「やはりコメディ ラストは落語みたいな見事なオチ でもそこで止まらなくなるのは笑いではなく涙」ライフ・イズ・ビューティフル Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)
やはりコメディ ラストは落語みたいな見事なオチ でもそこで止まらなくなるのは笑いではなく涙
「人間には、6つの役に立つものがある。そのうち3つは自分ではコントロールできないが、残りの3つは自分の力で制御できる。前者が目、耳、鼻で、後者が口、手、足である」
ユダヤ教の聖典『タルムード』には上のような文言があるそうです。この物語の主人公であるユダヤ系イタリア人のグイド(演: ロベルト•ベニーニ)はこの6つの役に立つものを常にフル活用しています。すなわち、まずは前者の3つで周囲の情報をかき集めます。そして、それに応じて機転をきかせ、制御できる後者3つを使って発言し、行動します。まさに「口八丁手八丁」といった感じで効果は絶大です。運命的な出会いをしたドーラ(演: ニコレッタ•タブレッキ)と恋に落ちて妻に娶るときも、連行された強制収容所で幼い息子のジョズエ(演: ジョルジオ•カンタニーニ)を守り抜くときも。
日本語の口八丁手八丁にはなんとなく軽薄な響きがありますが、彼の場合にはそれが人生の真剣な生き方そのものです。同じくタルムードには次のような言葉があるようです。
「舌の先に幸せがある」
おお、察しの文化や腹芸がハバをきかせる我々日本人には想像できない人生訓ですが、彼のマシンガン•トークの先には幸せがあったのですね。
そして、この物語にぴったりだと思われる文言をタルムードに見つけました。
「最悪のことが最良のことだと、信じなければならない」
この応用篇みたいなユダヤ人の人生訓に「ハラが減ったら歌え、悲しかったら笑え」というのがあるそうです。絶望の淵にいながらも明るく陽気に振る舞い、幼い息子のジョズエについた優しい嘘の数々…… そこには千点満点達成のとんでもない賞品が待っていました。でも、賞品を手にしたジョズエの姿をグイドは6つの役に立つものの内の前者3つを使って確認することはできませんでした。
美しい人生って本当にあるんですね。