劇場公開日 1987年10月30日

「凄まじい作品でした。」炎628 刺繍屋さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5凄まじい作品でした。

2022年2月17日
iPhoneアプリから投稿

配信サービスは勿論、レンタルでも見かけた事の無い作品なので、購入しようかずっと迷っていた作品なのですが、これは購入して正解な作品でした。

ドキュメンタリーではないかと思える程、真に迫った映像と演技…。
登場人物の表情を正面からアップでじっくりと映す独特な映像と時々入る動物たちの画と鳴き声(主に鳥でしたが)、そして不穏な音の使い方がとても印象的でした。
特にあの牛の眼と鳴き声は強烈でしたね。

パルチザンに憧れる少年が一挺のライフル銃を掘りおこした事から、戦争の渦中に立たされ、その中で少しずつ変貌していく姿を綴った作品ですが、アリョーシャ・クラフチェンコさん演じる主人公フリョーラの顔つきが徐々に変わっていくのが、演技とは思えないくらいリアルでした。
フリョーラだけでなく、ナチスドイツのアインザッツグルッペンの兵士からパルチザン、村人に至るまで、全ての演者さんたちのその表情…どのようにしたらあそこまでリアルな演技が出来るのか不思議なくらいでしたし、動物に対する行いも含め、どのようにして撮ったのかも気になりますね。
エキストラの人数もかなりのものですし、本当に家を燃やしたり、戦車やオートバイ、火炎放射器なんかも本物でしょうし、かなり大掛かりですね。
これを作品として纏めた監督の手腕にも脱帽です。

ただ、フリョーラとグラーシャが初めてきちんと話をするシーン、あそこだけは少し意味が分からなかったです。
終盤のあのシーンへのフラグなんでしょうが、何故突然あのような言動をしたのかが理解出来なかったです。

全てが心に刺さる作品でしたが、あの終わり方も心が痛くなりますね。

この作品では白ロシアでのナチスの悪虐非道ぶりを描いていますが、戦後、一応同じ国であるソビエト赤軍の兵士たちもレイプ・イン・ベルリンなどのナチスドイツに負けないくらいの行いをしていますし、WWⅡ前にはスターリンによって即決裁判で68万人もの人が処刑され、63万人もの人々が強制収容所や刑務所に送られたりしているんですよね。

ナチスの行いは決して許されるべきではありませんが、戦争そのものがあってはならない事を痛感させられる作品でした。

戦争や独裁者、先制政治によって犠牲になるのは常に民衆で、どちらも本当に必要無いものですよね。

白ロシア、現在のベラルーシが欧州最後の独裁国家になっているのが、僕には皮肉に感じされました。

刺繍屋