「ギャング映画であり、実録ドラマの傑作だね。」民衆の敵(1931) 瀬戸口仁さんの映画レビュー(感想・評価)
ギャング映画であり、実録ドラマの傑作だね。
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後世の犯罪映画に、多大な影響を与えたといわれる傑作映画。禁酒法時代のアメリカで、子どもの頃から悪事に手を染めていた男が、ギャングに加わって密造酒ビジネスで成功するが、抗争に巻き込まれて非業の死を遂げる。
物語自体は、よくありがちなものだし、ベタな展開ではあるのだが、語り口が巧いので、最後まで見続けることができる。なんといっても、主演をはじめとするキャスト陣の好演が光るのではないかと。
若いころに自分たちを裏切った男に復讐を果たしたり、主人公トムと死ぬまで一緒だった生涯の友人マットや、トムを最後まで心配し続けた母親と兄の存在など、大衆受けする要素はしっかり抑えている。
主人公トム(ジェームズ・キャグニー)が、最初の彼女キティ(メイ・クラーク)があまりにゴチャゴチャ言うので、グレープフルーツを彼女の顔に押し付けるシーンは、最も有名なシーンの1つですね。
後にトムが結婚するグウェン・アレン役で、ジーン・ハーロウが出てくるのだが、本作は彼女にとって、本格的なキャリアの初めのほうの作品だね。
ギャングという世俗的な題材を、大きな娯楽作品として描き切った手腕は評価したい。結局は抹殺されてしまう主人公を、実に魅力的に描き、無法者や悪党に対して、フラットな目線で、実録ドラマとして描き出している。
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