劇場公開日 1973年1月7日

「人とネズミの生存権を掛けた戦い!」ベン モアイさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5人とネズミの生存権を掛けた戦い!

2024年7月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

前作「ウイラード」のエンディング直後から始まるこの物語。
ウイラードが無責任に産めよ増えよ地に満ちよで自宅地下室に溢れかえらせていたネズミたちがついに街へ繰り出します!

ネズミたちは攻撃を受けなければみだりに人を襲うことはしませんが、それでも既に3人の人間を殺めています。警察も有能で、信じ難いことではあるものの状況からすぐさまネズミによる殺人だと断定し、街中の下水道を捜索し始めるのです。

そんな折、近所に住むダニー少年のもとに逃亡中のネズミ軍のリーダー「ベン」が迷い込み、2人は友情を深めていくのです。

本作の主人公であるこのダニー少年、心臓が悪いため手術をしており胸に大きな手術痕があります。それでも病状は芳しくなく次の手術を自宅療養しながら待っている身です。そのため学校にも通っておらず、家族は母親と姉の2人で母子家庭です。
そしてダニーボーイはどことなく小さい頃の鈴木福くんに似ています。

毎日自宅に籠って一人遊びをしていたダニーボーイにとって「ベン」は外からやって来た特別な友達です。警察が訪ねてきたり、新聞の報道で「ベン」が何を仕出かしたかはダニーボーイも察していますが、それでもこの特別な友達を庇います。
その姿が意地らしいで済めばよいのですが、警察の捜査網にもシッポをつかませないネズミ軍団は、日々餌を求めてはスーパーマーケット、病院、スポーツジムに出没してパニックを巻き起こし、その被害は看過できないものになっていきます。
家族や警察もダニーボーイが何か知っていると気づき詰め寄りますが、頑として口を割らないダニーボーイの丹力には舌を巻きますが、ここまでくると軽くイラッときます。
というのも、ダニーボーイのお姉ちゃんは厚ぶちメガネがチャーミングな、大学などにかよってボーイフレンドの1人や2人いてもおかしくない年頃です。
そんなお姉ちゃんが外に出て働く母の代わりに毎日自宅で弟に付きっきりなのです。お母さんもお姉ちゃんを心配し「自分を犠牲にしないで」と外出をうながしますが、「家族は助け合うもの」と弟の面倒をみるお姉ちゃんの姿を見てしまうと、ダ二―ボーイは少々身勝手な印象となります。
ダニーボーイを追ってスカート姿のまま下水道へ潜り込みヘドロまみれになるお姉ちゃん!ダニーボーイよ、あんまりお姉ちゃんに心配かけちゃダメだよ…という思いを禁じ得ません。

しかしこのダニーボーイの自分しか見えていない姿は子供としてはリアルです。
創作物で描かれる子供の姿は時に観客の大人に媚びた理想的な愛らしい姿で描かれる事があります。なのでそれに比べればイラッとはきますが、子供というのはこんなものかと納得もできるのです。

相変わらず群れで蠢くネズミの姿は強烈ですが、映画としてはあまり起伏のないエピソードが淡々と続き、約90分の尺でも少々退屈します。しかしクライマックスの迫力は中々のものです。

ネズミ達はただ生きるために餌を求めただけでしたが、あまりに数が多かったことと人を殺しているという事実から、人間の脅威となってしまい、両者の対決は避けられないものとなっていたのです。
ただただ自分の孤独を埋めるためだけに無責任に数を増やした前作主人公のウイラードを恨むしかありません。
ペットを飼う事、命を預かる事の責任を今一度考えさせられる映画です。

最後はマイケル・ジャクソンの透明感ある歌声が少年とネズミの友情の行末に花を添えます。

エンドクレジット1発目が『"BEN'S SONG" Song by MICHAEL JACKSON』の字幕です。
少年の純真な心に胸をうたれている最中に大人の商売っ気を見せられた思いで、苦笑いで鑑賞終了です。

モアイ
琥珀糖さんのコメント
2024年7月28日

コメントありがとうございます。
「ファルコン・1」
ご覧になりましたか!!
ラストは手に汗握りますよね。
良かったです、楽しんで頂けて。
追いかけてくる戦闘機が空中散布の農薬に煙幕をはられて、
山に撃墜するあたり、迫力ありますよね。

琥珀糖