「彼をMADに駆り立てたもの」マッドマックス 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
彼をMADに駆り立てたもの
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本編を見てみればわかるように、主人公のマックスは実際そんなに狂っていない。家に帰れば妻と子供がいるし、仕事についても矜持がある。本当に狂っている人間であれば「警察という仕事が実は暴走族と紙一重なのではないか」などという自省に思い至れるはずもない。マックスはごく普通の善良な人間だった。物語の途中までは。
マックスが"MAD"に陥ってしまった契機はどこにあったのだろうか?もちろん、一番の原因は彼の家族や仲間を奪った暴走族たちだが、マックスの怒りの矛先はさらにその先にあるような気がする。それは社会だ。
彼の家族や仲間を脅かすならず者たちが、彼に仕事をせがむ上司たちが、人心を歪ませる荒廃した街の雰囲気が、彼を狂気へと駆り立てたのではないか。
暴走族との最終決戦に臨む際、マックスは改造したインターセプターを用いるが、これは警察署から無断で盗んできたものだ。この行為の根底には彼の警察組織に対する怒りも内包されていたことだろう。
マックスは自分一人で暴走族を壊滅させることで愛する者たちの死にせめてもの墓標を立ててやろうとするが、そこにはオーストラリアの荒野のように際限のない空虚さが広がるばかりだった。
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