「大事なものはなくならない」マグノリアの花たち kakerikoさんの映画レビュー(感想・評価)
大事なものはなくならない
私が一番共鳴した部分をちょこっとご紹介。
それは母と娘の関係です。サリー・フィールド演じる母親の姿とジュリア・ロバーツ演じる娘の姿、幾度となく二人が向き合いそれぞれの思いをさらけだすシーンがあります。
幸せな結婚、妊娠と育児、仕事の両立、普通にどこにでもいる女性の、生涯の中で最も充実し輝く時期です。
「面倒をかけるのは今日でおしまいね。」といって、結婚式の後、住み慣れた家を出ていく時に、ピンクのスーツにコサージュを母につけてもらいことを願う娘。沢山の仲間に祝福され満面の笑みで手を振りながら、愛する人と車に乗り込むそんな娘を、母は嬉しそうに見守るのですが、一瞬、その顔が不安そうに所在無いげに、曇ります。そう、母だけが見せる顔です。
そして病故、試練に向かう娘の妊娠を素直に喜べない親の苦悩。そんな母に娘は憎まれ口を叩いてしまいます。「自分の思い通りにならないのが気に入らないの」かと。
凄くよくわかるシーンです。「長い空洞の人生よりも例え30分でも詰まっている生き方がしたいの。」娘の懇願する顔には、どんな母でも勝てません。人工呼吸器を外す息を呑む数分間のシーン、次いで墓地での母の激白。
「あの素晴らしい娘が生まれた時を見守り、去っていく時を見守った。私の人生で最も貴重な一瞬」と。もう涙腺決壊もいいとこです。終始、娘を温かく見守り助け、最後まで深い情愛で支えた母の姿をこんなにも見事に巧く描き出した作品はそうないでしょう。
そして、この作品がただ重く切なく悲しいストーリーにならなかったのは、いうまでもなく、母娘の周りにいてくれた、時に家族以上の女友達の存在が、大きかったからでしょう。深い悲しみの中でも人は笑顔の花を咲かすことができるのだということを見せてもらいました。
「そうやって、時は流れていく」
いつかは悲しみも切なさも癒されていくもの、大事なものはなくなったのではなく、胸の奥深い所へしまっただけ、そして、希望の花をまた咲かせるために人は前に進むのです。