ベン・ハー(1959)のレビュー・感想・評価
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This beginning
感想
原作者のルー・ウォーレスは南北戦争時代の北軍の将軍で1880年に本作の原作を記しているが、睡眠時に見た夢を小説にしたという。本職は軍人・政治家であり宗教とは死に立ち会う度に関わる事はあったが、夢にはイエス・キリストやその弟子達である十二使徒などの聖書に語られる人物が登場する他に、伝承上は生まれたばかりの飼馬桶に寝る幼子イエスの生誕場所を指し示す移動する天体(ダビデの星)を追うように現れ、馬小屋で対面を果たし乳香、没薬、黄金を贈ったという東方から来たとされる三人の博士(天文学者や占星術師)の内の一人、賢者アレキサンドリアのバルサザールが現われ、成長したイエスの姿を追い晩年になるまで探し歩くー。
という夢であった。ウォーレスは夢の内容を非常に印象深く、重く受け止めて小説を書き留め始めたという。これが本作の冒頭部タイトルが出た直ぐ後に表示される A Tale of the Christ BY GENERAL LEW WALLACE」の内、A Tale〜の部分にこの物語とウォーレスが見た夢の意味が集約されていると言われる。
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ジュダ・ベン・ハーは(聖書の中ではユダヤ王はイエスと血統として繋がりがある)王族の血を牽く輸出入の商売を行う裕福なユダヤ人であり母ミリアム妹のティルザと共に暮らしている。ハー家の大番頭サイモニデス代表される多くの使用人からも尊敬されている。サイモニデスの娘エステルは身分が違い過ぎると感じながら幼馴染のジュダを慕いジュダも彼女の気持ちを受け入れていた。まさにユダヤ人の代表になるべくして生まれてきた者であったが、幼い頃から兄弟同様に育ったローマ人であるメッサラに成長後再会するも、裏切られ、名誉を剥奪された上に家族を幽閉され、奴隷としてガレー船漕手として送り込まれる。この時からメッサラ対して怨念と復讐心の鬼となり生きていく事になる。
ガレー船に送り込まれる道中、瀕死の状況に追い込まれるが奇跡が彼に起きる。喉の渇きに耐えられず気力の限界が訪れ倒れ込んでしまったジュダに優しく水を掛け、労わるように飲ませ与える人物。彼はその顔を見上げると、また生きる力が身体中に漲ってくるの感じた。威厳と優しさに満ちたその人の顔を記憶に留める。ローマ兵の一人がその人物を叱責するも威厳に満ちた姿を見た途端に心が圧倒され押し黙ってしまう。
ガレー船の漕手として3年の間怨念と復讐心のみを持ち合わせ生きるジュダ。新しいガレー船に移りそこにカルタゴ征伐の為に乗り合わせてきた新艦隊司令官のクイントゥス・アリウスと出会う。アリウスはジュダの復讐のため命に拘る執着心と闘志力や体力が優れていると見抜き、次第に目をかけるようになる。
神の御心により生き抜くと主張するジュダにアリウスはガレー船の上では神は自分であり、神の恩寵などは無いと断言するが、ジュダは一念は神に通じると言い切る。
アリウスのローマ艦隊は地中海上でカルタゴ軍船と戦闘となる。戦闘直前に漕手の足には鎖が付けられるが、アリウスの命によりジュダの鎖のみ解き放されたままにされる。再び奇跡を感じるジュダ。激しい戦闘の末に司令船は狙われて沈没させられるが、アリウスにより自由を許されていたジュダは海上に投げ出されたアリウスを救い出す。海上を漂う二人。役に立たない者は殺せというアリウスの主張は間違いであり、役に立たないと思われた者も信じれば救われる事を態度で指し示す。
