プロヴァンス物語 マルセルのお城のレビュー・感想・評価
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粋な映画
『マルセルの夏』の方と違って、こちらの冒頭は、少し物憂げでロマンチックな旋律が流れる。
その通り、人生の哀愁を感じる内容だった。キラキラしていたときが眩しく描写されているからこそ余計に感慨深い。
この一家は、多少のつまづきがあっても、ずっとキラキラを続けるのだろう、と思っていた。
ところが…自然の中に据えられたひとつの素朴なテーブルに皆が集い、暖かい灯りのもとで、気持ちよく酔い、くったくなく笑い、いつまでも語り合う、その天国のような、キラキラした時は永遠ではなかった。
その時は何気なく当たり前に楽しんだひとときが、いつのまにか二度と体験できない最も貴重な想い出となる。そして、あれは奇跡や偶然だったのだと後で気付く…。誰にでもあることだ。
母親の笑顔はすてきだった。
母親に対するマルセルの愛情は、所々で伝わってくる。『マルセルの夏』の方での、優雅な仕草で水を口にする美しい母の横顔を見つめる眼差し、歩きにくそうな母に運動靴を差し出す気遣い。
そして赤いバラの花束を抱えて少女のように動揺し戸惑う母も思い出としてある。
(美しい運河沿いに家族が通り抜けるシーンは面白すぎて、個人的にはめちゃくちやツボにはまった)
母に対する心境の説明だの、亡くなった母に心で語りかけるだの、そんな野暮なシーンはない。でも伝わってくる。
粋な映画だと思った。
やはり原題のとおり、『マルセルのお城』ではなく、『母の城』のほうが私にはストンとくる。
幸せな時代と物悲しさ
総合:80点
ストーリー: 80
キャスト: 75
演出: 80
ビジュアル: 75
音楽: 75
前作の「マルセルの夏」同様に豊かな少年時代を愛情たっぷりに描いている。だが美しい自然に触れて驚きつつもそれを堪能した前作とは異なり、初恋と城への道との話が中心になる。その分、前作のような田舎の生活と仲良くなった地元の少年リリに触れ合う描写はあまりなくなってしまって、そのあたりは見ていてちょっと残念に感じる。それでもほのぼのとした描写は健在で、前作ほどではないけれども彼の黄金の少年時代が楽しめる。
終わりにかけて急に彼のその黄金の少年時代が終わりを告げ、せつなく物悲しい場面に切り替わる。あまりに急激な変化に見ていて戸惑うのだが、それも受け入れなければならない現実の人生なのだろう。彼も二度とあの時代が戻らないことを知っている。美しい物語が終わり、物悲しい余韻が残った。最後に一気に物語を盛り返すいい映画でした。
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