劇場公開日 2024年10月25日

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「ランボー者と見せかけて」ランボー かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ランボー者と見せかけて

2025年8月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:TV地上波、VOD

主演シルベスター・スタローン。

【ストーリー】
西部ワシントン州、ロッキー山脈の麓の集落。
ベトナム帰還兵のランボーが、部隊仲間バリーに会いにはるばるおとずれる。
だが、戦友は枯葉剤原因によるガンで、すでに亡くなっていた。
ホープという田舎町にたどりつき、大通りをあてどなく歩くランボー。
貧乏な身なりの若者をあやぶんだパトロール中の保安官ティーズルは、ランボーを追いだそうとするが、ランボーは頑としてしたがわない。
言いがかりをふっかけて強引に逮捕し、事務所内では公務執行と称し虐待。
ランボーはかつて捕虜として北ベトナム軍にとらわれ、拷問をうけた心理的トラウマを刺激され、補佐官たちにはげしく抵抗、そのまま逃亡する。
追いかけるティーズルたちだが、峻険な山岳地帯にもぐりこんだランボーによって撃退されてしまう。
州軍や州警察を巻きこんでの、大規模な山狩りがおこなわれる。
マスコミも取材にくるさわぎになり、ティーズルは毒づく。
「神はなんだって、ランボーみたいなのをお作りになったんだ」
「ランボーを作ったのは神ではない。この私だ」
そこに、合衆国陸軍大佐トラウトマンと名乗る男が姿をあらわす。
「私はランボーを助けに来たんじゃない。君らを彼から守りに来た」

スキマ時間に久しぶりに鑑賞しましたが、あーやっぱいい映画だなあと、しみじみ味わいました。
冒頭の湖畔のシーンで、繊細な若者ジョン・ランボーが、部隊の仲間を次々と喪って、戦後のアメリカ社会で自分の居場所がどんどんなくなってゆくさまを、わかりやすく提示。
田舎町をうろついていると、保安官に目をつけられて、いわれなき虐待をうける。
ベトナムで受けた拷問のトラウマから大爆発。
無駄なシーンなくストーリーが進行してゆくドキドキと、警察に軍隊まで動員される大事件に発展するハラハラ。
そして、そこに現れる謎の軍人トラウトマン大佐。
ランボーの特異な能力を、沈着かつ冷静な人物とわかる存在感で強調。
ここからはずっとアクション。
スピード感とスペクタクルで、こちらの気持ちをどんどん引きずり回してくれます。
アクションも危険で、今では撮れないような、とても緊迫感のあるものとなっています。
ランボーにトラックからつき落とされた兵士、けっこう危ない落ち方してたなあ。ケガしてそうで怖い。
しかしこの頃のスタローン、カッコいい。
あんな繊細そうな顔して、首から下はめっちゃマッチョ。
しゃべりも朴訥で、人柄あらわれてます。吹き替えもしごく佳き。
おバカ全力の小学生の時に見ちゃったもんで、ランボーの私物のコンバットナイフ、ぼくらみんな欲しがったもんです。

作中、悪徳保安官が州警察や州兵をどなりつけるシーンがいくつも見られます。
こんなことが本当に許されるかどうかは分かりませんが、実はアメリカの保安官という職業、警察や軍隊とは命令系統が異なります。
西部劇を好んで見る方々はご存知でしょうが、保安官は住民投票で決まる、おらが町の守り人なんですね。
政治家をめざすための、ステップにもなるお仕事。
そう考えたら、ティーズルの傲慢も、なんとなく理解できそう。
警察との一番のちがいは、保安官のシンボルでもある、左胸の星形バッジですね。
そしてつば広のカウボーイハット。
ちなみに警察だと、シンボルは盾型になります。
そう言えば合気道アクションで有名なスティーブン・セガールも、俳優の仕事をしながら保安官やってたりしてました。

さてこのランボーーが所属していた、グリーンベレーという特殊部隊の説明をさせてもらいます。
陸軍創設の部隊で、おもに敵地への長期潜入や、現地人をゲリラ戦士として教化する任務に従事してました。
部隊のモットーは「抑圧からの解放」
これ、映画の内容まんまで興味ぶかいです。
同じ陸軍特殊部隊系のデルタフォースの方が、より活動がランボーちっくなのはご愛嬌。
任務内容から、多くの戦闘技能を備えておかなければならず、その上で現地語をしゃべれるレベルの言語力も求められる部隊です。
スタローン演じるジョン・ランボーは、マッチョな戦闘マシーンという今現在のパブリックなイメージをみごとに体現。
大自然を縦横無尽に駆けまわり、保安官、警察、そして軍隊を翻弄します。
ジョン・ウェインの『グリーンベレー』よりも、このジョン・ランボーこそが今の特殊部隊イメージの元祖と思います。

アクション自体は今風じゃないですが、内容は濃く展開もスピーディー。
哀切が胸に迫るラストシーンまでを、97分に収めた編集はえらい。
その後長くつづいたシリーズの中でも、随一の傑作ですよ。

かせさん
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