「恋の妖精は何でもお見通しの、ハッピーエンドが心地良いハリウッド映画のお手本」めぐり逢い(1957) Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)
恋の妖精は何でもお見通しの、ハッピーエンドが心地良いハリウッド映画のお手本
同監督レオ・マッケリーの1939年制作の恋愛映画の古典「邂逅」のリメイク作品。渋みを増した中年男の色気が漂う53歳のケーリー・グラントと、エレガントな美しさに磨きがかかる36歳のデボラ・カーによる大人の恋のスイート・ラブアフェアー。男女間の洒落た会話劇の楽しさ、恋に正直であろうとする主人公ふたりを取り囲む人たちの温かさが観ていて心地良い。事故後のデボラ・カーが子供合唱団で指揮する二つの楽曲の歌詞も、ふたりの未来を包み込む優しさに溢れ、テーマ曲「想い出の恋」と共に作品を品良く仕上げている。祖母のショールが再び二人を結び付けるストーリーの流れも自然で綺麗に繋がる。映画的な表現では、ニューヨークに到着した豪華客船のデッキから互いの婚約者とする再会のやり取りの場面で見せるグラントとカーの嫉妬交じりの反応が面白く、更にカーの表情がチャーミング。祖母の別荘に響く客船の汽笛音、船旅の最後の夜にデッキで佇むふたりに聴こえてくる(蛍の光)の音楽と、音の効果もさり気無い演出だ。ラストの男と女の意地の裏返しで牽制しながら嘘をつき、尚相手を思い遣る言葉の積み重ねでグランドがカーの真実を悟る急展開は見事であるし、唯々美しい。恋の妖精は何でもお見通しの、ハッピーエンドが成立するハリウッド映画のお手本映画。
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