アリウスはローマの軍船に救われる。ローマはカルタゴに大勝利したという話を聞き、アリウスは神の御心で生かされているジュダに助けられた事はローマもジュダの信じる神に救われたという事を確信するようになり彼をローマに連れて行く。
ジュダはローマで戦車競技の騎手として腕を磨き、レースで5度の優勝を果たし、最終的には自由人として、またアリウスも自身の世継ぎとしてローマの市民権をも与えるに至る。
ジュダは5年を経てクイントゥス・アリウスⅡ世としてエルサレムへ帰郷する。帰途の際、ある日ジュダが木陰で休憩をとっていると一人の老人が顔を覗き込むように現れる。その人はジュダと歳格好が似通っているある人物を探しているという。彼こそ数奇な運命に翻弄され神に導かれた晩年のアレキサンドリアの賢者バルタザールであった。彼もまた族長イルデリムの所に招待されていた客人だったのだ。ジュダ・ベン・ハーをイエスと見間違ってしまったのだ。その時は気が付かずに通り過ぎた出来事であったが、この出会いが後にジュダにとって人生を一変させる出来事に繋がっていく。
ジュダは優れたアラビア種の白馬を所有し、エルサレムの戦車競技で一旗あげようとするアラブ族長イルデリムと出会う。競争馬の話で親しくなりメッサラがエルサレムのレースに出ている事を知る。メッサラへの復讐に燃えるジュダはイルデリムと組みメッサラに挑戦状を叩きつけると共に幽閉されているティルザとミリアムを探し出すように依頼する
メッサラはティルザとミリアムが地下牢で生きている事を確認するも、二人共癩を罹っており、癩の谷に追放してしまう。牢を出たティルザとミリアムはエステルを密かに訪ね、ジュダには自分達は死んだと伝えて欲しいとした。エステルは了承する。
エルサレムで帝国主催の戦車競技が始まろうとしている。イルデリムの白馬を操りメッサラとの復讐の激闘が始まる。壮絶な競争の末、ジュダは勝利を手にする。メッサラは最終周回時に戦車が大破、後続馬に轢かれ瀕死の重傷を負う。メッサラは己れの死が近い事を悟り、ジュダを呼び出しティルザとミリアムはまだ生きており、癩の谷にいる事を伝えて苦しみを死の時まで味あわせて息を引き取る。
メッサラが亡くなっても憎悪と悲しみは全く消えず自暴自棄になるジュダ。ミリアムとティルザに会いに行くが、二人の気持ちを考えると再会出来ない。その頃、バルサザールはとうとう長年の希望であったイエスに再会し、自分の信仰を確信して喜びをジュダに伝える。山上の垂訓により心の癒やしを感じたエステルはナザレのイエスの話を聞けば何かが変わるかもしれないと、イエスの話を聞く事を勧めるがジュダは耳を貸さない。
エステルは癩の谷にも出かけてミリアムにイエスの話を聞いて欲しい。一緒にエルサレムへ行って欲しいと懇願する。そこにエステルの後を追いかけてきたジュダが現れる。ミリアムの話によるとティルザがもう死にかけているという。エルサレムにいるナザレのイエスと話せば必ず心の平安を持つことが出来る。二人を連れて行こうとエステルはジュダを説得、ジュダは藁をも攫む気持ちでイエスを尋ねるべく寝たきりのティルザ、ミリアムを連れていく。谷を出る際に怖がるミリアムにエステルは「大丈夫。希望は必ずあります。」と優しく諭す。
13日の金曜日を迎えイエスが他の罪人と共に処刑される事になる。民衆の請願の声にこれ以上の責任は持てないとし、手を洗い清めるピラト。病に苦しむティルザとミリアムを救いたい一心で二人を連れてきたジュダとエステル。時既に遅く刑場へ鞭打たれ十字架を担ぎ進むイエス。途中で力尽き倒れたところ、その姿を発見して居た堪れなく感じて、水を差し入れるジュダ。そこに居た人物は以前に水を恵んでくれたその人であったのだ!驚くジュダ。しかし差し出した柄杓は無惨にもローマ兵により蹴散らされる。病の淵にあっても労りの心を持ってイエスを見守るティルザとミリアム。ジュダはイエスと罪人と見物の人波をかき分けただ歩き追っていく。
