「やっぱりブロンソン」レッド・サン しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
やっぱりブロンソン
どうしても、50代以上は思い入れで観てしまうのはしょうがないとして、オレは高校生のころは漁るように映画を観てたが、ドロン、三船は関心の対象ではなかったので正直、今もその名前に踊らされることはない。
が、ブロンソンはオレにとってかなり事情が違う。
ブロンソンの映画は、高校生当時観ることができるものはかなり観てきた。きっかけはやはり、映画館でリアルに観た作品。「特攻サンダーボルト作戦」、「スーパーマグナム」がそれにあたるが、彼のキャリアからすれば、公開延期のTV映画を10年越しで日本劇場公開した「特攻..」はともかく、後期の作品。
もっというと、「スーパーマグナム」は「ナインハーフ」の同時上映で明らかにシモの事情でタマタマ見ただけに過ぎなかったが、立ち位置としては、スライ、ノリスの「アクション枠」の大先輩という認識だった。「スーパーマグナム」は実際は完全にじじいのヌルい映画だったが、「ナインハーフ」のおかげか、そこからブロンソンの映画をビデオレンタルしまくった思い出がある。
イーストウッドやレイノルズももちろん現役だったが、「シティヒート」を観てしまったために、ケツの青い高校生のオレは脱落。イーストウッドは「ルーキー」や「ハートブレイク・リッジ」などあったけど、中期(70-80年代)の映画は、テレビでばっかり流れていたせいか、「映画スター」とは思ってなく、むしろ嫌いだった。(イーストウッドの映画が今もあんまり好きではない理由はその辺もある)。レイノルズは当時は、「高校生が喜んでみるような」映画スターではなかったし、「キャノンボール」は当然ジャッキーしか目に入らないころである。
高校生のガキがブロンソンの良さなんて、アクションスターというくくりの程度で、「マンダム」のCMも知らないことはないが、リアルタイムではないし、もちろん、彼の作品を全部見てはいないし、全部の作品が好きでは決してない。
レッドサン
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世界三大スター共演、とあるが、ブロンソンは「アメリカ人」ではあるが、ヨーロッパ映画で名を馳せたスターであり、米代表、ということではない。個人的に「ウエスタン」、「狼の挽歌」が大好きだが、これらはイタリア映画(合作)だ。アメリカで認知が高まったのは、「狼よさらば」のヒットによる。
イーストウッドも70年代までは、ほぼ同じような経歴だが、その後の身の振りようはご存じの通り。一方のブロンソンは「狼よさらば」のヒットのため、結果晩節を汚すようなキャリアになってしまったが、後年ビジランテもののフォロワーや、ニコラス・ウェンディング・レフンの「ブロンソン」など、彼の偉業を評価、不運な後年を惜しむ映画人、文化人はタランティーノはじめ多い。
そんなオレが今惹きつける彼の魅力は何か?オレは一番は「人懐っこさ」と「チャーミング」な風貌と笑顔だと思っている。彼の役どころの舞台は、西部、暗黒街、犯罪都市と非情な世界。ぶっきらぼうにふるまう一方、時折見せるチャーミングな笑み。ぶっきらぼうな風貌とアメリカ原住民に間違われる顔立ちのため、その良さが評価されず、役の幅が広がらなかったのは非常に悲しいが、その歴史を含めても彼の魅力だ。もうひとつ、彼のセリフとその声がマッチしている上に、そこにたたずまい、手の動き、顔の動きといった所作がリアルであり、かつ惹きつけられるほどに魅力的。「さらば友よ」のラストは言うに及ばず「演技派」であることがみてとれることだ。
本作三船とのラブラブなロードムービー(by馬)な道中において、(本作、馬映画でもある)その魅力が満載。ロードムービーものでは、「スケアクロウ」や「ミッドナイト・ラン」に並ぶ名コンビだが、その旅が終わらなければいいのに、と思うほど、いつまでも観ていられるのはこの二人ぐらいかも。(そして、たいていのロードムービーと同様、終着点で映画のテンションは落ちる)
三船もステレオタイプな真面目な侍を力の入れようと抜きようをバランスよく演じており、娼館の女主人が彼を見て、十字を切るところなど、最高に笑える(いわゆる、「笑われる、馬鹿にされる」ような演出では決してない)。ドロンも薄情な役がよく似合っている。(この人は結構引き立て役に回る、わきまえているところが、「スター」といして異色。)
冒頭の列車強盗のアクション、爆破シーン、崖から転がり落ちるシーンも「あぶねえな」と思うほどの迫力は、「戦争体験者」による製作、当時のモラルならでは、と娯楽大作として楽しむべき。
そして本作のユルさにモーリス・ジャールの劇伴はよくあっている。カメラもロングショットが決まっており、レオーネに対抗してか、極端なクローズアップが少ないのも暑苦しくなくていい。
ラストもコイントスに意味なんてなくて「照れ隠し」に見えることもブロンソンならでは。とても素晴らしい。
とはいえ、クライマックスのコマンチ族との銃撃戦は物語上、無駄。見せ場と(当時の)「敵」を作りたかった事情は分からなくはないが。
また、三船がドロンを後ろから斬りかかろうとするのは非常に残念なマイナス。
追記
前述の「狼よさらば」リメイクのウィリス。「メカニック」リメイクのステイサム。あえて言うなら、後継者はステイサムかな。ステイサムも笑顔がかわいい。
追記2
こないだ、ブロンソンだ!と思ったら、ひげを生やして麻雀をしている萩原聖人だった。