「「ワンカット映画」の金字塔」ロープ といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
「ワンカット映画」の金字塔
以前「1917 命をかけた伝令」のレビュー動画を観漁っていた時に、多くのレビュアーさんが「ワンカット映画といえば」と名前を挙げていた本作。ようやく鑑賞することができました。
「ワンカット映画である」ということ以外、事前知識は無い状態で鑑賞いたしました。
結論、非常に面白い!!
ワンカットという斬新な撮影技法もそうですけど、それ以上にそもそもストーリーが面白い。「古畑任三郎シリーズ」「刑事コロンボシリーズ」などでしばしば用いられる倒叙式のミステリ作品で、殺人を犯した犯人が遺体のある部屋でパーティーを執り行うという突飛なストーリー。何度も遺体があるのがバレそうになりながらも、紙一重でバレずに隠し通すところはもはやコメディですね。当時としては斬新であったワンカット撮影も、リアルタイムに進む物語とマッチしていて効果的に働いていました。
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大学を卒業したばかりのフィリップとブランドンは、「優秀な人間は無能な人間を殺しても良い」という思想のもと、同級生であるデイヴィットを殺害。大胆にも、遺体をチェストに隠した部屋に友人らを招待してパーティーを開いた。遺体が見つかってしまうかもしれない恐怖に青ざめるフィリップとは対照的に、遺体が見つかりそうになるスリルに酔いしれるブランドン。そしてそのパーティーの参加者でもある大学教授のルパートは、二人の言動に違和感を覚えてゆき……。
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殺人を犯した二人の青年は全く対照的な性格の持ち主。フィリップは殺人を犯した後に何とかそれがバレないように振舞いますが、気が弱いためどんどんボロが出てくる。ブランドンは非常に冷静に振舞うことができていますが、犯行がバレそうになるスリルを楽しむがあまりどんどんと行動が大胆になっていく。
私は終始フィリップに感情移入して観てしまいましたね。「わー!バレるバレる!」ってビビったり「ブランドン余計なことすんな!」ってキレながら観ていました。
そしてラストシーン、ミステリ作品ではお約束の推理パートです。大学教授のルパートが劇中に登場した小道具を証拠として提示して犯人を追い詰めます。ミステリとしても非常にレベルが高くて見事です。リアルタイムに進行するストーリーはワンカット撮影と相まって非常に臨場感たっぷりに鑑賞することができました。
当時のフィルムは10~15分程度しか録画ができなかったため、途中で登場人物の背中が不自然にアップになったり小物が大写しになったりして「今カット切り替わったな」って分かるシーンがありましたが、正直そんなに気になりませんでしたね。逆に「ワンカット撮影の元祖」である本作を観たことによって、「『1917』のワンカット撮影技術ってすごかったんだな」と再度実感することができました。
本当にレベルの高い作品でした。当時としては斬新なワンカット撮影とストーリーのリアルタイム進行を実験的に用いた作品ですが、この作品が今日までの映画の礎を築いたといっても過言ではありませんね。ヒッチコック監督の熱意や意欲を感じられる素晴らしい作品でした。オススメです!!