「時に疑い、時に信じ、そして命を賭して互いを護る男の友情」ボルサリーノ kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
時に疑い、時に信じ、そして命を賭して互いを護る男の友情
午前十時の映画祭13にて。
実在したギャングをモデルにしたフィクション。
アラン・ドロンは、殴られて吹っ飛ばされるところまでもイケメン。
ジャン=ポール・ベルモンドは、渋い面立ちに子供っぽい愛嬌が同居していて、見続けるほどに二枚目に見えてくる。
異なる個性の二人がボルサリーノハットを粋に被り、何から何まで格好よくて色っぽい。
1930年代のマルセイユ。街の実力者の後ろ盾はヤクザだという時代。
二人の出会いは、暴力の底なし沼への入口だった。
ドロン演じるロッコと、ベルモンド演じるフランソワは、情婦ローラ(カトリーヌ・ルーヴェル)を巡る争いをきっかけに意気投合する。
このローラという女性、元はロッコのオンナで、彼が服役中にフランソワのオンナになっている。
ロッコに「行くぞ」と言われてコートを着ようとすると、フランソワに「どこに行くんだ」と言われてコートをハンガースタンドに戻す。
ローラは男の顔色を常に気にしているようだ。そして、男から褒められると心底嬉しそうで、甲斐甲斐しく料理をふるまう。
不良男に依存する女性にありがちなタイプというか、“ヤクザの情婦”という“人種”は洋の東西を問わないのだな、と思った。
『ゴッドファーザー』や『仁義なき戦い』ほどの血生臭さはないが、血で血を洗うヤクザの利権争いの物語であり、チンピラが成り上がっていく過程の友情の変化を追っている。
どちらかが街を去らなければ、やがてお互いが殺し合うことになる。
劇中何度か使われるフランソワのコイン・トスで最後の賭けをする二人。このインチキをロッコは知っていて、フランソワの判断を尊重してきたのだ。
なんという、暑苦しくなくクールで、だが熱い友情か。
暴力の連鎖に終わりがないことを示唆するラストシーンの切なさが胸を打つ。
美しくも悲愴感に満ちた表情のドロンの腕の中で、ベルモンドは目を閉じて何も語らない…。