「ハル・ハートリー監督が3ヶ国で撮った実験映画」FLIRT フラート たいちぃさんの映画レビュー(感想・評価)
ハル・ハートリー監督が3ヶ国で撮った実験映画
ハル・ハートリー監督が、同じような状況で同様のセリフをいう風景を、ニューヨーク/ベルリン/東京の3つの都市において違う俳優を起用して描いた実験映画。
3エピソードのあちこちで、ハル・ハートリー監督作品の常連俳優が見られるのは嬉しい。
特に嬉しいのは、やはりエレナ・レーヴェンソン。
[ニューヨーク、1993年2月]&[ベルリン、1994年10月]&[東京、1995年3月]のドラマだが、いずれも(男女入れ替えなどはあるものの)ある人の恋人が仕事で外国に3ヶ月いくことになり、長距離恋愛を続けることに不安な残される者を主人公に据えたかたちで描かれる。
その主人公は、いずれもモテ男・モテ女だが、外国行く相手から「私たちに未来はあるか?YES or NO ?」と尋ねられるが、明確な答えは出せないでいる。
3つの場所で描かれる三角関係は、3パターンの工夫がなされており、人妻と男と人妻、黒人男と白人男と白人男の妻、白人男(ハル・ハートリー)と日本人女(後のハートリー夫人となる二階堂美穂)と女……といったジェンダーレスなあたりは、時代を先取りしたように見える。(※ 本作は、1995年作品)
拳銃もポイントになる小道具だが、日本での拳銃所持を見られた女性は、普通なら「拳銃不法所持で即逮捕」となるはずだが、このあたりは少し詰めが甘い感じがした。
東京編では、永瀬正敏や松重豊も出演している。
また、東京ロケ地も大久保駅あたりから新宿付近の風景が見られて、当時たくさんあった公衆電話の様々なバリエーションも見られて懐かしい。
旧新宿ピカデリーの上映宣伝看板、新宿松竹の看板も懐かしい。
それなりに楽しめるのだが、同様エピソードを3つの国で撮ったオムニバスだが、もう少し、[違い]を盛り込んでも良かったのではないだろうか。
(※)個人的には、本作で[日本公開されたハル・ハートリー監督作品(複数の短編映画を含む)]を全作鑑賞した。今後は、新作が発表されるのを待つ。