「5年後にまた観てみたい」マディソン郡の橋 なおちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
5年後にまた観てみたい
この映画で一番心に残ったのはフランチェスカは教師時代の話をロバートにします。
「どの子も才能を秘めていたのよ、なのに私が才能を引き出すことができた子を私は素晴らしい子だと思ってしまったのね」というようなセリフです。
お酒の力もあって会話は弾み、イーストウッド演じるロバートは犬歯の後ろの歯までみえる笑顔になります。それをみつめて笑いかえすフランチェスカに私は生徒の話と同じことを感じました。
離婚で痛手を負った男性の家事を手伝おうとする姿や、写真集を出すべきというフランチェスカの言葉を約束のように実行するロバートがいじらしい。カメラのフィルムは冷蔵庫にしまうのに時計をしたまま行水をしたり、置手紙があってもシャッターチャンスを逃さないため写真を撮ってから読むというような、目的以外のことには無頓着になってしまう一面もあって完璧な男にはなっていないのもよかったです。町のレストランで、不倫をしてために住民からつらく当たられるルーシーに声をかけ、寄り添う気持ちもある。
フランチェスカが夫と買い物をするのを雨にずぶ濡れになって見つめるシーンは胸が締め付けられ、バックミラーにペンダントを懸けるところもなにか儀式のようで、苦しくて叫び出したくなるのに微かな怒りも感じました。自分と夫をずぶ濡れで見つめる俺を見せつけてくるところがアーティストでした。
寝取られ夫であるリチャードは、妻がいないと眠れないかもと言ってしまうような人です。
四日間家を空け、帰ってきたら妻が美しくみえたとしたら何を感じただろう。車のなかで妻がいきなり泣き出して、「お腹が痛いの」とか「悲しいことを思い出したの」と言い訳もしてくれない状況に何を思っただろ。バックミラーに掛けたペンダントはフランチェスカしか気づかなかったのだろうか。
人生の最終章で妻に「夢と違う人生を歩ませたね」と言う夫は本当に何もわかっていなかったのだろうか。
フランチェスカはロバートと一緒に生きることを選ばず、家族と暮らします。
昔の私はそれば夫に対して失礼じゃないか!と思ったものです。ですが今はそう思えなくなりました。自分が駆け落ちしたことで、夫も子供も愛されてなかったと思ってしまうことに耐えられなかったのでは?いままで気持ちを重ねてきた夫がこの町では女房に逃げられた男のレッテルを張られたくないのだと感じました。
また田舎町では魅力的に感じるロバートとの生活、非日常が日常になったあとの不安があっで、慣れ親しんだ生活を捨てれなかったように取感じます。死んだあとは夫の隣で静かに眠るのではなく、灰になって風雪に翻弄されどこかへ飛んでいくことを望んだフランチェスカにとってリチャードは夫というより庇護者になっていて甘えていたようにも感じました。
母の四日間の記録を読んで、彼女の子どもたちはメッセージを受け取りました。
ひとりは自分の妻に「今の人生で不満はないか」と聞き、愛を伝えます。
もうひとりは自分をないがしろにする夫に別居したいとを伝えます。
2人とも大変なことはあるだろうけど、明るい顔をしていました。
母も娘も似合っていなかったドレスにはどんな意味があるのだろう。
今の私にはわかりません。意味などないのかもしれません。
それはもっと年を重ねたらわかるのかな。
ロマンティックなシーンで「なんでこの季節に暖炉を焚いてるの」と気になり出したり、ロバートの焦げたトーストが焦げのないトーストに変わることに気を取られてしまう私は恋愛は向かないのだと感じました。