「古典を踏まえ映画の特長に拘ったゼフィレッリ監督のシェークスピア劇」ロミオとジュリエット(1968) Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5古典を踏まえ映画の特長に拘ったゼフィレッリ監督のシェークスピア劇

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、映画館

レナート・カステラーニ監督のイタリア映画は、古典的な演出の骨格の確りした作品だった。フランコ・ゼフィレッリ監督は、形式に固執しない、より現代的で自由な演出でシェークスピア劇を創造する。原作の設定年齢に合わせた十代の若い俳優を登用して、その若さを映像に刻む。その要求に応えた、撮影当時16歳のオリビア・ハッセーと17歳のレナード・ホワイティングの好演が、この映画最大の魅力である。特にジュリエットのイメージを可憐に瑞々しく演じたハッセーが素晴らしい。舞台やバレエではある程度の名優が演じる時代に、新人の若い男女をキャスティングしたゼフィレッリ監督の意図が明確にわかる場面がある。有名なバルコニーの場面で、オリビアとレナートは何度も何度も唇を重ねる。これを大の大人が演じたらどうだろう。若気の至りの迸る感情に素直な男女の表現がここにある。シェークスピアが「ハムレット」で純粋な人間の悲劇を描いたとすれば、「ロミオとジュリエット」は若さゆえの未熟さの悲劇を描いたのではないだろうか。青春映画の形式に拘ったことで、よりシェークスピアの意図した本質に迫るゼフィレッリの名作といっていい。冒頭の中庭を挿んで突如美しい顔をズームアップするジュリエットの見せ方。仮面舞踏会のふたりが歩み寄り一目惚れする瞬間のオリビア・ハッセーの無垢な美しさ。ニーノ・ロータ作曲の哀愁のメロディーが初めての口づけに高鳴り、驚き微笑むハッセーの表情の演出と演技。
1960年にロンドンで「ロミオとジュリエット」を舞台演出し名声を得たゼフィレッリが、映画の特質と特長を生かした見事なシェークスピア劇。オリビア・ハッセーのジュリエットとニーノ・ロータの音楽が永遠の魅力を放つ。

[追加修正します。初鑑賞時(1976年3月20日)の思い込みで主演ふたりの年齢を間違って14歳と16歳に低く断定してしまいました。オリヴィア・ハッセーは1951年生まれですから撮影時は16歳頃で、前年生まれのレナード・ホワイティングが17歳でした。お詫びし、訂正させて頂きます]2023/5/4

Gustav