「出来る女は罰せられる?」マリア・ブラウンの結婚 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
出来る女は罰せられる?
まずポスターのコピー「女ありて」に突っ込み。「女の一生」かい!「滝の白糸」かい!
あらすじからは未帰還兵の妻の物語、例えば「ひまわり」のような映画を予想していた。
でもマリアはソフィア・ローレンと違い早々に夫を待つこと、探すことをやめ自分なりの道をみつけようとし始める。米軍相手のバーに勤めビルと知り合い子どもを宿すところはよくある戦争未亡人もののパターンだけど。この映画は実はそこからの出発で以降、実業家のオズワルドと知り合ったマリアが身体と頭脳をフル活用してのし上がっていく姿が描かれる。このあたりドイツの復興とリンクさせており痛快である。でもマリアのユニークなところは結婚は維持するところ(日本流にいえば籍は何があっても抜かない)これは夫ヘルマンを愛しているからと劇中で説明されているが恐らくはマリアなりの生き方のルールなんだと思う。
映画としては今では分かりづらい部分もあるが全般的にテンポがよくユーモラスなシーンも多い。音の使い方が実にユニーク(ラジオやレコードの音声と会話がかぶるところなど)なのも見どころ、聞きどころである。
ただ、最後にマリアが事故を起こし恐らく死ぬところはどうもいただけない。
マリアの相手としてはヘルマン、ビル、オズワルドと3人の男性が出てくるが、彼らにとってはマリアは終生愛する存在、いわばファム・ファタールである。田嶋陽子さんによると映画でも文学でもファム・ファタールは必ず死ぬ運命にあるそうです。これは男を手玉に取ることで男性社会に身分不相応な挑戦をした女性に対して無意識に罰を加えているから。ファスビンダーも社会的黙約から逃れ得なかったということになりますかね。マリアの成功で映画を締めくくって何が悪いのかと思います。
ファスビンダー監督の悪意爆発! ですよ。修行を終えた夫とやっと始まる新生活、スタート時同様爆発で・・こんな結婚生活だったんですよーと晒してるんだと思いました。