「現代のおとぎ話…だけど、単なるそれに非ず」星の王子ニューヨークへ行く 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
現代のおとぎ話…だけど、単なるそれに非ず
エディ・マーフィの80年代を代表する人気作。
33年ぶりに製作された続編と併せて、久々に鑑賞。
邦題はファンタジー映画のよう。
実際はカルチャーギャップ・コメディ。
21歳を迎えたアフリカのとある国の王子が、親の決めた結婚に嫌気が差し、理想の花嫁を求めてニューヨークへとやって来る。
ストーリー自体は他愛ない。
が、自分探し、アメリカ社会や階級への風刺を笑いの中にツボよく抑え、ハッピーなロマンチック・コメディで締め括り。
久し振りに見てもその面白さは全く色褪せる事無く。
冒頭のアキーム王子の普段の生活ぶりがまず面白い。
起床もトイレもお風呂(おペ○スの手入れも)歯磨きも、全て使用人がやってくれる。至れり尽くせり。
歩く時は花びらを蒔いて。
過剰なまでの“王子様暮らし”。
笑い所の一つだが、敢えて過剰に描いて、この部分だけでも風刺を効かせる。
当の本人はそんな暮らしぶりにうんざり。
端から見れば羨ましいくらいの超裕福暮らしだが、真っ当な成人なら疑問を抱いて当たり前。
何一つ、自分でやった事ない。
…と言うか、やらせて貰えない。両親が超過保護。
両親からの“箱入り息子”扱いは度が過ぎていて、挙げ句の果てに結婚相手も決められている。
王子の花嫁になるよう教育を受けてきた良家のお嬢様で、好きなものは王子の好きなもの、好きな食べ物は王子の好きな食べ物…って、マインド・コントロールか!
一代決心。自立する。外の世界に触れる。一番の目的は…
理想の花嫁を探す!
父王は結婚前の“お遊び”と勘違いするが、当の本人は至って真面目。
身分など関係なく、ありのままの自分を受け入れてくれる真実の愛探し。
という訳で、やって来ました、ニューヨーク!
何故ニューヨークを選んだかと言うと、“クイーンズ”だから。
世話係で親友のセミを伴って。
ボロアパートの“何かあった”ような一室で念願の庶民暮らしスタート。
ところで、床屋の店主や客、牧師やコメディアン、イカれたニューヨーカー・ウーマンまで、そっくりさんだらけ…?
エディとアーセニオ・ホールが特殊メイクで、一人数役の爆笑芸を披露。
今見るとキャストも豪華で、父王はジェームズ・アール・ジョーンズ“卿”。チョイ役で、床屋の少年客にキューバ・グッティングJr.(台詞ナシ)、強盗にサミュエル・L・ジャクソン。あの頃、まだまだ駆け出しだった。
とある慈善イベントの集会で、遂に理想の女性を見つける。
リサ。子供たちへの慈善活動に熱心なその女性にすっかり魅了。
普段は父親が経営するバーガーショップの事務をしており、オープンな性格の聡明でしっかり者。
お近付きになる為に、バーガーショップで(生まれて初めての)仕事をするのだが…
父親は貧乏人には高慢で、金持ちにはニコニコの困ったちゃん。経営する“マクドゥーウェル”は店名もロゴも明らかにパ○りなのに、全く別を貫き通す図々しさ。
リサにはダリルという恋人がいて、父親は金持ちの息子である彼と結婚させたがってる。ちなみにこの父娘の前では好青年気取ってるけど、実際の性格は小市民を小馬鹿にするヤな野郎。
アフリカから来た留学生と偽ってるアキームだが、本当はブッ飛ぶくらいのリッチ王子様。同じ金持ちでもダリルとは性格は真逆。心優しく、実直。
リサは父親が勝手に決めた結婚話にうんざり。…って、アレ、誰かに似てる?
リサにぞっこんのアキームだが、リサも誠実なアキームに徐々に惹かれていくのは自然な流れ。
遥々地球の反対側まで来て、巡り出会った理想の…いや、運命の女性。真剣な恋。
ところが、そんな時セミがやらかしちゃって…。
父王とそのご一行様がやって来る。
滞在費に困ったセミが金を工面して貰おうと電報送ったら…って、そりゃすぐ居場所分かるよ。
ドアを開けたら王様たちが居て、「ア~~~ッ!!」と絶叫するセミが個人的に本作一番の爆笑シーン。
時々迷惑かけ、喧嘩もするけど、憎めないヤツなんだよね。
いよいよ正体がバレる。
貧乏なアフリカ人留学生に非ず。アフリカのとある国の、とんでもねー!正真正銘の王子様だった…!
途端に手のひら返しのリサの父親。あんなに気に入ってたダリルをあっさり切り捨て。(この時のダリルがさすがに可哀想…)
調子のいい親父だが、父王がリサを傷付ける事を言い、父親らしさを見せる。我が子の事を本当に思う点では、父王より父親らしい。
息子は単なるお遊びと告げられ、ショックを受けるリサ。
母上の背中押しで後を追うアキーム。
地下鉄にて言い合い。
嘘を付かれていた事、自分は単なるお遊び…怒り心頭のリサ。
アキームは真剣な恋である事を告げ、王位を捨てる覚悟も。
が…
リッチな王子様とバーガーショップの娘なんて上手く行きっこない。
愛し合ってはいるのに、“身分違い”がネックになって…。
身を引くリサ。
父王も息子の事で頭を悩ませていた。
王妃様がナイス助言。
王妃様、本当に頭が下がります…。
国に帰って、アキームの結婚式。
その相手は…!
ご都合主義や予定調和ストーリー。
ラストシーンのリサの「私の為にこれ(王位)を捨てるつもりだったの?」と、実は結構ちゃっかりしてる。
でも、それらが気にならないくらいの、楽しさ面白さ、ハートフルやハッピー満点の現代のおとぎ話。
その中にあってしっかりと、コミカルな風刺を交え、自分自身のアイデンティティーを教えてくれる。
久し振りに見てもやっぱり面白い!
実は、エディの80年代の出演作品の中でも『ビバリーヒルズ・コップ』よりお気に入り。
だから、30年以上の時を経て、続編が作られた事にワクワク!
さ~て、ばっちりおさらい再見したし、続編見ようかね♪