「どんな状況にあっても、人生は生きるに値するほど美しい」ライフ・イズ・ビューティフル bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
どんな状況にあっても、人生は生きるに値するほど美しい
ドイツ衛兵に連行されながらも、おどけた表情で滑稽な姿で歩き始めた瞬間、ドバドバって来た。
人が、それを美しくしたいと思う分だけ
人が、美しくしようとした努力の分だけ
美しくなるのが人生。
それを苦しいと思えば思う分だけ苦しくなり
努力は無駄だと思えば思う分だけ虚しくなる
それが人生。
そんな映画でした。
とにかく、人生は己の心次第だって事で。
そこでですよ。グイド役を務めたロベルト・ベニーニ(監督兼脚本)は、「どんな状況にあっても、人生は生きるに値するほど美しい」という、ロシア人革命家レフ・トロツキーの言葉に、この物語の着想を得たそうです。
で、そのレフ・トロツキーとはどんな人物だったのか。トロツキーはロシア帝国時代にウクライナで生まれた革命家。ユダヤ人一家に生まれ、学生時代にマルクス主義に触れ共産主義運動に加わり、「君主制の打倒を目指す」勢力に身を置きます。ロシア革命までは逃亡生活を送る身の上。WWⅠ開戦時には「反戦」の立場を取りますが、彼自身は、レーニンの死後「赤軍」を創設し「白軍」との内戦を経て革命政府の中心的人物となります。
スターリン勢力との権力闘争に敗れたトロツキーは、カザフスタンへ国外追放。その後、トルコを皮切りに海外を転々。体制に批判的なトロツキーを快く思わないスターリンは、彼の元に刺客を送り込みます。変わらんよね、ロシアって。トロツキーの長男は留学先のパリでNKVDの刺客により殺害されています。1940年、トロツキーは逃亡先のメキシコで暗殺されましたが、当時トロツキーは日本への亡命目前であったとのトンデモ話すらありました。「国際社会主義運動の組織化」に乗り出そうとしていたとあれば、日本への亡命はあり得ない話ですけどね。
この映画に着想を与えた言葉は、スターリンが派遣する暗殺部隊の攻撃に曝されていたメキシコに居た頃のものの様です。思想的には「玉虫色」な印象もあり、一貫性に疑問を覚える行動もあるのですが、当時、機関銃乱射で自宅を攻撃されるような状況にありながら、「どんな状況にあっても、人生は生きるに値するほど美しい」なんて、よくぞ言えるもんだと思う訳で。これは尊敬に値します。
この映画のタイトルがトロツキーの言葉から来ているとは!
bloodtrail様のレビューから、リチャード・バートンとアラン・ドロンの「暗殺者のメロディ」を思い出しました。
今後とも映画の世界が広がる貴重な投稿を宜しくお願いいたします。