「1944年、第二次世界大戦が激化するドイツ。 爆撃が激しくなる中、...」マリア・ブラウンの結婚 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
1944年、第二次世界大戦が激化するドイツ。 爆撃が激しくなる中、...
1944年、第二次世界大戦が激化するドイツ。
爆撃が激しくなる中、結婚式を挙げたマリア(ハンナ・シグラ)。
夫のヘルマン・ブラウン(クラウス・レーヴィッチェ)は、結婚式翌日、戦地に赴き、そのまま帰還しなかった。
夫婦で暮らしたのは、わずか半日と一夜。
終戦後、尋ね人の看板を背負って駅へ日参するマリア。
親友の夫は無傷で帰還するも、ヘルマンは帰らず。
とうとう諦め、バーで女給として働き始めたマリアを見初めたは進駐軍の黒人米将校ビル。
深い仲になったビルとマリアであったが、ある日、愛し合おうとしていたふたりのもとにヘルマンが帰って来、ビルとヘルマンがもみ合う中、マリアはビルを殴殺してしまう。
裁判にかけられ、判決が下されようとしたその時、「殺したのは自分だ」とヘルマンが声をあげ、そのままヘルマンは服役することになってしまう・・・
といった内容で、マリアはその後、列車内で知り合った織物商オズワルト(イヴァン・デニ)の通訳兼秘書として事業の一翼を担うことになり、成功者になるのだが、獄中のヘルマンのもとを訪れることは忘れなかった。
そこには、ヘルマンへの心底から愛があったのだが、ヘルマンとの距離は微妙に離ればなれで、最終的にはバカげた死がふたりを迎える・・・と展開する。
戦後女性のたくましい半生の映画のように見えて、その実、マリアのヘルマンに対する深い愛が描かれた物語。
可憐な女性の清らかな愛、というような通り一遍の描き方でないところが本作の特徴で、さらに、そのふたりのあいだを裂くかのように、復興途中のドイツの喧騒・騒音が映画全編にわたって鳴り響いているあたりが、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の鬼才ぶりを示しています。
特に、「ドイツ連邦共和国初代首相アドナウアーのユダヤ人ホロコーストの贖罪声明」と「サッカーワールドカップ決勝 ドイツ対ハンガリー戦」の両ラジオ実況は、セリフとも丸被りで、今回のリバイバル上映では、セリフとラジオ実況の両方が字幕で表現されています。
ワールドカップの実況から映画のラストは1954年であることがわかり、ドイツの戦後復興史の一面を描いているともいえます。
このように、多重構造を持った映画なので、理解するのはなかなか骨が折れます。
しかしながら、そのあたりが理解できると、より一層、映画の深みが味わえるでしょう。
出演陣は誰もが秀逸ですが、ハンナ・シグラの存在感がすごいです。
傑作です。