「サスペンスに欠ける」ボディガード(1992) よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
サスペンスに欠ける
92年に大ヒットしたラブロマンス。
脚本のローレンス・カスダンの名前に覚えが。「スターウォーズ 帝国の逆襲」も書いている。
ケヴィン・コスナーとホイットニー・ヒューストンの共演だが、誰もがヒューストンの演技力に不安を抱いたはず。しかし、その魅力的な笑顔と熱演により、大方の観客は満足したであろう。
二人がお忍びで映画館へ行く。上映作品は黒澤明の「用心棒」というのが笑わせる。ボディーガードというタイトルの作品を制作する際に、この昔の日本映画が念頭にあったことを率直に告げているところが面白い。
こちらハリウッドの用心棒は、武骨な三船敏郎のキャラクターとは異なり、ちょっと惚れっぽくて神経質である。元シークレットサービスの切れ者という割には、あまりに簡単に仕事の依頼主と寝てしまうのだ。おそらく、二人がベッドに入るタイミングには多くの検討があっただろう。オスカーを獲った後でも良かったはずだし、姉の死の後なんか個人的には最もいいと思うのだが。
ともかくも、主人公の二人が寝ることを前半に持ってくることで、二人の間の葛藤がチープな痴話喧嘩にしか見えなくなってしまった。おそらく、サスペンスよりも甘ったるいロマンスを優先した結果なのだろう。
そのために、ヒューストンの命を狙う側の心理についての言及も不足し、得体の知れない恐怖の中で寄り添う二人というラブロマンスの域を出ない。姉とその依頼先の暗殺者の行動の動機について、もっと言及すれば「帝国の逆襲」に劣らぬ、ロマンスとサスペンス溢れる娯楽大作だったのに。
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