「ただのアクション映画ではない、戦争で傷を負った者の悲しみの代弁」ランボー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ただのアクション映画ではない、戦争で傷を負った者の悲しみの代弁
『ロッキー』と人気を二分するシルヴェスター・スタローンの当たり役シリーズ第1作目。1982年の作品。
原題は“FIRST BLOOD”だが、邦題が逆輸入。
後のアクション映画への影響、オマージュやパロディは数知れず。
タフなアクション・ヒーローの形容詞。
色んな意味でアクション映画の名作。
『~ラスト・ブラッド』に併せてだが、見るのは随分と久し振り。おそらく20年ぶりくらい。
でも、びっくりするくらい覚えていた。
ランボーが舞台の田舎町を訪ねるファースト・シーン。
保安官に因縁を付けられる。
理不尽な逮捕。
拷問のような警察の仕打ち。
怒りが爆発。
警官隊相手に、たった一人で反撃に出る…!
闘いが始まってから、ランボーに非が無い訳ではない。
が、先に仕掛けてきたのはお前(警察)たちだ。
ベトナム帰還兵のランボー。元グリーン・ベレーの英雄。
時折蘇る、地獄のようなベトナム時代の記憶と傷…。
やっとそれらから解放され、穏やかに過ごせると思っていた。
なのに、こんな事に…。
それは警察の方も同じかもしれない。
何故、こんな事に…?
ちょっかい出してしまったのがいけなかったのか…?
両者にとってこれは悲劇。
スタローンが自分自身を重ねたロッキーはフレンドリーで陽気だが、ランボーは無口で孤高。対極的だが、それがまたハマっている。
追い詰められた崖からのダイブ。怪我とそれを自ら麻酔ナシで針で縫うシーンは、言わずと知れた伝説的なリアルガチ!
ゲリラ戦の超エリート。山に入ってからはオレの領域。気付かれず傍に潜み、突然襲い掛かる。あちこちにトラップも。
全く手足が出ない田舎警察。それでも諦めが悪い保安官。ブライアン・デネヒーの憎々しさが光る。
ランボーを説得しにやって来た元上官のトラウトマン大佐。リチャード・クレンナもハマり役。
バイクとパトカーのチェイス、ヘリの追跡、反撃ゲリラ戦、警官隊200名による大捜索…スリリングなアクション・シーンを要所要所に。
さすがジェリー・ゴールドスミスの音楽はアクション映画を格別盛り上げる。
ロケット弾が撃ち込まれた廃坑に生き埋めにされたと思われたランボーだったが、脱出。町に舞い戻り、激しい銃撃の最終決戦…!
後のシリーズでは半裸の完全超人化するランボーだが、本作ではまだ人間味が垣間見える。
傷付き、苦しみ、弱み、脆さ…。
アクション映画だが、実際は反ベトナム戦争映画だろう。
ランボーが涙ながらに感情をぶちまける、胸が張り裂けそうなほど忘れ難い悲しいラストシーン。(スタローンの熱演に目頭が熱くなってくる)
ベトナム帰還兵の代弁。
いつの世も戦争で傷を負った者たちにとって、永遠に戦争は終わらない。
でもいつか、傷が癒える事を…。