黙示録の四騎士(1921)

解説

西班牙の文豪イバネスの原作をジューン・メイシスが脚色し、「征服の力」で最近我国にも知られたレックス・イングラムが監督した大作品である。ルドルフ・ヴァレンティノ氏とアリス・テリーとが主役、そのほか著名の人が数多く出演している。製作に6カ月と百万ドル以上とを費やし、45万尺のネガティーヴと1万2千5百人の俳優と、14台のカメラと、15人の撮影監督助手を使ったと云うのもまんざらほらではないらしい。4騎士とはー―白い馬に跨る「征服」、赤い馬に跨る「戦い」、黒い馬に跨る「飢饉」、灰色の馬に跨る「死」の4騎士をいうのである。世界始まって以来常に戦争は人々を苦しめて来た。この20世紀に来てさえもその恐怖は人々を戦慄させた。野心止む時なき「人」を懲すため神の裁きの剣は抜き放たれたのである。壮大真に魂を驚かせる物語が展開されていく。米国映画界の興行上記録破りの大映画であるから上映の上は定めし我国でも大騒ぎとなろう。

1921年製作/アメリカ
原題または英題:The Four Horsemen of the Apocalypse

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映画レビュー

3.5平和主義を説く啓蒙と見世物映画の渾然一体にあるサイレント映画の使命

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

サイレント映画の美男スター、ルドルフ・ヴァレンティーノの主演映画と思って観ていたら、見所は全く違っていた。スペインの文豪ビセンテ・ブラスコ・イバニェス原作の映画化が訴えるのは、壮大な平和主義であり反戦思想である。舞台が新大陸アルゼンチンから旧大陸のフランスへ進展する大作。平和主義のメッセージ性が誇張された前時代の単刀直入な映像表現であり、当時の観客に合わせた単純さを批判する積もりはない。それよりも、監督に起用されたのが若干26歳のレックス・イングラムという驚きである。8歳でアイルランドからアメリカに移住して俳優から23歳で監督デビューしたイングラムは、既に10作以上の作品を物にしている名匠であった。
新大陸アルゼンチンで資産を築き上げた男の子孫が、仏独に分かれて第一次世界大戦が始まる。フランス側のフリオ・デスノイエルズ(ヴァレンティーノ)は、画家志望でアパートの一室を裸女でいっぱいにしている。その美男振りも評判で、人妻マルグリート(アリス・テリー、イングラム監督夫人)が彼と親交を結ぶ。それが夫ローリエにばれるところが、如何にもサイレント映画らしい。父マルセロは、田舎のお城を買い取り高級な家具調度品を蒐集するブルジョワ生活を享受するが、戦争によってドイツ軍に占領される。運命の悪戯か、ドイツ軍の将校のひとりに彼の実の甥がいて、それはドイツの子孫が勉学に勤しんだ結果という皮肉である。それから紆余曲折あり、フリオの友人でロシア人のチェルノフが現れ、ヨハネ黙示録の啓示を伝える。これが、主題と直結する。四騎士が空高く駆けるシーンの幻想的な映像とオポチュニズムが入り混じった不思議な映像空間に言葉を失う。最後夫の元へ戻るマルグリートと決別したフリオが戦場へ向かう。この戦場シーンが素晴らしい。
見世物小屋から芸術表現の映画に変化して、あくまで娯楽性を優先した映画制作ではあっただろう。だが、このイングラム監督の作品にある平和主義の啓蒙思想が、一番、映画としてしっくりくるのではないだろうか。表現以上にその意図に何か神聖なものを感じてしまう。
    1978年  10月30日  フィルムセンター

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Gustav