イエスを心より敬愛する者、蔑む者、憎む者、喜ぶ者、悲しむ者、さらに多くの様々な人々が見つめる中、ゴルゴタの丘でイエスの十字架への磔を目撃するバルサザールとジュダ。
「残念な事だなバルサザール。私に水と生きる希望
を与えてくれたのは彼だ。何故死刑になるのだ!」
「あの方は全ての人間の罪を代わりに背負い死ぬの
だ。自分は今日死ぬ為に生まれたのだとー。仰っ
ていた。その目的の為にこの世に現れなさった。」
「死ぬ為にか?」
「(いや)これが(全ての)はじまりである。」
バルサザールの言葉を聞き神妙な面持ちとなる
ジュダ・ベン・ハー。
言葉の意味に気付きと悟りを覚え、
その顔は次第に輝きを増していく。
イエスの死と共に大雨と轟音と嵐が吹き荒れ十字架から流れ出た血が大地に染み込んでいく。それはまるでこの地球上のありとあらゆる罪で汚れた大地を洗い流す勢いて拡がり流れ、染み込んでいく。
街中から離れた谷の中で絶望の中にいたティルザとミリアムにも奇跡が。全身に激痛が走る。暫くすると癩が全て消えていたのである。信じ続け愛を与え続けた者に起きた本物の奇跡である。
嵐が過ぎ去り晴れ間が広がる。穏やかな顔のジュダがエステルに話し掛ける。
「イエスが息を引き取る前、父よ。彼らを許したまえ。彼等は何をしているのか分からないのです。とおっしゃるのが聞こえた」
「恨みも全て拭い去られてしまった。」
喜ぶエステル。さらに目を向けるとそこには笑顔のミリアムとティルザの姿。近づき抱擁する四人。ジュダとその家族に新しい日々が始まる。
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オープニングに写し出されるミケランジェロのアダムの創造とミクロス・ローザの音楽が、神と人との壮大な関わりと繋がりを改めて感じさせ且つ考えさせられる。
主演 チャールトン・ヘストン
アカデミー最優秀主演男優賞を受賞。受賞当時30歳であり、脂の乗りきった生涯最高の演技で永遠に記憶に留まる俳優となる。
ミリアム役のマーサ・スコットが品があり美しい。早逝したがメッサラ役のスティーブン・ボイドも目を見張る好演であった。
監督 ウィリアム・ワイラー
「我等の生涯の最良の年」 「ローマの休日」
1959年度アカデミー賞主要部門を含む11部門受賞
人を大量動員して制作されたスペクタクル巨編。戦車競技場面は複数台の65㎜カメラで撮影され70㎜フィルム拡大した映像の効果が最大限に活かされている。本編中でも圧巻の名場面となっている。この映像を創り上げた第二撮影監督のヤキマ・カヌートの身体を張ったスタントは息を呑む大迫力で娯楽作品としても最高の仕上がりをみせている。
⭐️5
1973年頃、新宿ミラノ座リバイバル上映で初鑑賞
以降、鑑賞多数
新約聖書とリンクしていて、主人公が時々イエスキリストと接触する場面...
新約聖書とリンクしていて、主人公が時々イエスキリストと接触する場面がある。
別バージョン盤では、イエスの描写が無いものもある。
イエスの描写は大事な見どころ。
本編は222分、円盤の特典映像の合計は66分と長い。
円盤の音声特典(ベン・ハー役のチャールトン・ヘストンによる音声解説つき)と約59分のメイキングはファンなら必見。
久しぶりに視聴したが、映像の古さを感じた。そんな時は想像力でカバー。
劇中に登場する立派な建造物を見ていると、巨人用の古代の高度文明の痕跡に見える。
服装などから想像すると、冬の寒さという概念がなかったのではないだろうかと思う。
聖書の信憑性についても考えてしまう。
傑作中の傑作
とにかく素晴らしい!
