劇場公開日 1963年8月23日

「【水滴の音】」僕の村は戦場だった ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【水滴の音】

2021年7月2日
iPhoneアプリから投稿

タルコフスキーの水の表現で、この作品の中で印象的なのが、水滴の落ちる音だった。

何を意味してるのだろうか。

この作品では、積極的に戦争に参加し、大人の役に立とうとする少年イワンの姿が中心に描かれる。

最も大きな理由は、母親と姉がナチスドイツに殺害され、父親は戦争で命を落としているからだ。

独ソ戦は、絶滅戦争とも呼ばれ、特にソ連側の被害は甚大だった。

病死も含めた戦死者は約1500万人、民間人も含めると2000万から3000万のソ連側の人が命を落としたと言われている。
ドイツ側の民間人を含めた死者は600万人から1000万人。
これは、それまでの人類史上最多の死者数であるばかりか、これ以上の死者は今後も出ることはないだろうと考えられている。

また、このうちドイツが捕らえたソ連兵捕虜500万人は全て命を落としているというから、如何に残虐な行為が行われていたか想像に難くない。

最後にイワンの写真が貼り付けられた記録が見つかるが、少年捕虜に対しても処刑行為があったということだろう。

最近、フランスが過去にルワンダでジェノサイドを行ったことを認めたが、これは明らかにドイツによるロシア民族に対するジェノサイド行為だった。

水滴は、人々の命の音だったのではないのか。

儚く弾け散る水滴の音だ。

或いは、イワンの命のカウンドダウンだったのだろうか。
如何なる理由があるにせよ、若者が死に急ぐ理由などないのだと示唆しているようにも感じる。

いずれにしても、筆舌に尽くし難い。

ワンコ