「制作陣の熱量がハンパない」マッドマックス Garuさんの映画レビュー(感想・評価)
制作陣の熱量がハンパない
日本中の10代が荒れに荒れていた80年頃、 中学で早くも車を乗り回していた同級生のワル達が、マッドマックスが凄かったと興奮状態で騒いでいたのを覚えている。 それで観に行ってみたのだが、これが本当に凄かった。
まずは、壮絶なカーアクション。 死人さえ出したとも言われる無謀なカースタントの数々は、最大の見どころだ。 CGを多用する現代に比べ、コンプラ観念など皆無だった時代のカーアクションには、どれも圧倒的にリアルな迫力がある。 究極までスピード感を演出したマッドマックスは、 ここで頭一つ抜きん出た。
そして、監督のジョージ・ミラーと若手のイケメン俳優メル・ギブソンをフロントとする、若い制作陣の熱量の多さ。 殺伐とした雰囲気と、エッジの効いたキャラクターたちを生み出したのは、無名の俳優たちの職業感ゼロの演技だ。 それが功を奏してか、善と悪のコントラストが際立ち、独特のアングラ感が生み出されている。 この雰囲気に飲まれた観客は、いつしか暴走する若い警察官と一体化し、 気づけば心のアクセルを力いっぱい踏み込んでしまうのである。
物語自体はハッピーエンドではなく、どこか陰鬱な雰囲気も漂う。 ミラー監督の出自がヨーロッパであることが関係しているのかもしれない。 しかし、明るく広大なオーストラリアの大地と物語の暗いトーンのコントラストがまた、 この作品ならではの世界観になっているのだ。
シリーズ化された作品は、どれも監督の想像力が爆発していて面白い。 私が圧倒的に好きなのは、一番物語がシンプルで復讐劇としての完成度が高いこのオリジナル。 「表現者としての自分を絶対に世に知らしめてやる」 というミラー監督の強烈な野心が、世界中をアッと言わせたアクション映画の傑作だ。