ベン・ハーの人生をていねいに、そして圧倒的な迫力で描ききっている。
細部までこだわり抜いて撮影された映像は、今見ても全く色褪せない。
この映画を超えるスペクタクル作品に逢ったことがない。
噂では、過激なスタントシーンで亡くなった方もいるとか。
さもありなん!
史実ではないものの「本当にあった」と信じるに等しい重厚な物語。
まだ映画に序曲があった時代。
映画にCG技術が無かった時代。
MGMはこの映画を作った。
友情と裏切り
友愛と憎しみ
貴族から奴隷
あの方の存在
平穏と闘い
処刑と復活
愛と別離
何千年も前の物語の世界へ
ベン・ハー王子と共に歩む。
1959年公開。
CGでは超えられない
生きた空気感がある。
※
世界最高の"実写" アクション‼️
これは世界最高の史劇スペクタクルであり、世界最高の宗教映画でもあります‼️エルサレムの富豪の息子ベン・ハーと、その旧友でローマ帝国司令官メッサラの宿命の対決‼️反逆者として奴隷にされ追放、大海原での奮闘、剣闘士としての活躍、凱旋、そしてついに戦車競争、と波瀾万丈で見せ場がたっぷり‼️この馬四頭立て戦車による競争シーンは映画史上実写で撮られた最高のアクションシーンではないでしょうか⁉️実際に人が轢かれてるように見えるし、チャールトン・ヘストン始めとする役者さんたちが実際に操ってるようにも見えます‼️どうやって撮ったのか、CG全盛の現代では絶対に撮影できないでしょう‼️いや、トム・クルーズなら出来るかな・・・‼️そして後半のキリスト処刑のシーンでは、キリストが群衆裁判を受ける場面や、ゴルゴダの丘の描写など、聖書の福音書そのままの描写でヒジョーに印象深いです‼️この作品はアカデミー賞11部門を受賞していますが、それもこれもスペクタクル描写に頼らず、ベン・ハーとメッサラの因縁、ベン・ハーと母や妹との人間関係のドラマを手加減なしに描いたウィリアム・ワイラー監督の素晴らしい仕事ぶりがあってこそです‼️是非大画面で観ましょう‼️
通しで観る良さ
戦車シーンはあまりに有名で、やっぱり迫力とかスピード感は優れていると思う。
通して観ると、主人公の変遷が伝わりやすい。
恨みや憎しみが生きる糧となって目もくれず復讐あるのみのベン・ハーが、終盤でようやく敵との戦車レースで勝ち、でもすっきりと気持ちが晴れない。
並行してイエスの受難と復活を物語を進行させ、母妹の奇跡の快癒と相まって、宗教的ながら、お手盛り感あるエンドロールへ。長丁場、山あり谷ありで興業的にも成功しやすい作品かなあ。
う~んとうなってしまった。これ本当に60年前の映画?信じられない。...
う~んとうなってしまった。これ本当に60年前の映画?信じられない。力ある者と虐げられ従う者の対立と葛藤の物語。とにかく戦車競走は、あれ、もう撮影できるようなものではない気がする。ヘストンが35歳ころ。メッサラ(ボイド)が27歳ころかな?エスター(ハラリート)と同い年だったってよ。なんか「グリース」のレースシーンや、「ファントムメナス」のポッドレースシーンと似てるよねやっぱ。親子愛と養子養父の関係考えさせられた。
人の量エキストラ何万人
建物の規模、どれだけ時間かけたのだろう
78頭って馬の量、教えるの大変。調教師しにそーだったのでは
上映時間、重みあり過ぎたっぷり 4時間にもなろうかという。トイレが~~~
とにかく
「でかすぎ」
涙、演者誰の気持ちも響きすぎて、ボロボロ、共感度マックス!
