「トム・ハンクスこの頃は硬軟自在の演技派」ユー・ガット・メール うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
トム・ハンクスこの頃は硬軟自在の演技派
メグ・ライアンという、最高のラブコメ女優と、これまたコメディでこそ光るトム・ハンクス。この二人が組むんだから、面白くないはずがない。
古い作品なのに、それを感じさせないしっかりしたストーリーは小手先の演出に頼らない。
現実には何度も顔を合わせているのに、ネット上では見知らぬ他人という設定を上手に生かしている。
形を変えた、ボーイ・ミーツ・ガール的映画で、このテーマは永遠不変のものであろう。これからも、このジャンルは趣向を凝らした作品が作られていく、そのマイルストーンに、この作品も名を刻んでいると言える。
一方、残念だったのが、音楽。
近年では、懐かしのヒット曲を積極的に掘り起こし、作品の雰囲気を盛り上げるのが盛んになり、音に触れるだけで、作品の空気を主人公たちと共有できた気分になるが、この時代はまだそこまでの音楽のこだわりは感じられないのだ。
オリジナルスコアに魅力が乏しければ、それっきり、映画の音楽に関する感想は消えてしまう。
主役の二人をどれだけ魅力的に映すかに、主眼が置かれている映画製作なのであろう。
それにしても、とことんひどい目にあっているはずなのに、悲惨に映らないメグ・ライアンの表現力は、他に例を見ないだろう。他方、トム・ハンクスがそれほど陰湿に映らないのも、メグの演技の反作用に他ならない。
ちょっとさじ加減を間違えただけで、いやな男に破滅させられた、地域密着型書店員で、ネット上で知り合った理想の男性は、ほかならぬそのいやな男だった!という悲劇にもなり得るテーマなのだった。
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