「世界が、好奇心で満ち溢れていたあの頃。」ローマの休日 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
世界が、好奇心で満ち溢れていたあの頃。
初めての〇〇がいっぱい。
初めての冒険、
初めてのボッチ…初めての”(いたずら)仲間”。
初めての、淡い、恋?憧れ?
でも、その裏で陰謀うごめき…。
そして、心地いい、切ない終わり方。
切なさが、想いを宝石にして、”信頼”という布で磨かれて包み込まれる。永遠に、大切に…。
そんな物語が、
品のある立ち振る舞い、きれいな言葉によるやり取り、清潔感あふれる豪華すぎないファッション。
当時は最新だったのかな?バイクと言い、車と言い、カメラと言い、今ではアンティックな物。インテリア・エクステリア。
そして憧れの観光地・ローマで繰り広げられる。
鑑賞する度に、はまるポイントが変わる。
ただひたすらに、王女による小さな冒険に胸ときめかせた子ども時代。
あんな恋に憧れて、旅に出ては似たようなシチュエーションを期待した若かったころ。
いろいろな経験を積んで、心に残った「人生、ままならないものだ」という言葉。王女の変わっていく顔つき。ジョーの切ない、でも清々しい表情。児童文学の名著カニグズバーグ氏作『クローディアの秘密』にも似た感銘。
そして今何度目かの鑑賞では第三の人:アーヴィングにやられた。持つべきものは、ウィット・ウェットのわかる友達…。温かいものが広がっていく…。
Wikiによると、最初は、キャプラ監督で、エリザベス・テイラーさんとケリー・グラント氏で制作される予定だったという。
キャプラ監督。この映画の原型ともいわれる『或る夜の出来事(1934年)』の監督。家出したお嬢様と、それをスクープしようとした新聞記者の話。一難去ってまた一難。二人の心模様の変化、すれ違いが面白かった。もし、こちらの映画もキャプラ監督が撮っていたとしたら、どうなったのだろう。
DVD特典によると、あえて、カラーじゃなく、白黒で撮ったそうな。
その意図は忘れたけれど、白黒画面によってその品格が際立ち、”夢物語”であることを印象づけてくれる。(妙に生々しくない)
役者もすごい。
オードリーさんのすばらしさは、誰もが異存のないところ。
グレゴリー氏もすばらしい。コメディタッチでも下品にならない格好良さ。プラス、懐の深さ。オードリーさんをエスコートしているような立ち位置に徹しつつ、そこに彼がいないと絵にならない。そして、全くの無名の女優オードリーさんの魅力が最大限に表現できるように、演技・演出を監督と工夫するだけでなく、その実力を認めて、自分と同じようにクレジットされるように取り計らう懐の深さ。
この二人にエディ氏。この方の善人ぶりが、二人をさらに輝かせる。
監督もすごい。
完璧主義者と聞く。スペイン広場の時計映像に残るように、各シーン、取り直しの鬼なのに、全編を通して、”やらせ”のような舞台じみた個所はないどころか、一発撮りしたかのようなオードリーさんのフレッシュな魅力にあふれている。そんな演出に応える役者やスタッフもすごいのだけれど。
そして、脚本。
籠の中から飛び出して、真の心の自由を手に入れる物語。しかも洒脱なやりとり・展開にあふれている。
幾重にも鑑賞できる不朽の名作。
年月を経ても色あせない古典だけが持つ味わい。
こんな素敵な映画を作ってくれて、保存してくれて、修復してくれて、ありがとう。
大人も子どもも心が躍るおとぎ話。
永遠の名作です。