「物語 練りすぎ緻密すぎ」
完璧主義の人たちが作ったんですね。
59 年って、太平洋戦後わずか 14 年のころ。
戦争を経験した人たちのド根性が伝わってきました。
間違いなく MGM を倒産から救うため
命かけて制作したってすぐわかる映画でした。
実際にプロデューサーのサム・ジンバリストは心臓発作で急死されたと。
プレッシャーですね確実に。残念なことでした。
予想外、予想以上で感動し過ぎ。
エスター役のハラリートさん亡くなったんですってね。
89 歳って…長生きされたのですね。
なんか主要な俳優さんたちはこれで全員亡くなった事になるそうです。
ヘストンさんもボイドさんも既にいないのはわかってるけど
彼女がいないのも寂しすぎる。
ヘストンやボイドに負けず劣らじでした。
かっこいい音楽でオープニングクレジットのキャスト名表示順は
・ヘストン
・ホーキンス
※ホーキンスは重鎮でキャリア。「戦場にかける橋」と「アラビアのロレンス」出演
・ハラリート なんと 3 番目。当時 27 歳。ほぼ無名とだったとは。
・ボイドもそう。無名からのあの活躍。
ウィリアム・ワイラー映画は、「大いなる西部」しか面白くないと、食わず嫌い。
大した映画。キリストものは遠慮していたのがバカみたい。
ただのアクションものと思ってた。知的な作品。今頃になって気づくなんて
スペクタクル・アドベンチャーの金字塔!
子供の頃、よくTVでかかっていて、チャリオット(馬に引かれた戦車)のレースシーンに興奮し見入っていたのを覚えています
それから数十年経った今 観てみると、全く違う印象でした
副題の"A tale of the Christ"、日本語にすると"キリストの物語"
たしかに観るとそうなんですよね、そういう話だったんだと再認識しました
だからといって決して宗教色の強い作品ではなく、説教・説法じみてもおらず観やすかったです
全編にわたって壮大でスペクタクルな映像
現代なら確実にCG処理であろうシーンが見るからにお金と人をふんだんに使って作り込まれており、その映像美術に惚れ惚れします
ホントにこの頃の映画は素晴らしいですね
そしてベン・ハーと言えばの馬4頭に引かれたチャリオットのレースシーン
どうやって撮ったのと思うクラッシュシーンや人が轢かれるシーンもさることながら、大観衆に沸くスタジアムの中で繰り広げられる激闘のライブ映像は現代のCG映像では足元にも及ばない圧巻のド迫力、何度でも見返したくなる映画史上屈指の名シーンです
神話的英雄への昇華
幼少期に強烈な影響を受けた大好きな作品の一つ。
しかしながら、当時観ていたのはTVの洋画放映。大幅なカットが入り、声はもちろん納谷悟朗。
初回鑑賞時は、白と黒の馬車競走とガレー戦くらいしか覚えていなかった。
2度目の放映時はストーリーは追えたが、やはりお子ちゃまなのでまだ古代ローマ史の知識などは薄い。タロットカードを独学していたので「古代2(or4)頭立て戦車=チャリオット」という概念はこの時に覚えた。(タロットなるものの存在を知る日本人は滅多にいなかった時代。解説書は木星王さんの著書以外は数点しかなかった。)
とにかく「テルマエ・ロマエ」(原作)でもパロディシーンが登場するように「ベンハーと言えば、チャリオット」というのは異論ないところであろう。
だから成人後、ようやくVHSビデオにて完全版を観られた時には「こんなにキリスト教色が強かったのか」「こんなに長かったのか」と改めて驚いたものである。映画なのに幕間休憩あるし(笑)
さて、ジョーセフ・キャンベル著「千の顔をもつ英雄」をベースに本作を分析していくと面白い。
キャンベルは「世界中の神話・民話を集め分析すると、類似点、一貫したパターンが見えてくる」という。
