劇場公開日 2022年4月15日

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「初公開当時の空気感を憶えている者だけが堪能出来る特別なオーラを纏った出来損ないだけど愛おしい作品」フラッシュダンス よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0初公開当時の空気感を憶えている者だけが堪能出来る特別なオーラを纏った出来損ないだけど愛おしい作品

2022年4月19日
iPhoneアプリから投稿

結論から言うと余り4Kで観るメリットはないです。映像そのものはそんなに解像度が必要なものじゃないので。ただリマスターされたクリアな映像は当時のフィルム上映よりも鮮やかなので当時の記憶を上書きするだけの力があります。映像よりもオーディオシステムの方が重要かと。

冒頭のシンセサウンドだけで襟首を掴まれるような衝撃を感じるのは1983年当時を知っている者だけの特権。実際映画そのものは物凄くチープ。派手な照明でデコッたりテレビに電球と扇風機を仕込んだりといった学園祭レベルのガジェットが大活躍。とにかくどうでもいい会話シーンですら無駄にフェティッシュで艶かしいのがいかにもエイドリアン・ラインらしい。I Love Rock ‘N Rollが流れるスポーツジムのシーンなんて背景真っ白。アレックスとニックがデートを重ねるのはピッツバーグの廃墟。お話も拙速過ぎてアレックスの心情をちゃんと汲まないからラストシーンも唐突過ぎる。コメディアンを夢見てLA に旅立つコックのリッチーもコックにすらなれずに不貞腐れて帰ってくる。何もかもがデタラメ。しかしそんな枝葉末節がどうでもよいほどに物語を彩る楽曲が素晴らしい。もう40年聴いている音が40年前のあのシーンに重なった瞬間に総毛立つこの感動は当時を知らない者には全く理解不能なものでしょう。

ということでアラフィフはしのごの言わずにサントラ聴きながらシネコンへ行きましょう。そして帰宅したら原田知世の『愛情物語』も観ましょう。角川春樹の狂気をよりビビッドに堪能出来ます。

よね