「戦争映画というよりも人間の本質映画」炎628 シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争映画というよりも人間の本質映画
本作も凄い作品という噂だけ聞いていたので、自分の中の“宿題作品”の1本になっていましたが、手頃な価格でオークションされていたのでやっと購入出来ました。
見終わってとにかく凄まじい作品だったので、暫く興奮状態から抜け出せずにいました。
戦争映画というカテゴリーの作品は今までにも多くの傑作と呼ばれる作品を見て来て、その都度衝撃を受けて来て、たまたまですが今月の初めに『シビル・ウォー/アメリカ最後の日』という作品を見ても同種の衝撃を受けたばかりでしたが、架空の物語と実話を基にした作品との差なのかどうかは分かりませんが『シビル・ウォー~』を見た直ぐ後でも、本作の衝撃力は凄まじく遥かに凌駕していた様に感じられました。
表現しているモノは同じで、どちらも人間の元々持っている残虐性であり、理由さへあればそれが簡単に発動することに対する糾弾であるのですが、これは現代の戦争映画における世界の統一的アプローチではあるのですが、私が本作に対して他の同類作品以上に衝撃を受けたのは、恐らく画面から殺された者たちの恨みや呪いまで感じとってしまったからかも知れません。
今までの多くの戦争映画では、もっと冷静に俯瞰した目線で戦争を捉えていた様に感じていたのですが、本作の場合はダイレクトに主人公フリョーラの心情を観客に伝える追体験的な手法で撮影され、それがこの衝撃の強さの大きな要因の様な気がしました。
但し、ラストでの彼が少年から一気に老人の様な様相となりヒトラーの肖像画を撃ち続けるシーンで、ヒトラーの人生を逆戻しした画面で最後の少年時代の写真で撃てなくなるのは、その前のドイツ軍の残虐行為の「子供から根絶やしにしろ」という台詞に対する抵抗であり希望でもあるように思われたのだが、その後のシーンでまたパルチザン部隊に加わり復讐の連鎖が始まるという結末に、観客は再び人間の救いのなさを突き付けられるのです。
更に言うと、本作が作られたのが1985年で約40年前の出来事を語り、私が見た製作から約40年後の今はロシアとウクライナがまた同じ悲劇を繰り返しているという事実があり、40年という歳月はほぼ世代が交代する時期であり、親世代の悲劇を一時的には冷静に眺められても、また世代が変わると繰り返し同じ悲劇が現実化するという、この成長しない人間のループを断ち切ることが出来ず、世界平和などはお伽話の様であり永遠に果たせない夢物語なのだろうと思わされる作品でした。
追記.
鑑賞後にYou tubeで本作を検索すると、字幕なし版でしたが恐らくデジタルリマスター版が配信されていました。
冒頭だけ見ると私の購入したDVDより画面は遥かにクリアで綺麗でしたが、私の購入したDVDはフィルム傷や脱色は修正されていたがフィルムの荒い粒子のザラついた質感で、個人的な好みからすると年代的にも作品的にもDVD版の方が好きでした。だからマニアは両方欲しがるのでしょうね。