劇場公開日 1989年1月21日

「古き良き特撮表現による、謎の粘性物体パニック」ブロブ 宇宙からの不明物体 緋里阿 純さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0古き良き特撮表現による、謎の粘性物体パニック

2025年2月21日
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【ソニー・ピクチャーズYouTube公式アカウントにて視聴】
“それ”は、絶えず獲物を捕食し、膨張する。隕石により飛来したアメーバ状の粘液性物体が、アメリカの小さな田舎町を恐怖に陥れる。
1958年製作『マックイーンの絶対の危機(ピンチ)』のリメイク版。監督・共同脚本には『マスク』(1994)、『スコーピオン・キング』(2002)のチャック・ラッセル。更に、『ショーシャンクの空に』(1994)のフランク・ダラボンも脚本に参加している。

アメリカの田舎町アーバーヴィル。ある夜、森に隕石が落下し、内部に潜んでいたピンク色の粘液性物体がホームレスの男性の腕に絡み付いた。デート中のティーンエイジャー、メグ(ショウニー・スミス)とポール(ドノヴァン・リーチ)が、彼を病院に搬送する。しかし、謎の物体は老人を捕食し膨張、ポールも犠牲となってしまう。
町の保安官は、不良少年のブライアン(ケヴィン・ディロン)の仕業を疑う。しかし、動機も証拠もないブライアンはすぐに釈放される。ポールが犠牲となる瞬間を目撃していたメグは、警察に事情を説明するも信じてもらえず、ブライアンに助けを求める。
その間にも次々と町の人々を捕食し、巨大化していく物体。間一髪の所で襲撃を免れたブライアンとメグは、保安官を頼ろうと隕石が落下地点である森へと向かう。しかし、そこには政府の生物研究所を名乗る防護服の人々がやって来ていた。

今見るとあまりにも陳腐だが、手作り感満載のアメーバ状の物体の演出は好み。ミニチュアや合成を駆使したクリーチャー描写は、古き良き特撮といった雰囲気で、全てをCGで表現出来てしまう現代にはない味がある。

気合いの入った捕食描写も素晴らしい。また、犠牲者の人選も魅力的だった。
ブライアンを「不良(ワル)だが、人を殺すようなヤツじゃない」と信頼していた保安官や、そんな彼が思いを寄せていたダイナーのウェイトレスといった、作品によっては生き残る可能性がある人物がアッサリと捕食されていく展開は好感が持てる。また、メグの弟と映画館に行った友人まで犠牲になるという、無垢な少年すら容赦しない思い切りの良さには拍手。
映画館で女を前に映画のネタバレを続ける髭オヤジや、マッドサイエンティストのメドウス博士が犠牲になるのは御約束(笑)

ヒロインであるメグの奮闘ぶりが良い。親に内緒で友人と映画館へ出かけた弟を救出し、下水道で逃げ惑う姿。クライマックスでマシンガンを手に物体に挑む姿は、『ターミネーター2』のサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)のような逞しさがあり笑える。

マット・ディロンの弟、ケヴィン・ディロンの若き日の姿も印象的。冒頭で壊れた橋をバイクで渡ろうとするも失敗するという展開が、彼の無鉄砲さを象徴している。中盤で政府の職員達から逃げる際に、橋を渡る事に成功するという展開もベタだが上がる。

謎の物体の正体が単なる宇宙生物ではなく、政府が極秘開発した生物兵器だったという展開は驚いた。陰謀論的なアプローチは嫌いではない。しかし、ラストで物体を瓶詰めにして持ち歩き、終末論を唱える牧師はやり過ぎな気もするが。何せ、こちらは物体の正体が人工物である事を知っているので。

ストーリーテリングや物体の映像表現に陳腐さは拭えないが、独特な魅力を放つ一作なのも確か。更なる現代版リメイクがあるならば観てみたい気もする。

緋里阿 純