四重奏

劇場公開日:

解説

「雨」「手紙」「剃刀の刃」等、アメリカでは多くの作品が映画化されているW・サマセット・モームの誕生七十年を祝して、「第七のヴェール」「情炎の島」のシドニー・ボックスが製作した映画で、初期の短編四作を並べたもの。原作者モームが巻頭に出演して感想を述べている。脚本は劇作家であり「余計者は殺せ」を脚色したR・C・シェリフが執筆し、第一話を新人ラルフ・スマートが、第二話を「僞れる結婚」のハロルド・フレンチが、第三話を「キャラバン」のアーサー・クラブトリーが、第四話を「恋の人魚」のケン・アナキンがそれぞれ監督し、第四話をレジナルド・ワイヤーが、他の三話をレイ・エルトンが撮影した。音楽はジョン・グリーンウッドが作曲、ロンドンのフィルハーモニア管絃楽団がミューア・マシーレンの指揮で演奏している。主なる俳優は「魔法の楽弓」のセシル・パーカー、舞台女優ハーミオン・バッデリー、「捕われた心」のマーヴィン・ジョンズ及びベイジル・ラドフォード、新人スタアのダーク・ボガード、スーザン・ショウ、マイ・セッタリング、オナー・ブラックマン、ジョージ・コール、「愛の海峡」のフランソワーズ・ロゼー、喜劇俳優として売出しているノーントン・ウェイン、新顔のリンデン・トラヴァース、「灰色の男」のノラ・スウィンバーン。ジャック・ワトリング、「南極のスコット」のジェームズ・ロバートソン・ジャスティス、フェリックス・エイルマー等。一九四八年作品である。

1948年製作/イギリス
原題または英題:Quartet
配給:NCC
劇場公開日:1951年1月27日

ストーリー

〔第一話人生の実話〕有閑有産の紳士ヘンリー・ガーネットは、十九歳の息子ニッキイが人生の冒険で幸運に過ぎたことが心配である。ニッキイはテニスの国際試合にモンテ・カーロへ行き、父の禁制三ケ條を全部破って成功した。賭博を試み、金を貸し、女と戯れたのであるが、ことごとく運がよかったのである。ルーレットで勝ち、勝った金の一部を見知らぬ女に貸したら、女は返してくれたので、その女と夜食をしダンスをして夜を更かした。女のホテルに泊ると、女は夜中に起きてきて彼の懐中物を抜取り、花瓶に隠した。見ていた彼は花瓶から取戻して、朝何くわぬ顔で別れた。帰途の飛行機上で札を数えると、自分が賭博で勝った金が倍近くになっていた。花瓶から出す時に女の金も一緒につかんできたのだ。ヘンリーは困ったと云う。友の一人がテニスを覚えさせたのが悪い、クリケットをやる者にはそんな間違いはないと云った。 〔第二話変りだね〕田舎の豪族ブランド家の息子ジョージは、生来ピアノが好きである。職業としてピアニストを選ぶというと、父母親族が大反対である。ジョージを愛する従妹ポーラが妥協案を出す。彼を二年間パリへピアノ修行に出し、二年後に相当のピアニストに判定させて、職業ピアニストとして素質ありと云われればピアニストにし、否と云われればブランド家を継いで田舎紳士となることというのだ。ジョージは楽しい二年をパリで送る。田舎に帰って名高い女流ピアニスト、リア・マカートに演奏を聴いてもらう。判定はアマチュアとしては立派だが、ピアニストを職業とするには素質が無いという断定であった。女史はジョージに乞われて一曲を奏するが、誰の耳にも差は明白である。ジョージは自分の部屋に戻ると、猟銃で自殺した。その査問会が開かれた。陪審員が立って自殺でなく、猟銃掃除中の過失死だと評決した。理由はブランド家の若様ともあろう人が、ピアノが上手にひけない位の事で自殺をする筈はない、というのである。 〔第三話凧〕ハーバート・サンブリイは父母の血を受けて、凧が大好きである。土曜日の午後は必ず凧をあげる。ところが恋人ベテイは凧は子供の玩具だという。ハーバートは彼女をお茶に呼んで両親に会わせたが、散々の不首尾である。それで彼は母と喧嘩してベテイと結婚し、凧もあげないで何週間かを送る。停車場で父に会ったのがキッカケで、彼は父母と凧あげをした。妻と喧嘩した。妻が寝室にとじこもって会わないので、ハーバートは父母の家に帰り、土曜毎に妻に仕送りする。大凧を作って評判となる。ベティは復縁を申入れたが、彼は凧に執着する。妻は怒って凧を破壊する。ハーバートは怒り仕送りを止める。その為に訴えられて投獄される。人事相談係りの男が、この話をききベティを訪れた。ハーバートは出獄した。凧あげ日和なので広っぱへ行くと、ベティが凧をあげている。ハーバートは妻と二人で糸を手繰った。 〔第四話大佐の奥方〕退役大佐ペレグリンは田舎に屋敷があるが、色々の仕事で多忙である。ロンドンにはデーフニという妾を囲っている。ところが妻のイーディが詩集「ピラミッド崩る時」を娘時代の名で出版した。大佐は妻から一冊貰ったが詩に興味がないので、パラパラと見ただけである。ところが詩集はベスト・セラーとなり重版また重版で、大評判となる。気になって読み直そうとすると、彼が貰った一冊は妻が誰かに贈ったらしい。本屋に買いに行くと品切れだ。困った大佐はデーフニに内容を聞く。年上の女が青年の恋人を持っている、そして駈落する瀬戸ぎわに青年が死ぬ、という筋であるが、燃ゆる情熱が美しい詩に書かれており、作者の体験談に相違いないと断言する。情熱の女流詩人として大佐夫人は社交会の寵児となる、大佐は友人の弁護士を訪ねると、人の噂も七十五日、消え去るのを待つが上分別と教えられる。聞きたいなら奥さんに聞けと言われて大佐は、聞きにくいのをこらえて妻にきく。恋人はあなたですという答である。結婚して十二年幸福だった頃の思い出だという。あなたの私に対する愛は消えたのだから、青年は死んだわけだというのである。

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