ホテル・ニューハンプシャーのレビュー・感想・評価
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小粒版『ガープの世界』
あっちこっちに散逸した物語の筋が途方もなく大きな愛によって不思議と大団円へ導かれるという構造はジョン・アーヴィングに特有のものであり、したがってここを再現できるかどうかがアーヴィング映像化作品としての価値を大きく左右するわけだが、本作はけっこううまいことやっていたと思う。
ただ、アーヴィングの映像化作品は本作の数年前にジョージ・ロイ・ヒルが監督した『ガープの世界』が構成的にも技法的にも大傑作であったため、それと比べてしまうと幾分か地味な印象。というか構成や技法もかなり強く『ガープ』が意識されている気がする。
死んだはずの家族が談笑し合うカットの裏面で「それでも僕たちは生きていかなくちゃいけない」と言って物語を締め括ったのはかなり好きだった。希望と絶望の表裏一体性を戯画的に描き出すスタイルはアーヴィング文学の一つの特徴であり、ここのカットはそれをうまく映像の形式に落とし込めていたと思う。
そういえば相米慎二『お引越し』のエンディングも、全ての時空が混じり合った亜空間で主人公が映画内で交流のあった知人や友人や家族と再び交流するというものだったけど、もしかしたらこれが元ネタなのかもしれない。あったかもしれない世界を夢や想像の中に描き出すことで現実の自分が少しでも前向きに生きていくことができるなら、それは決して悪いことじゃないと思う。
前衛?さっぱりわからない
コメディなのか、ブラックなのか、シュールなのか、とにかくテーマ以前に話しがあちこち唐突で、且つ突然脈絡もなく飛ぶので、まるで何だかわかりません。原作読了前提かな?50-60年代のようにザラついた粗い画面も気になります。
評価してる人も多いようなので、感性で観る人にはいいのかもね?
アメリカ人家族の強い絆がどんな荒波をも乗り越える逞しい人生ドラマ
トニー・リチャードソンの悲喜劇渾然一体の映画文学。ジョン・アービング文学の映画化ではあるが、各登場人物の強烈な個性の輝きは、リチャードソン演出の成果。舞台がアメリカとオーストリアのため、リチャードソンのイギリス的なシニカルさが薄まり、ストレートな性表現がアメリカ映画らしさを前面に出す。ジョディ・フォスターはの演技は、余裕すら感じさせる巧さ。ロブ・ロウは役柄に合っいて好印象を持つ。
突然の不幸や事故に遭遇しようと、常に前向きに生きて行く強かさが、アメリカ人家族の強い絆で描かれている。
好きにはなれなかった
人間版アダムス・ファミリーかと思ってしまった。おならばかりしている犬のソロー、フロイトの熊とコミカルな内容。それが、中盤に入ってからはレイプをテーマにした暗い内容。犬だって剥製にしてしまう。3つのホテル・ニューハンプシャーではそれぞれテーマが違っていたが、無理矢理ハッピーエンドにしようとファンタジーになってしまった最後のホテル。ウィーンまでは面白かったのに、最後は全くつまらなくなってしまった。
開けられた窓も無視すればいいんだし、深いテーマがあるのだろうけど、今回は無視させていただきます。
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