浮草物語のレビュー・感想・評価
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人の愛に溢れた傑作
Z級映画「ワニゲーター」か本作かどっちを観ようか悩んでいましたが今日はこちらを。この2作を天秤にかける私も大概ですが、良い時代になったものです。
動の黒澤、静の小津。とはよく言ったもので、まあサイレント映画なんだからそらそうなんだけど。とにかく表情が豊かで、お口パクパクしてる場面でも何言ってるか不思議と伝わってきます。派手な動きをせずとも、表情と仕草でしっかりと感情を伝え、観客に感情移入させる。俳優さん達も素晴らしいです。
人の愛であったり、優しさであったり、心温まるシーンで溢れており、観ているだけで幸せになれます。自分の親すら生まれていない時代の映画なのに、なぜか懐かしさを感じ、「あぁ、この時代に戻りてぇなぁ。」などとわけのわからんことを考えてしまいます。それは「郷愁」でもあり、「憧れ」でもあるのかも。
現代を生きる人達に伝えたい、大切なものが詰まった映画。愛とはいかに深いものであるか。人と人とのすれ違いの切なさ。ヒューマンドラマの傑作であります。
次はワニ観る。
【小津安二郎監督が描き出す旅芸人の座長が愛人に産ませた子を思う気持ちと、旅芸人一座の人々の善性溢れる作品。小津監督はトーキーの頃から凄い監督だった事が判る作品でもある。】
■興行で小さな田舎町を訪れた旅芸人一座。ここには座長・喜八の昔の女・おつねと息子の信吉が暮らしていた。一座の看板女優で喜八の愛人・おたかはおつねと信吉に嫉妬し、若手女優のおときに信吉を誘惑させる。だがおときは次第に本気で信吉を愛し始める。
◆感想
・瑕疵なき、人間の善性溢れたストーリーである。
・戦後、小津監督がこの作品を「浮草」としてセルフリメイクした事が良く分かる程、お気に入りの脚本だったのだろう。
■小津監督は、戦後の「東京物語」を始めとした家族愛、親子愛をローアングルの固定カメラで撮った諸作品で名を上げたが、今作を見ると戦前からその萌芽があった事が良く分かる。
<ラストシーンも良くて、若手女優のおときに信吉を誘惑させようとした一座の看板女優で喜八の愛人・おたかに対し、一座を解散した喜八が掛けた優しい言葉。
又、その前に喜八が本当の父だったと告げるおつねが信吉に、如何に喜八が信吉を思っていたかを告げるシーンや、喜八がおつねに”おときと信吉を頼む”と言って、一人去るシーンなどもとても良い作品である。>
小津安二郎監督の最高傑作の一本‼️
やっぱりいいなぁ〜「浮草物語」‼️私は30年くらい前に初見して以来、「晩春」や「東京物語」もいいんだけど、このサイレント映画の名作に愛着があるんですよね〜‼️ 1933年製作の「出来ごころ」(これも名作!!)に続き、坂本武さん演じる喜八を主人公にした一編です‼️今回の喜八は旅回り一座の座長。一座を率いた彼が、昔、自分が男の子を生ませた女おつねのいる信州の町に興行に行く。現在の愛人である女優おたかがやきもちを焼いて、妹分の女優おときに喜八の息子・信吉を誘惑させるが、若い二人は本気で愛し合うようになる。やがて信吉はおじさんだと聞かされていた喜八が実の父だと知る。喜八はおたかと一緒にまた汽車で去っていく・・・この作品も後期の小津作品と同じくテーマは "親子" ‼️そんな親子関係話を重くしないようコミカルに人情味たっぷりに描いております‼️まず登場人物たちが全て魅力的というか、いい人ばかり‼️ちょっと頼りないが人情に厚い男・喜八‼️おつねは旅先から絶えず仕送りをしてくれていた喜八に感謝している‼️おたかも喜八を愛すればこそ‼️おときも信吉を最初は「あんな子供なんか」と馬鹿にしていたが、本気で愛するようになる‼️なんか、みーんな微笑ましくて愛おしい‼️冒頭、喜八がお灸を据えられ、おたかが「もっとお灸を据えておやりよ」と言うシーンも、その後の物語展開を暗示していて秀逸‼️「生れてはみたけれど」にも出ていた名子役・突貫小僧の猫の貯金箱のエピソードもコミカル‼️そしてサイレント映画特有の字幕表現もリズミカルで、まるでアクション映画のようにあっという間の1時間30分‼️不景気な時代を頑張って何とか暮らしている人間たちの温かい人間関係や、しがない旅役者の人生の哀歓が胸にしみる名作です‼️小津監督は「晩春」「麦秋」「東京物語」で大成したと言う人が多いですけど、私的には戦前の「生れてはみたけれど」やこの「浮草物語」ですでに大成している‼️恐るべし‼️
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