劇場公開日 1994年8月27日

「公民権法が成立した後でも、黒人差別は熾烈を極めたことが分かる」ブロンクス物語 愛につつまれた街 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0公民権法が成立した後でも、黒人差別は熾烈を極めたことが分かる

2024年7月7日
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 黒人による公民権運動が盛んだった1960年代アメリカが舞台の映画。1964年に公民権法が成立し、黒人の諸権利が保障された後でも、彼らに対する差別は熾烈を極めた。それが主人公カロジェロの友達による黒人の凄惨なリンチシーンによって分かる。しかしカロジェロ(おそらく友達も)もイタリア系という、アメリカ移民の中では差別を受けてきた側の人間だ。彼らが暴力という手段によって、黒人に対する人種的な優位を示そうとするのが悲しい。それが暴力の連鎖を呼び、人種間の溝をさらに大きくする。白人と有色人種との恋愛ですら、当時は難しかったのだろう。

 デ・ニーロ演じる勤勉なカロジェロの父親の人物像も魅力的だが、マフィアのボスのソニーも魅力的だった。面倒見が良く、悪友と縁を切るように忠告するなど、単なる悪人ではなく、豊富な人生経験を積んだ一人の大人としての面を描けていたのが、ストーリーに深みをもたらしていた。

根岸 圭一