ライアンの娘のレビュー・感想・評価
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アイルランドに魅せられて‼️
青い青い大海原と断崖絶壁‼️アイルランドの大自然を捉えた雄大な映像美でデヴィッド・リーン監督が描くのは、不倫物語を軸にした人間の愚かさであり、愛しさ‼️そこにイギリスとアイルランドの反目の歴史、神と宗教、政治と民といったスパイスが効いています‼️この映画のヒロインのロージーは、自分の人生にとてつもない期待をしている。夫のチャールズがその期待に応えてくれないことを悟ると、彼女はさらなる何かを新たなる恋人である英国将校ランドルフに求めてゆく・・・要は不倫です‼️初見の際はロージーの自分勝手さとわがままさ、そしてチャールズの不憫さが気の毒に思えたのですが、その時デヴィッド・リーン監督の声がした‼️心の中に情熱を持ち、"何か" を密かに待ち続ける‼️「君たちみんなの中にそれはあるんだよ」‼️この作品に出てくる人間はロージーやチャールズはもちろん、ロージーを裏切り者と信じ込んで集団リンチする村人たちや、娘を救ってやれないロージーの父親など、情けない人間ばかり。でもそんな彼らがちらりと人間の美しい瞬間を垣間見せてくれる。不倫を疑われる中、倒れ込むランドルフに手を差しのべるロージーの強さと潔さ‼️妻の裏切りを知り、苦しみながらも全てを許して受け入れようとするチャールスの懐の深さと静かなる威厳‼️ロバート・ミッチャムは名演ですよね‼️荒れ狂う海、干拓の海辺のそぞろ歩き、白百合の咲き乱れる丘を駆け上がるロージー、ロージーとランドルフが酒場で出逢った瞬間の視線、森の木々の間に揺れるクモの糸、森での官能的な密会、嵐の海辺での武器陸揚げシーンのスペクタクル、そしてロージーとチャールズが保守的な村を出て行くためバスを待つシーン‼️特に森でランドルフがロージーの着ているものを一枚ずつ脱がせていくシーンは大好きというか、ホント美しいシーンですよね‼️もうホントに全てのシーンが好きすぎて、デヴィッド・リーン監督の愛への洞察力の深さに唸らされます‼️デヴィッド・リーン監督にとっても「アラビアのロレンス」や「ドクトル・ジバゴ」と並ぶ代表作なのではないでしょうか⁉️そして忘れられないラストの神父とチャールズのやりとり「向こうに着いたら、ロージーとは、別れるつもりなのかい?」「まぁ」「それは私には疑問だな、その疑問が、私のはなむけだ」‼️
「夢は育てちゃいけない」
ライアンの娘、ロージー(サラ・マイルズ)は恩師(ロバート・ミッチャム)と結婚するが、夜の営みには不満だらけ。
北アイルランドの駐屯地に新しい指揮官(クリストファー・ジョーンズ)がイギリスからやって来た。
互いに一目惚れし、一気に愛し合うようになる。
3時間を超える長尺だが、恐ろしい高波のシーンは思わず危ない、と声が出てしまうほど。
デビッド・リーン監督が超一級の映像作家であることを再認識出来る作品に…
この作品、映画館での鑑賞後は
一度テレビでも観た記憶があったが、
これまで、「戦場にかける橋」や
「アラビアのロレンス」よりも
格下に見ていた作品。
しかし、認識を改める再鑑賞となった。
自分もそれなりの年齢に達したためか、
此の度の鑑賞では、以前は納得出来なかった
不倫の二人の身勝手な振る舞いも、
赦されないこととは言え、
それなりの背景があったことなど、
今回は各登場人物の内面が丁寧に
描かれていた事に気付くことも多く、
この作品への理解が進んだ。
それにしても教師の無念さは
いかばかりであったろうか。
それこそ最後に夫婦に襲いかかった
偏狭な村社会における
民衆の因習性や民意の低さを打破すべく
赴任してきたのだろうが、
高い壁に跳ね返させられて
村を去らなければいけなかったのだから。
だが、ラストシーンは、苦難の末に
新しい境地に達した夫婦の希望の出発と
私には思え、涙を禁じ得なかった。
この作品、嵐の海岸での武器回収シーンが
「アラビアの…」や「戦場に…」にも
引けを取らないスペクタクルシーンとして
魅せるものの、本来この作品全体は
スペクタクル物ではないのだが、
それでもこのような大作感溢れるが如く
仕上げるリーン監督は、
相変わらずの完璧な映像とストーリー展開も
相まって、
やはり超一級の映像作家であることを
再認識出来る鑑賞となった。
主役は海岸線
イギリス軍は大陸ではドイツと拮抗し、アイルランドでは独立派をおさえ込む。アイルランドの独立派は軍備は手薄だが、ここにドイツの軍備が密輸されたら大変だ。そんな中ドイツとの戦争で心と体をやられた青年将校は、英雄としてアイルランドの田舎の守備隊に転属になる。そして村の学校の先生と年の差婚をしていた若奥さんと不倫する。
アイルランドの海沿いの村の自然が雄大です。特に海岸線。登る朝日、沈む夕日、時に怪物となって押し寄せる波。
登場人物の現実感が非常に高い。人物像のコントラストがちょうど良い。もちろん各人物の演技力はハンパない。
自然と人物の融合。映画の質感がすごく良い。
この映画を一言で言えば、総合的に良くできた映画です。ありきたりですが。
映画とは総合芸術だと気づかせてくれる映画。
今週の気付いた事:人間は愚かであるが故に気高く強く美しい。
