ペルーの鳥

解説

フランスの作家であり、外交官でもあるロマン・ギャリーが、自作の短篇小説を脚色・監督したもので、彼の第一回作品である。撮影はクリスチャン・マトラ、音楽はケントン・コーが担当し、ペルーの民族楽器をフィーチャーしている。出演はギャリー夫人で「その日その時」のジーン・セバーグ、「名誉と栄光のためでなく」のモーリス・ロネ、「ロシュフォールの恋人たち」のダニエル・ダリュー、「恋人たちの世界」のピエール・ブラッスール、ジャン・ピエール・カルフォン、ミシェル・ビュアーズほか。製作は、ジャック・ナトー。

1968年製作/フランス
原題または英題:Les Oiseaux vont Mourir au Perou

ストーリー

南米ペルーのリマ市の北方に淋しい海岸がある。そこは、何千羽もの鳥が熱い砂の上に身を投げだして死にに来るところである。ある夜明け、一人の紳士とその運転手とが、ゆっくりと車を走らせて海浜に来た。ちょうどカーニバルの翌朝で、紳士は前夜、踊り狂う群衆の中で見失った妻を捜しに来たのだった。若く美しい妻アドリアーナ(J・セバーグ)はあらゆる男たちを魅了せずにはおかない不思議な霊光を発する女性だが、異常な性格で、ときどき理由の知れない病的に激しい色欲の発作に襲われた。そして飽くことを知らぬ色情におぼれて、男から男へと移ってゆく。夫は妻を熱愛していたが、体力的には彼女に圧倒されつくした廃人であり、彼に代って彼女を満足させるために、やとわれた運転手も、彼女に負けた敗残者だった。そして、もし再び、彼女が色欲の発作におそわれた場合には、運転手に彼女を殺させると断言した。カーニバルの翌朝アドリアーナに発作が起った。仮面をつけた四人の男に身をまかせてしまったのだ。そして、その直後、浜に来た一人の少年も、彼女にすっかり魅了されてしまったのである。ところでアドリアーナは、四人の男が去った後、救いを求めて近くの家にたどりついた。そこは売春宿だった。宿の女主人フェルナンド(D・ダリュー)はアドリアーナをいたわったが、彼女は自分の病的な宿命に絶望して入水自殺を試みた。だがレニエ(M・ロネ)という青年が助けてくれた。彼は、この海岸の小屋に一人で住んでいる。そして彼も、アドリアーナのとりことなった。死にたいと叫ぶ彼女に、一緒に生きようというレニエ。だが、そこへも、アドリアーナの夫と運転手が追ってきた。ついに対面。アドリアーナを殺さねばならない。しかし、夫には殺せなかった。そして苦悩のあまりレニエに、自分を殺してくれと頼むのだが、レニエにも出来なかった。アドリアーナは運転手に殺されるのを覚悟して砂浜に向かう。そして運転手が意を決して彼女を撃とうとしたとき、アドリアーナに憧れている土地の少年が、ナイフをふるって彼を刺した。アドリアーナは彼女自身の狂気と、彼女を敢て殺し得ない男性の弱さとのおかげで再び生命を救われたのである。そして死ぬつもりで来たこの鳥の墓場の砂浜から静かに去っていく。彼女のあとから、夫とレニエとが放心したようについていった。

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