英雄(ヒーロー)は、日常の世界から自然を超越した領域へ冒険に出る。途方もない力に出会い、勝利を手にする。仲間への恵みをもたらす為に、不可思議な冒険から帰ってくる。
起承転結の「起」か、或いはそれ以前の設定にて、ヒーローは親との悲劇的な別離を経験しており、「承転」の旅の途中でなんらかの成長・覚醒を迎え、難題を解決し、「結」で帰還する。
分離(セパレーション)→通過儀礼(イニシエーション)→帰還(リターン)の流れに沿ったいわゆる貴種流離譚が見えてくるのだが、キャンベルの分析はこれだけでは終わらない。
「おとぎ話の英雄は小宇宙的な勝利、つまりは個人的な勝利を掴む。
神話の英雄は大宇宙的な勝利、つまり自身の属する社会へ変革をもたらす結果を得る。」
というのだ。
なるほど、「ロード・オブ・ザ・リング」や「スター・ウォーズ」最近の作品では「ONE PIECE」なども確かに「神話の英雄」の物語だ。対して「ドラえもん」ののび太は「おとぎ話の英雄」なのだな、と納得。
そう考えると、90年代の「エヴァンゲリオン」を筆頭に当時 雨後の筍のように増殖した「セカイ系作品」に対して私が嫌悪感を抱いた理由が腑に落ちる。
本来「おとぎ話」でしかなくそれに見合った通過儀礼を辿る主人公が、自分を取り巻く社会的システムの複雑さを理解する事もなく(この点は主人公ではなく、作者の知識経験の浅薄さに寄る)、それなのに「神話の英雄」的な功績に帰結する点に矛盾と違和感を覚えた為だったのだ!そこにチャイルディッシュな独り善がりが強く漂うから好きになれなかったのだ。
う〜む、非常に納得。
さて「ベン・ハー」だが、あらすじの骨子だけならばキリストを絡めなくても「青年ベン・ハーが幼馴染にして宿敵メッサラに復讐する。」というだけでも成立する。
ジャッキー・チェン映画などはそのパターンばかりだと言ってもいい。スポ根作品やアクション大作も大抵はその類だ。充分「スペクタクル娯楽大作」になるだろう。しかし、これだと「おとぎ話の英雄」の域を出ないのだ。
本作はキリストの生誕で始まり、死と復活の奇跡をもって終わる。
ジュダ・ベン・ハーとキリストを絡めることにより、ベン・ハーの冒険は世界(ローマの圧政)に変革をもたらし、本作は「神話の英雄譚」としての荘厳さ、壮大さを有する作品へと昇華されるのだ!
人の創造する作品においては、神話英雄がおとぎ話英雄より上位にあるとは思わない。おとぎ話の方が、鑑賞者にとっては身近であり主人公の心情がより深く心に刺さる事もある。
しかしながら、本作においてはベン・ハーとキリストの生涯を交錯させた設定が物語に深みを与え、より強烈で荘厳で壮大な感情の起伏を惹き起こした事は間違いないであろう。
映画史に残る屈指の名作となった理由の一つがこの物語、ルー・ウォーレスの原作小説の秀逸さと、そこを尊重した脚本にあるのだと、改めて深く感じ入るものである。
2016年版の視聴はこれまで敢えて避けていたが、この観点を踏まえた場合どのような作品に仕上がっているのか興味が出てきた。
近々、鑑賞してみたいと思う。
名場面
ルー・ウォーレスの小説『ベンハー』が
アメリカで大ベストセラーになり
監督:ウィリアム・ワイラー
主演:チャールトン・ヘストンで映画化。
この一大スペクタクル作品は、
1959年のアカデミー賞11部門に輝き
不朽の名作となりました。
キリスト生誕の頃の
ローマを舞台にした超大作。
ローマ帝国支配者側の
幼馴染メッサラ
(スティーヴン・ボイド)と再会後
信じるものが違った為、
友情に亀裂が入り
チャールトン・ヘストン演じる
ジュダ・ベン・ハーは
思わぬ事故から家族離散
罪人としてガレー船の漕ぎ手とされ・・・
多くの名シーンがありますが
宿敵、メッサラとの競技場での
戦車競走シーンが迫力満点!
