「人生について色々考えてしまう感慨があります それは正しくルネ・クレール監督の「巴里祭」と同じものです」ラ・ブーム あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
人生について色々考えてしまう感慨があります それは正しくルネ・クレール監督の「巴里祭」と同じものです
1980年12月フランス公開
「地下鉄のザジ」は1960年10月フランス公開
「小さな恋のメロディ」は1971年4月イギリス公開
「ポンヌフの恋人」は1991年10月フランス公開
「アメリ」は2001年4月フランス公開
本作はこれらの映画の系譜のように感じました
およそ10年ごとにローティーンの少女を描いた映画の傑作がありました
単にローティーンの少女が主人公か主要登場人物だからですが、かといって1992年の「愛人 ラ・マン」はこの系譜とは異なるのです
どこにもいる、ありふれた、でも思春期で多感で一生懸命に生きている少女の日常の物語
それがこの系譜なのだと思います
「小さな恋のメロディー」だけは、イギリス映画ですがこの系譜に連なっているように思います
「ポンヌフの恋人」はギリギリこの線を少し超えているかも知れませんが、かろうじて系譜に繋がっていると感じます
だってヒロインのジュリエット・ビノシュは、明らかにソフィー・マルソーに似ているのですから
そしてその源流を探ると1933年フランス公開の「巴里祭」なのかとおもいました
奇しくも巨匠ルネ・クレール監督は本作公開の僅か3ヵ月後の1981年3月にお亡くなりになっています
してみると2010年前後にも何かしらローティーンの少女をメインにした洋画があったのかも知れません
しかしどうも思い当たりません
どなたか是非ご教示お願い致します
間隔からするとそろそろ今年辺り何か撮られていてもいい頃です
フランス映画だけなら、「ポンヌフの恋人」をやっぱり除外すると「地下鉄のザジ」からほぼ20年間隔です
そう考えると、やっぱり今年辺りにこの系譜に連なる映画が絶対無いとおかしいのです
本作がここまで大ヒットしたのは、もちろんソフィー・マルソーの可愛らしさ、等身大の自然さでしょう
清潔なローティーンの細く華奢な身体と幼さの残った素直な顔つき、まだ色気のない短いヘアスタイル
普段着の何気無いけどパリジェンヌらしい着こなし
観ているだけで楽しい映画です
あの頃は自分だってこんなだったなあと懐かしさが爆発します
リアルタイムならなおのことそうでしょう
ところが超ひさびさに改めて観て驚いたのは、ヴィックの物語かと思ったら、実は彼女の両親の物語がメインであったと言うことです
ヴィックのお話は、サイドストーリーであったのです
この両親に感情移入して、本作を観てしまっていました
自分も思春期を過ぎて大人になって、泥のように働いて、結婚もし、子供も生まれ、なんだかんだ色々あって、その子供も思春期にさしかかって、こうして人の世は移り変わっていくそんな感慨で胸がいっぱいになってしまいます
素敵なひいおばあちゃん、ベルサイユとおぼしき郊外に済むおじいちゃんおばあちゃんの家
自分達夫婦、娘とその友達たち
それが繰り返されていく家族と命の連鎖
幸せな人生の姿です
離婚の危機、子供の問題
いろんな事が起こって、なんとなく乗り越えていて気がついたらひいおばあちゃんのような歳になっていたいものです
それこそ幸せな人生でしょう
ラ・ブーム
劇中ではパーティーの意味で使われています
心臓のドキドキ感を表していますね
ひいおばあちゃんの素敵な人生こそ、ブームだったのかも知れません
フジタは、ひいおばあちゃんの言うとおりの実在の天才日本人画家藤田嗣治のこと
1914年から1931年の18年間パリにいました
正にパリの黄金期エコールドパリの始めから終わりの全期間です
彼は売れっ子画家としてだけでなく、パリの社交界のセレブとして知らぬ人が無いほどの有名人でした
彼は日本で一度結婚したものの妻を残し、パリでも2度フランス人と結婚をした奔放な人間でした
ひいおばあちゃんがフジタとルルドに旅行に行ったというのは、それはもちろん不倫旅行でしょう
ルルドというのは、世界中から信者が訪れるカトリックの巡礼地「ルルドの泉」のことです
ひいおばあちゃんがヴィックを連れて行ってくれた素敵なレストランはモンパルナスのクーポールです
フジタもモンパルナスに居を構えていました
でも彼は1968年に亡くなっていますから、ひいおばあちゃんの想い人ではありません
42年間も妻のある男性を想い続けてきた人生
多分彼女は80歳くらい、1900年頃の生まれ
1940年頃からの不倫ということになります
その頃は40歳前でしょうから、ヴィックの母と同じ年齢だったでしょう
恐らくW不倫だったのだと思います
ひいおばあちゃんとおじいちゃん、おばあちゃんとの関係性の薄さはもしかしたら、不倫の子供であったのかも知れません
人生にはいろんな事がおこり、とんでもない事も起こります
それでも乗り越えていってこそ、このひいおばあちゃんのような豊かな老後に辿り着けるということなのでしょう
人生について色々考えてしまう感慨があります
それは正しくルネ・クレール監督の「巴里祭」と同じものです
あき240さん
コメントへの返信有難うございます。
そうかも知れませんね。いいですね。
大人になる前の少女特有の魅力か眩しい程のソフィー・マルソーの可憐さと、ノスタルジックな雰囲気がなんとも言えず素敵な作品ですよね。
藤田嗣冶はフジタホワイトと呼ばれる繊細な乳白色で裸婦を描きました
もしかしたら、ひいおばあちゃんもそのモデルの一人だったかも知れませんね
3年前の2018年に開催された「没後50年 藤田嗣治展」は素晴らしいものでした