劇場公開日 1971年4月24日

「妖精(小人)になった ジョン・ミルズ」ライアンの娘 jarinkochieさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0妖精(小人)になった ジョン・ミルズ

2019年4月1日
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アイルランドに赴任した 聖パトリックは宣教師なのに、アイルランド人(古代ケルト人の末裔)の土着宗教を 否定しなかったので、土着の神々が 小人や妖精として、そこに生き残った、と言われている

マイケル(ミルズ)が 多分、そう
そして彼の存在と アイルランドの雄大な風景が、
この映画を 叙事詩のようにしている

沼地で花を集めるマイケルとランドルフの出会い
酒場で 彼の心の傷に気が付き、怯える、マイケル
自然と戯れる、マイケル
二人の不倫を察知して 驚く、マイケル
(そして 無邪気に周知させてしまう… )
ランドルフの終焉を導く、マイケル…

物語の端々に登場する 自然と一体化したような
マイケルの不思議な存在感に、心を奪われてしまう
妖精(小人)を演じてしまった、ジョン・ミルズ、
名演である

ロージーは アイルランドの閉塞感を、ランドルフは英国の疲弊を 表しているのだろうか?
(第一次世界大戦に 勝利しそうだが、アイルランド紛争が 勃発しそうな気配)
英国の 長期に渡る、アイルランドへの搾取は 凄まじく、プロテスタントのカトリックへの「弾圧」の意味もある
でも、アイルランド人は それを捨てず、貧窮を選び 憎悪を募らせるのである

比較的豊かな ロージーが、安穏と(周囲には そう見える)プロテスタントの 英国将校と「不倫の恋」をすることは「英雄の死」の原因を 邪推させ、彼等の怒りの 導火線に火を着ける

トム・ライアンは ただの凡人である
日和見主義者なのだろう
アリバイ作りには、成功したが
火の粉は娘に降りかかる
(演劇性も アイルランド人の特徴であるらしい… )

総てを理解した ロージーだが、マイケルの存在まで、理解したのだろうか?
(そして ランドルフは わかったのだろうか?)

エメラルド島とも呼ばれる 島の美しさをカメラが余すところなく映し出す
(ため息… )
豊かではないが、雄大な自然と 妖精と アイルランド人特有の激情と魂が、この国から芸術家を産み出す 不思議
神父(トレバー・ハワード)と 妖精(小人)が 一緒にいる不思議
モーリス・ジャールの音楽も 明るくもなく暗くもなく 時に転調(?)するみたいなのも、 この不思議さを 物語っているよう
名作だと 思う

jarinkochie