「【”報道陣の好きな都市を問う質問に王女は”何と言ってもローマです。”と束の間の恋に落ちた記者の目を見て言った。”今作は”世にこんな綺麗な人が居るんだ!”と驚いた、粋なラブコメディの金字塔映画である。】」ローマの休日 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”報道陣の好きな都市を問う質問に王女は”何と言ってもローマです。”と束の間の恋に落ちた記者の目を見て言った。”今作は”世にこんな綺麗な人が居るんだ!”と驚いた、粋なラブコメディの金字塔映画である。】
ー 「ローマの休日」は、万民が愛する映画であるが、(フライヤーには、”3世代が恋をする最高のラブストーリー”と言う惹句がある。)オードリー・ヘプバーンの映画初出演とは思えない王女としての気品ある抑制した演技と、アーニャ・スミスと名乗って自由奔放に知らなかった自由な世界を満喫する満面の笑顔を浮かべ、嬉しそうに新聞記者ジョー・ブラッドレー(グレゴリー・ペック)と過ごすシーンの演技のギャップが素晴しい作品である。
そして、ウィリアム・ワイラー監督の、細部まで拘ったコミカルな演出も、作品に華を添えている。ー
■今更ながらの好きなシーン<Caution!内容に触れています。>
1.ヨーロッパの某国のアン王女(オードリー・ヘプバーン)が、親善旅行でローマに来た時に、余りの過密スケジュールにヒステリーを起こし、医師から鎮静剤を打たれるがそのままフラフラと夜の街に出て行き、道路脇で寝ている所をブラッドレーに助けられ、結局彼の部屋に行くシーン。
ー ブラッドレーは、メンドクサソウニ”彼女”を自室に招き入れ”長椅子で寝て。”と言って、自身は珈琲を飲みに出掛けるが、帰宅すると”彼女”はブラッドレーのベッドに寝ていて、彼は”彼女”をベッドから長椅子に転がす様に寝かせるシーン。
そして、翌朝新聞の一面を見たブラッドレーが、何度も新聞に載っている王女の顔と長椅子で寝ている”彼女”の顔を見比べて、慌てて自分のベッドに寝かし直すシーン。-
2.アン王女が”アーニャ”と名乗り、ブラッドレーはアン王女と知りつつ特ダネを取るために彼女を町に連れ出すシーンが、今作の魅力を増している事はご存じの通りである。
・アン王女は、ブラッドレーの部屋を抜け出し、”自由な気分になるためか”町の理容室でロングヘアーをバッサリショート(ヘプバーンカットと呼ばれた)にするシーン。理容師のマリオが彼女の髪を切る度に”オフ!オフ!”と言う姿も可笑しい。
・アン王女は”スペイン広場”でジェラートを食べていると、ブラッドレーと再び出会い(彼は王女を探していた。)煙草を吸い、彼の有名なスクーターでブラッドレーと二人乗りで危なっかしく走り回るシーン。
・そして、ローマ市内の観光地を巡る二人。特にコレマタ彼の有名な”真実の口”に手を入れたブラッドレーが”うわ!”と言って手首から先を背広の袖に隠してアン王女に見せ、彼女が悲鳴の声を上げ、それが彼の悪戯と分かった時にジョーを叩く姿。
ー ご存じのように、このシーンはグレゴリー・ペックのアドリブであったとされている。人によっては、ウィリアム・ワイラー監督も知っていたと言うが、名シーンである。
そして、このシーン以降、アン王女とブラッドレーの気持ちが近づいて行くのである。-
・夜の船上パーティーに、某国の政府筋の男達がアン王女を戻すために乗り込んで来るが、アン王女とブラッドレー、そして彼の仲間のカメラマンで特ダネを撮るためにブラッドレーが雇ったアーヴィング(エディ・アルバート)が彼らを撃退するが、ブラッドレーは殴られた故に川に落ち、彼を追ってアン王女も追って川に飛び込む。
ー そして、対岸に辿り着いた二人はびしょ濡れの中、キスを交わすのである。-
3.翌日、アーヴィングが特ダネ写真を持ってブラッドレーのアパートに来るが、ブラッドレーはとぼけて、彼から写真を取り上げて追い返すのである。
ー ブラッドレーが、特ダネ写真が世に流れた時のアン王女の事を考え行った事であるが、描かれた方が可笑しいのである。
そして、彼の言動を察したアーヴィングが特ダネ写真を彼と見ながら、一枚一枚のアン王女が映った写真にタイトルを付けるシーンも良い。個人的にはアン王女が某国の政府筋の男の頭をギターで叩いている時の写真が好きである。-
4.そして、アン王女が大勢の記者の前でインタビューを受けるシーン。彼女の態度はアーニャ・スミスと名乗って自由を満喫していた時の表情とは違い、自身の役割を受けとめ王女として受け答えをするシーンも素晴らしい。
アン王女に対し、記者から”この親善旅行でどこの都市が良かったですか。”と言う問いに対し、最初は”どこも・・、”と言いかけるが最前列に居たブラッドレーの微笑みの視線に気づいた彼女は””何と言ってもローマです。”と言い直すのである。
<今作は、いつ見ても鑑賞後の気分がとても佳い、身分違いの男女の、粋なラブコメディの金字塔映画である。>
<遥か昔、TVで両親と鑑賞。>
<2023年8月27日 製作70周年記念ロードショーで、4Kレストア版を映画館で鑑賞。>
<2024年1月1日 別媒体にて再鑑賞。>