「本来の自己の姿に自然であること それは人間の本当の幸福の姿なのです」まぼろしの市街戦 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
本来の自己の姿に自然であること それは人間の本当の幸福の姿なのです
色々なオータイムベストの名画のリストの上位に必ず掲載されている作品にも関わらず、レンタルにも無く中古DVDも高額で取引されていた作品です
ようやく観ることが叶いました
それも4kリマスターの鮮明な映像と色彩、明瞭な音声、音響で堪能することが出来ました
これこそ名画座の果たすべき役割と劇場と関係者の皆様に感謝です
内容はもちろん正気であったのは果たして誰であったのか?です
ベトナム戦争の悲惨な状況に厭きていた70年代はじめの米国でロング上映になったのもむべないことでしょう
戴冠式で公爵が王に言います
世界は舞台であると
そしてあまりの狂気の果てに芝居は終わりだと告げます
人は誰しも自己の役割を演じて生きています
父として、母として、責任ある役職として、軍人として、あるいは娼婦として……
そしてその役割の中で自己とのギャップに苦しむものでもあります
あまりの過酷な現実が、あなたに求められる役割像が怪物のようになった時、あなたは耐えうる事が出来るのだろうかと問うてくる
そんな作品でもありました
本作を観てふと思い出したのは銀座や北新地の高級クラブで綺麗なホステスさんと疑似恋愛を楽しむお金持ちの紳士たちのこと
彼らがその財力で外車やマンションの鍵をプレゼントするという狂気
それは本作の物語とどこか通ずるものがあると思いました
そしてわかった気がしました
彼らはその狂気を楽しんでいたのです
その恋愛ごっこの狂気を完璧なものにするために散財をしていたのです
私たち普通の人間にはそのような散財をして人間性を保つだけの財力はあるわけもなく、いかにそのギャップのストレスに耐えるのか?
それが昔とは違うとても密度の濃い仕事を強いられている21世紀の現代人こそ求められていることではないでしょうか?
本来の自己の姿に自然であること
それは人間の本当の幸福の姿であるはずなのです
それが本作の現代における意義ではないでしょうか