劇場公開日 1998年10月17日

「「普通の人々」での女性像の修復的意味合いの作品だったのだろうか…」モンタナの風に抱かれて KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0「普通の人々」での女性像の修復的意味合いの作品だったのだろうか…

2024年7月1日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

この作品は、「L.A.コンフィデンシャル」
「プライベート・ライアン」「タイタニック」
「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」等
の名作や話題作揃いの年に、
キネマ旬報ベストテンで第9位に選出された
作品で未見だったが、
テレビ放映を機に初鑑賞することが出来た。

この映画、
少女とその母親と馬の再生物語風ではある。
しかし、作品の中で、
人間と馬との関係の歴史は語られたが、
この個別のケースにおいて
母親が娘の心の病を治すために、
馬の再生が必要とどう確信したのか。
結果的には良い解決になったものの、
途中での彼女の振る舞いにそうは見えない。
また、雑誌の編集長として
独善的で多忙な人間像を
初めに見せておきながら、
何故、長くその現場から遠ざかる決断が
出来たのか等の疑問を
引き摺ったままの鑑賞となったことが、
逆にこの作品を、その疑問の解明のためにと
飽きなく観ることが出来たように思う。

しかし、殺されそうになったことで
生じた馬の恐怖心と
娘の事故は別次元であるとの前提が、
この物語への基本的な理解の妨げに
なってしまったような気にも。

また、都会のせわしい時間世界と、
地方のゆったりとした時間世界の対比を
描いているようにも感じたが、
牧場の日常を中心とした描写の多い
長い上映時間そのものにも、
そんな意味合いがあったのだろうかと
邪推もしてみたくなる長尺な作品だった。

それでも、
最初で最後になるであろうと思わせた
意識的に身体を寄せ合う二人のダンスシーン
は見ていて切なくなった。
人生には、心を通じ合わせながらも
別れざるを得ない関係は
数多くあるだろうが、
続くラストシーンには「マディソン郡の橋」
が思い出された。
立ち去るのは伴侶のある女性の方で
「マディソン…」とは逆ではあったのだが。

さて、同じレッドフォード監督の
「普通の人々」は、家庭問題の原因を
母親一人に押し付けての内容だったが、
ここでは、“母親”として、と言うよりは、
二人の男性との関係のみならず、
娘との関係においても
“女性”としてと、その視点を移して
家庭問題を描いていたように感じる。

他の男性への心の揺らぎを気付き、
妻の最終判断を諭す夫。
また、惹かれ合いながらも、
伴侶もあり別れた妻と同じ都会的な匂いの
女性であることに悩んだのであろう結果、
慎重な判断を彼女に諭す牧場の男。
そんな中、少女の母親は、
冒頭では、「普通の人々」と同じ
独善的な人間性として描かれていたが、
最終的には、
少女や馬の再生の影響もあってか、
二人の男性の諭しを受け止めることの出来る
“女性”として再生を遂げていた。

レッドフォード監督は「普通の人々」で
描いた女性像を修復する意味合いも込めて、
この作品を製作したのだろうか。

KENZO一級建築士事務所
こころさんのコメント
2024年7月6日

KENZO一級建築士事務所さん
私など、常に図書館本が手元にありますが、本を全く手に取らない日が大半です 😆
数日前、返却期限延長の入力を📙

こころ
こころさんのコメント
2024年7月4日

KENZO一級建築士事務所さん
『 就寝前に読む 』、案外出来そうで、出来ないんですよね 😆

こころ
こころさんのコメント
2024年7月4日

KENZO一級建築士事務所さん
読書家なのですね!
余程気にならない限り、原作本が気にならない私です 😆
クリスティン・スコット・トーマスパート、原作では映画程の枠が取られてはいないのですね。熱く乾いた砂漠、必然のように求め合う二人、忘れられない作品の一つです。

こころ
こころさんのコメント
2024年7月4日

KENZO一級建築士事務所さん
「 イングリッシュ・ペイシェント 」、強烈な印象を残す作品でしたね。
ジュリエット・ビノシュパートよりも、クリスティン・スコット・トーマスパートの方に、私も惹かれました。
全身火傷を負いながら、ただひたすらに愛おしい人を想う姿が痛々しく、惹かれ合った二人の姿が一層生命の輝きを放っていたようにも感じました。
クリスティン・スコット・トーマスパートはもう一度観たいかも。

こころ
こころさんのコメント
2024年7月2日

KENZO一級建築士事務所さん
コメントへの返信を頂き有難うございます。
未だ10代のスカーレット◦ヨハンソンが、母親の揺れる心情を熱演したクリスティン・スコット・トーマスに全く見劣りしない感情豊かな演技をされているとは。とても印象に残るシーンでした。
こちらこそ宜しくお願い致します。

こころ
りかさんのコメント
2024年7月2日

こんばんは♪ご返信ありがとうございました😊
実は私もはっきりは覚えていませんが、『マディソン郡の橋』のラストのような雰囲気を感じました。本作馬の話か恋愛かどっちなのかとも思いました。
こちらこそ隅々まで考え抜かれたレビューをまた楽しみにしております。よろしくお願いいたします🤲

りか
こころさんのコメント
2024年7月2日

すみません。。
『 との考え 』→ 『 と考え 』でした。

こころ
こころさんのコメント
2024年7月2日

KENZO一級建築士事務所さん
『 馬の再生が必要とどう確信したのか 』、『 何故、長くその現場から遠ざかる決断が出来たのか 』についてですが、傷付き心を閉ざした愛馬ピルグリムに自身を重ねたグレイスが、誰からも愛して貰えないと母親に悲痛な思いを吐露するシーンの後、アニーが夫に「 あの子を失ってしまう。」と、涙を浮かべながら訴えるシーンがありましたが、このままでは大切なグレイスを失いかねない( 自死してしまうのでは )、との考え、アニーはモンタナ行きを決断をしたのだと理解しています。

こころ
りかさんのコメント
2024年7月2日

こんばんは♪共感ありがとうございました😊
なるほどと思わせていただいたレビューです。
娘と馬とは幼い頃からの繋がりがあったからと解釈していましたが、それでは弱いのですね。
母があれだけバリバリ働いていたのに、辞める決断にも驚きました。ただ、その少し前に、仕事どうなっているのか、とは思ってましたが。

りか