【愚かしくも、愛しきアイルランドの人々が、懸命に生きる姿を描いた作品。多用な見方が出来る懐深い作品でもある。】
-舞台は英独戦争が背景にあるので、第一次世界大戦中の英国支配下のアイルランドの田舎であろうか。-
・ ローズ(サラ・マイルズ)は憧れていた教師チャールズ(ロバート・ミッチャム)と結ばれるが、何不自由ない生活が、どこか満たされない。
-彼女が、浜辺に残されたチャールズの足跡の上に自らの足を置きながら歩く姿と、後半、チャールズがローズとドリアン少佐の足跡を見るシーンの対比は印象的である。彼女の姿はアイルランドの哀しい歴史に縛られずに生きようとする新しき価値観を持った人の象徴であろうか。大きな代償は負うことになるが・・。-
・そこに、英独戦争の英雄だが、心理的ダメージを負っているドリアン少佐が赴任して来てローズと恋に落ちる。
-二人の森の中での逢瀬が幻想的な美しさである。ローズの深紅のネッカチーフ、上着と森の鮮やかな緑のコントラストが鮮烈。今作品は海岸の波打ち際の風景も印象的である。ドリアン少佐の退廃的な表情は何を物語っているのであろうか?-
・アイルランド独立のために、密かに武器を集めるゲリラ達を暴風雨の中、手助けするアイルランドの人々。だが、ゲリラ達はドリアン少佐率いる英国軍に捕まり、彼らの怒りは少佐と恋に落ちたローズに向けられる。
-暴風雨の中、海から武器を引き上げるシーンは圧巻である。
又、ローズがドリアン少佐と恋に落ちた事を皆に知らしめてしまう無垢でローズを長年想うマイケルの仕草も、印象的である。-
ドリアン少佐が心の病のため、自ら爆死した後、チャールズとローズは人々の罵声の中、村を出る・・・。
-マイケルはここでも、狂言回し的役割を果たす。又、数少ない知的人物として描かれるコリンズ神父の"分からない・・"と去り行く二人が乗るバスを見ながら言う言葉も心に染みる。-
〈冒頭からラストまで、狂言回しの様に描かれる知的障害があるマイケル(ジョン・ミルズ)の姿がローズの父親、ライアンを始め劇中登場する愚かしくも、愛しき人々を表していると思った作品。多様な見方が出来る作品でもある。〉
妖精(小人)になった ジョン・ミルズ
アイルランドに赴任した 聖パトリックは宣教師なのに、アイルランド人(古代ケルト人の末裔)の土着宗教を 否定しなかったので、土着の神々が 小人や妖精として、そこに生き残った、と言われている
マイケル(ミルズ)が 多分、そう
そして彼の存在と アイルランドの雄大な風景が、
この映画を 叙事詩のようにしている
沼地で花を集めるマイケルとランドルフの出会い
酒場で 彼の心の傷に気が付き、怯える、マイケル
自然と戯れる、マイケル
二人の不倫を察知して 驚く、マイケル
(そして 無邪気に周知させてしまう… )
ランドルフの終焉を導く、マイケル…
物語の端々に登場する 自然と一体化したような
マイケルの不思議な存在感に、心を奪われてしまう
妖精(小人)を演じてしまった、ジョン・ミルズ、
名演である
ロージーは アイルランドの閉塞感を、ランドルフは英国の疲弊を 表しているのだろうか?
(第一次世界大戦に 勝利しそうだが、アイルランド紛争が 勃発しそうな気配)
英国の 長期に渡る、アイルランドへの搾取は 凄まじく、プロテスタントのカトリックへの「弾圧」の意味もある
でも、アイルランド人は それを捨てず、貧窮を選び 憎悪を募らせるのである
比較的豊かな ロージーが、安穏と(周囲には そう見える)プロテスタントの 英国将校と「不倫の恋」をすることは「英雄の死」の原因を 邪推させ、彼等の怒りの 導火線に火を着ける
トム・ライアンは ただの凡人である
日和見主義者なのだろう
アリバイ作りには、成功したが
火の粉は娘に降りかかる
(演劇性も アイルランド人の特徴であるらしい… )
総てを理解した ロージーだが、マイケルの存在まで、理解したのだろうか?
(そして ランドルフは わかったのだろうか?)
エメラルド島とも呼ばれる 島の美しさをカメラが余すところなく映し出す
(ため息… )
豊かではないが、雄大な自然と 妖精と アイルランド人特有の激情と魂が、この国から芸術家を産み出す 不思議
神父(トレバー・ハワード)と 妖精(小人)が 一緒にいる不思議
モーリス・ジャールの音楽も 明るくもなく暗くもなく 時に転調(?)するみたいなのも、 この不思議さを 物語っているよう
名作だと 思う
抑えがたい煩悩と、誰かに向けられる妬み。
沖縄人のそれと同じように、永くイギリス人に虐げられたアイルランド人にしかわかり得ない歴史背景があるのだろうことは重々承知。
それにしても、歯がゆい。
夫にばれても恋に執着するロージー、妻を寝取られても戻ってくると信じる間抜けなロバート、嫉妬とやっかみだらけの民衆、そして、保身のために娘を見捨てたライアン。
全然、知り合いになりたくない人たち。
牧師と従者マイケルだけが、一貫して生き方を通している。
ロージーが、自分も蔑まれる立場になってはじめてマイケルの気持ちがわかり、それまで毛嫌いしていた彼の手の甲にキスをする場面は、はっとした。
もしかして、「ロージー」でなく、「ライアンの」とつけたタイトルに、何か意味があるのか?
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