ベン・ハーの乗る4頭の
白い馬の名前に
星の名前がついていて
アンタレス☆リゲル☆アルタイル☆シリウス
その他、イエスの後姿も印象的。
いろいろ発見がある作品でもあります。
数々の名場面 深く印象に残りました。
(2024 3月 CSでも録画鑑賞)追記
人生は奇跡
チャールトンヘストン扮するベンハーはユダヤの名家ハー家の出身でスティーブンボイド扮するローマ人メッサーラと幼なじみであったが、ローマ帝国が攻め込み裏切りを勧めたメッサーラとはもう会わないと決めた。しかし瓦が新総督にあたりベンハーは奴隷に落とされた。凄まじいばかりの大規模な歴史スペクタクルだね。復讐を誓ったベンハーが如何に生き抜くか。昔は船も200人からの奴隷が鎖に繋がれて漕いでいたんだな。それもこなせたのは神の力だと言う。人生は奇跡だとか。
文句なし
個人的には、アラビアのロレンスの次に再現不可能な名作中の名作。黄金のハリウッド全盛期を象徴する、あの時代にしか作り得ない映画、成し得ない偉業。
ゲームっぽい映像じゃない、CG主流でもない、本物の映画。
あぁ、また観たくなってきた!
古さなんて感じない!
キリストが生きた時代を舞台に、ユダヤ人、ユダ・ベン・ハーの半生が壮大とつづられる。
裕福な商人から船底で動力と船をこぎ続ける奴隷まで、
かと思えば提督の息子になり、ユダヤの希望と奉られ、
それでも味わう絶望を経て平穏を得るベン・ハーに4時間の長丁場もあっという間だ。
CGなどあるはずもない時代、濃密で華麗な映像にはとにかく見ごたえがある。
なかでも第二部の馬車レースは、昨今のどんなF1映画でもかなうまい。
迫力がケタ違いだ。
どうやって撮影したのかも首をかしげるほかなく、競馬好きなら萌えること請け合いとも約束できる。
作品を100%楽しむならキリスト教の知識は必要となるが、
歴史に残る娯楽超大作として楽しむだけでも十分だとお勧めしたい。
しかしチャールストンヘストンが途中から若い時のアーノルド・シュワルツェネッガーに見えて仕方なく、ベンハーの人生ってどことなく、レミゼのバルジャンともかぶってならない。
4時間が長く感じない
60年以上前の作品だが、全く古さを感じない。
インターミッション含め4時間と長い作品だが、ベンハーが牢屋に入れられたり、次第にローマの信頼を得ていく過程など見どころ満載。馬車対決でも反則気味の相手に戦うシーンも見どころ。難病にかかったお母さんと妹と谷で会うシーンは涙もの。
4時間が全く長く感じない名作です。
色あせない圧倒的熱量の名作
60年も前の作品ということにまず驚いた。アラビアのロレンスだったり昔のスペクタクル大作は本当に面白いなと思う。
戦車競走の臨場感たるや。最近のvfxの多用に飽きてきた部分もあり、あの圧倒的な迫力には興奮した。大きなスクリーンで観たかったなぁ。
今作となんか似てるなと思った作品にグラディエーターがある。無実なのに上流から奴隷に転落し、復讐を誓う。それと
悪役にあんまり同情できない。
似てるんだけど、今作はキリストの生誕、受難が描かれており、宗教色が強い。そういう映画あんまり見たことないし、時代なのかなと思った。それゆえ名作と言われてるのかなと思った。
それと、超常的な力が働くシーンがある。あれなんかは個人的にうーむと思った。キリスト自体、超常的な存在なのだろうけどそれまで現実的な感じで進んでたから違和感を感じた。
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