスト(プロテスタント)教会に属する教会の姿が描かれており別名、改革派長老教会とも呼ばれている。

余談だが、
司馬遼太郎は「明治という国家」の中で、武士道とプロテスタンティズムは思想的に似かよう部分が多く明治維新期、特に佐幕派の藩から出でた者にプロテスタント系キリスト教者になる者が多く、その代表的人物に維新前に脱藩密航状態で渡米し、人脈に恵まれ、メソジスト系のアマースト大学で神学を修め、森有礼により明治初の米国への全権使節団の通訳に抜擢、その功により日本に戻り、同志社を創立した新島襄と札幌農学校時代にアマースト出身のウィリアム•スミス・クラークの思想に影響を受け、のちに国際連盟事務総長を務め「武士道」を著作する新渡戸稲造を挙げている。

プロテスタンティズムはまんざら、全く理解できない考え方ではなく、むしろ日本人には親しみやすい信条を持っている宗教なのかもしれない。かく言う自分もキリスト教者ではないが、本作品より思想的影響を受けて今日の人間性に至っている事は間違いない。

この映画は現代社会に生きる上でも、人として最も大切な事はなにかを人間模様のドラマを通して訴えている。仕事(労働)について。人間関係について。家族の在り方について。揚げるときりがないが、観る度に本質を教えられるような気がする。観る年齢により感想は変わる。繰り返し観るべき映画である。

主演
グリュフィード牧師役 ウォルター・ピジョン
「禁断の惑星」 本作品が代表作。

アンハードモーガン役 モーリン・オハラ
「静かなる男」「スペンサーの山」でも有名。
監督のお気に入り女優。

ギルムモーガン役 ドナルド・クリプス
「緑園の天使」 「スペンサーの山」名脇役。

ブローウィン役 アンナ・リー
「騎兵隊」
「サウンドオブミュージック」
トラップ家の舞踏会時の招待客役 さよならごきげんよう"演奏時、エリナー・パーカー、クリストファー・プラマーの隣、アップで映る。しかしクレジットはシスターマルゲリータになっている。

ヒューモーガン役 ロディ・マクドウォール
「猿の惑星」 本作で名子役として名を上げる。

⭐️5

生涯ベストワン作品

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Moi

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