「【不況で職を失った夫婦が、厳しい現実の中”ど根性”で自分達のレストランテをオープンする物語。我が愛する「かもめ食堂」は絶対に今作品に影響を与えれらていると思った作品でもある。】」浮き雲 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【不況で職を失った夫婦が、厳しい現実の中”ど根性”で自分達のレストランテをオープンする物語。我が愛する「かもめ食堂」は絶対に今作品に影響を与えれらていると思った作品でもある。】
■不況のフィンランドのヘルシンキが舞台。
市電の運転手のラウリとレストランで給仕長をする妻・イロナ(カティ・オースティン:常連さんですね。)はある日、リストラに遭い、同時期に失業する。
ラウリはロシアへ行くバス運転手へ転職しようとするが健康診断で異常が見つかり、職も免許も失ってしまう。その後も2人にさらなる不運や災難が訪れ…。
◆感想
・アキ・カウリスマキ監督の、当時の手法である、各シーンを短カットで繋ぎながら破綻なく物語を見せる手法が素晴しい。
ー そこで、描かれているイロナとバス運転手の夫の突然の馘首に、戸惑いつつ必死に生きようとする姿の描き方が、”無表情”な二人の姿から確かに伝わって来るのである。-
・イロナとバス運転手の夫が、困惑しながらも、職を必死に求める姿を抑制したトーンで描く巧さ。
・どん底の中、イロナが幼き男の子の写真が収められた写真立ての傍で、涙するシーン。
ー 何も語られないが、鑑賞側にはイロナ夫婦の哀しみが伝わるシーンである。-
・そして、且つてイロナが働いていたレトランテの問題児コック、ラユネン(マルク・ベルトラ:かもめ食堂を愛する人には直ぐに分かる”コピ・ルアック”オジサンである。)が、漸く皿洗いの食を得た安食堂にやって来るシーン。
”少し、ノンビリしようと思っていたら、職が無い・・。”
<今作は、アキ・カウリスマキ監督の中期の秀作である。
不況だったフィンランドで、職を失っていった人々がど根性で、新たな食堂”レストラン・クック”を彼等を雇っていた元レストランテのオーナーの出資の元、オープンし、最初は全然お客さんが来なかったのに、ラストでは、満員になっているシーンは心に沁みるし、これは”「かもめ食堂」のラストシーンと同じだよなあ、と思った多幸感溢れる作品である。>