ラリー・フリントのレビュー・感想・評価
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不愉快に基準はあるのですか?
本作は、「公人に対しての劇画化や、風刺画」を堂々と描けるようになった、アメリカの重要な裁判の映画化です。
ラリー・フリント( ウディ・ハレルソン)は、1970年代に「ハスラー」というポルノ雑誌を刊行した実在の人物です。この「ハスラー」は、ゴシップ、スキャンダルは勿論、タブーとされて来たことを敢えて記事にし、物議を醸し出すことで有名雑誌になりました。
また、ラリーは破天荒な人で、度々問題を起こしては裁判沙汰になったりします。しかもその裁判では、裁判官に暴言を吐き、暴れ、噛みつき、法廷を侮辱します。結果、エロ・グロ・ナンセンスなハレンチ雑誌「ハスラー」は、社会の良識派から敵視されます。ですが、ラリーは屈しません。
そんなある日、ラリーは高額な賠償請求をされます。ようは、訴えられたのです。
それはお酒の広告で、「(実在の)宗教家が、母親との性的な関係を告白する」というもの。勿論、嘘です。
宗教家は、誹謗中傷&精神的苦痛を受けたとして、ラリーに4000万ドルの損害賠償請求をします。しかし勿論ラリーは法廷で、いつもの破天荒ぶりを発揮します。結果、敗訴。「精神的苦痛」に対して、宗教家に20万ドルを払うことになります。バージニア州の地方裁判所は、誹謗中傷部分については、認めませんでした。
さて、ラリーは控訴します。
以下は、最高裁でのラリーの弁護士(エドワード・ノートン)の結語です。
”風刺というのはこの国の古くからの伝統なのです。
フォルウェル師(宗教家)が誹謗ではなく、精神的損害で訴えを起こせるなら、公共の人物は皆訴訟を起こせる。
風刺漫画家も訴えられる。テレビの司会者だって訴えられるかもしれない。どんな公人でも、自分が批判されたら精神的打撃を受けます。
だからといって、それで訴えられたら、反駁できません。
不愉快に基準はないのです。もしそうなったら、すべての不愉快な言論を罰することになる。
我々の国では、たとえ不愉快な言論でも、健全な国家にとって不可欠な活力であるという信念が基礎になっているはずです。”
結果、ラリーは勝訴します。
こうしてアメリカでは、公人の戯画化やパロディが、大手を振って描けるようになりました。
印象的なシーンがあります。
ハスラーは、法律では見せてはいけない部分を掲載してしまいます。その件でラリーは、「自由な出版を守る会」でこう主張します。戦争の写真とヌード写真を交互に見せて、「どちらか忌まわしいか?」と訴えるのです。流石(笑)
またラリーの奥さんに、コートニー・ラブが出ています。マナー無視の自由人ですが、なんかそこが可愛いです。
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