「戦場に吹く無常の風に心を打たれる…。しかし170分は長すぎる。」プライベート・ライアン たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
戦場に吹く無常の風に心を打たれる…。しかし170分は長すぎる。
ノルマンディー上陸作戦を舞台に、ある兵士を保護するミッションを課せられた兵隊達のドラマを描く戦争映画。
監督/製作は『インディ・ジョーンズ』シリーズや『ジュラシック・パーク』シリーズの、巨匠スティーヴン・スピルバーグ,KBE。
脚本には『ザ・フライ2/二世誕生』(脚本)や『ショーシャンクの空に』(監督/脚本)のフランク・ダラボンが携わっている。
保護作戦の指揮を取るレンジャー大隊C中隊長、ジョン・H・ミラー大尉を演じるのは『フォレスト・ガンプ/一期一会』『トイ・ストーリー』の、レジェンド俳優トム・ハンクス。
ミラー大尉の部下、エイドリアン・カパーゾ二等兵を演じるのは当時は無名の俳優だったヴィン・ディーゼル。
作戦の保護対象、ジェームズ・フランシス・ライアン一等兵を演じるのは『レインメーカー』『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の、名優マット・デイモン。
音楽は『スター・ウォーズ』シリーズや『ジュラシック・パーク』シリーズの、巨匠ジョン・ウィリアムズ。
👑受賞歴👑
第71回 アカデミー賞…撮影賞、音響賞、編集賞、音響編集賞、監督賞!✨✨✨✨
第56回 ゴールデン・グローブ賞…作品賞(ドラマ部門)、監督賞!✨
第64回 ニューヨーク映画批評家協会賞…作品賞!
第24回 ロサンゼルス映画批評家協会賞…作品賞、撮影賞!✨
第4回 放送映画批評家協会賞…作品賞!
第二次世界大戦における苛烈な戦場を生きる一般兵たちの目線から、戦争の悲惨さと生命の尊さを観客に教えてくれる、戦争映画のお手本の様な高いクオリティーの映画。
特に冒頭20分のオマハ・ビーチでの死闘は、後世まで語り継がれているのも納得の凄まじい描写!
バババババッと撃ち倒されていく兵士たちの死に様は、あまりにも凄惨。臓物や肉体の欠損も容赦無く描かれるのでなかなかにしんどい映像になっています。
また、ヘルメットによって助かった兵士が、ヘルメットを脱いだ瞬間に頭を撃ち抜かれたり、通信していた兵士が次の瞬間には死体に変わっていたりと、兵士たちの死に方は見様によってはシュールなギャグの様。この演出によって、戦場における「死」とは悲劇的というよりは不条理なものであるということが強調されている。
冒頭は迫力があり引き込まれたが、その後の展開はやや退屈。やはり170分という尺は長すぎる。
お話としては行方不明のライアン一等兵を探して連れ帰るというシンプルなものなので、こんなに長い上映時間が果たして必要だったのかは甚だ疑問。
本作は映画監督フランク・ダラボンがスクリプト・ドクターとして携わっているが、彼の作品は大体上映時間が長過ぎるという特徴がある気がします。本作の冗長さが彼の責任だというつもりはないですが、もう少し脚本をシェイプアップする事は出来たと思います。
大体、戦争映画は各キャラクターの見分けが付かなくて困る。全員同じ軍服着てて、しかもヘルメットまで被ってるんだもん。その上顔は薄汚れているしでもう判別不能。
本作も例外ではなく、トム・ハンクスやマット・デイモンは流石にわかるのですが、その他の兵隊たちはそれぞれの区別が出来なくて困りました。誰が誰やらわからん。ヴィン・ディーゼルも若過ぎて今の面影がないっ!
とはいえ、その中でもスナイパーの人はキャラが立っててかっこよかったです。このバリー・ペッパーっていう俳優さん、どこかで見たことあると思ったら『グリーンマイル』(1999)の看守の人だ!トム・ハンクス&ダラボンと縁がある人なのね。
クライマックスの展開はベタです。…がしっかり泣きました。
「どんな人間でも、その命は多くの犠牲の上に立っていることを忘れるな。精一杯生きろ」というメッセージを突きつけられると、命を無駄には出来ないなと考え込んでしまいます。
流石スピルバーグというべき、命の尊さというテーマ性と激しい戦争のアクション性が見事に融合した、一見の価値がある傑作っ!…長いけど。
余談ですが、何故ただの農家の倅であるライアンを、他の兵士の命を危険に晒してでも救助せよという命令が下されたのか疑問でした。てっきりライアンは偉い人のご子息か何かなのかと思ってたけどそうじゃないらしい。
どうやらアメリカには「ソール・サバイバー・ポリシー」というルールがあり、これは3人以上の兄弟姉妹が従軍しており、そのうちの1人を残して全員が戦死してしまった場合、その唯一の生存者は帰国できるというものの様です。
この辺の事を知っていないと、本作のストーリーにちょっと混乱してしまうかも?