冬の猿のレビュー・感想・評価
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あら。あらら。なんなんだろう、この感動は?
タイトルは知ってましたが、全くもっての初鑑賞です。今日まで、コレを見なかった自分を「馬鹿かお前は!」って叱っているところです。と言うか、見て良かったよw
第二次大戦中ドイツ占領下時代から、大戦後のフランス。ノルマンディの海岸線沿いの観光地が舞台。時代設定から推測するに、八か国連合軍の下級士官として中国戦線に参加した、退役軍人であるアルベール。妻との約束を守り、酒を絶って「宿屋」を経営しています。酒場の主人であるユノーとは、酒を絶って以来、関係も断絶しています。
雨の降る晩、ふらりと村にやって来たフーケ。身元も良く分からなず謎に包まれています。泥酔しながら、ジプシーの様にフラメンゴを舞い、交差点で闘牛士の真似事をする。彼の目的は、村の外れの寄宿舎に入っている娘を引き取る事。
多少のエピソードを挟みながら物語は進行。ある夜、妻との約束を破り泥酔したアルベールとフーケの2人は、寄宿舎に夜襲を掛けるものの、その場は追い返されます。
雑貨屋の花火を、浜辺で派手に打ち上げるアルベールとフーケと雑貨屋の主人。村中の人々が集まって来ます。回転花火が派手に回る中、逃げ出す3人。半壊のトーチカで夜を明かしたアルベールとフーケが宿屋に戻ると、そこには夜襲を掛けて引き渡しを要求した娘マリーの姿があり。
パリに戻る父と娘。父親の墓参りに向かうアルベール。3人は列車に乗り、アルベールは冬の迷い猿の話をマリーに聞かせる。乗り換えのために、列車を下りベンチに腰掛けるアルベール。フーケとマリーを乗せてホームを出て行く列車。
アルベールの時間は止まり、フーケとマリーの人生は先に進んで行く。冬の猿が迷いから救われ、進むべき道に進んで行く、って言うだけの物語りです。
延々とアル中のおバカ描写が続きます。多少ウンザリして来ます。と言うか、酔っぱらった時のジャン・ギャバンの演技のテンションにはビビりますw
からのマリーですよ。からの妻スザンヌの達観したやさしさですよ。
これが、どえらく染みる。ガバーーーーって来ましたw
監督:アンリ・ベルヌイユ
脚本:フランソワ・ボワイエ
台詞:ミシェル・オーディアール
撮影:ルイ・パージュ
音楽:ミシェル・マーニュ
もうね、みんなの名前を額縁に入れて飾りたいくらいに素晴らしい。音楽は現代的な旋律で魅力的。カメラに映るものに合わせたアレンジ(欧州的→中国旋律)とか素敵すぎる。画の作りも緻密です。ホテルの中をフーケがうろつくシーンのカメラの動きとか痺れます。
なんか。一本の映画に、全身全霊を注いだんだろうなぁ、って言うのが伝わって来る造り込みに最敬礼します。
良かった。とっても。
珠玉、と言う言葉に相応しい名画だった。
ジャン・ギャバンとジャン=ポール・ベルモンドだぞ
若い頃の思い出に浸ることは誰にだってある。そこからなかなか脱け出せなくて苦しくなることもある。若い人の中に昔の自分を見つけて懐かしくなったり、時間を共有することで癒されたりするということもある。その若い人が人生とうまく折り合いをつけられていないとすれば、そっと寄り添ってみたくもなるだろう。そんな初老の男をジャン・ギャバンが演じ、若い男をジャン=ポール・ベルモンドが演じている。
街の外れの修道院にいる娘を引き取りにきた若い男は別れた妻にまだ未練があり、スペインで闘牛士をしていた過去が忘れられない。酔っぱらって酒場で大騒ぎをしたり、通行するクルマを相手に闘牛士のまねごとをしたり、周りの普通に生きている人達からは困った余所者として顰蹙を買う。そんな若い男に、投宿していたホテルの主人である初老の男が寄り添う。話を聞いてやったり慰めるというのではなく、行動をともにするのだ。酒場で大酒を食らって喧嘩をしたり、冬の海岸で大花火を何発もぶっぱなしたり。
最後に若い男は修道院から無事娘を引き取ることができ故郷に帰っていく。
中国の故事に"冬に街に降りてきた猿をもてなし森に返してやる"というのがあるそうだ。ベルモンドはまさしくこの冬の猿なのだ。
60年前のモノクロフィルムのなかで、伝説的二人の名優が素晴らしい演技を魅せてくれます。
酔いと共に遠くへ過去へ行く
ジャン・ギャバンの声、台詞、演技に感動しました。そしてまだ20代のベルモンドが受けてたったきれいで自然な芝居は最高でした。ギャバンの台詞からは自分の目の前に広い広い揚子江が浮かび上がり、ベルモンドのフラメンコ・ステップと車相手の闘牛士ごっこからはスペインの太陽を感じることができた。台詞の一つ一つがすばらしかった。
戦争、ドイツ兵、空襲、地下室、ナチス占領下の海辺の町、雨が多くて曇りがちの寒そうな町。兵士としてでも旅した土地、遠い国での思い出や見たこと経験したことを作り話も含めて語ったり思い出すのは、お酒の酔いと共に。そこに同じお酒を飲む相手がひとりいてくれれば何時間でも語って飲み続けることができるだろう。翌朝は後悔したり恥ずかしい気持ちになるけれど。酔っ払い人間には悲しい黒い色が自分の中にポチッとある。酔っ払いの演技は普通に歩くのと同じ程難しいだろう。二人の酔っ払い具合は筆舌しがたい程うまかった。そして酒を飲む代わりに飴玉を口に放り込むギャバンから目が離せなかった。
猿顔と言われたというベルモンドが本当に可愛らしく美しくさり気なくお洒落で、そこに居るのはまさにフーケという、昔の恋人を今でも思い、寄宿舎で仲間はずれにされている10歳の娘を愛する一人の若い男以外の何者でもなかった。沢山の打ち上げ花火はモノクロであることで余計に頭の中の花火を美しくしていた。
おまけ
ベルモンドは運動神経抜群だがダンスはそうでもないのかもしれない。フラメンコ・ステップ場面ではベルモンドの上半身と下半身を別々に映していた。「アマゾンの男」でベルモンドがタップダンスを披露する箇所があって、その時も上半身と下半身分けての映像で当時67歳なので脚部分はダブル・スタントなんだろうと思った。「冬の猿」のベルモンドは28~9歳だから年齢の問題ではないんだろう、多分!
ベルモンドのノルマンディ人情夜話
正確には、主演はフランスの国宝ジャン・ギャバンだけど、当時の新旧スターの共演が楽しい人情ものです。冬になると町に降りてくる迷い猿をもてなし山に返してやると言う、中国のお話しが下敷きになっていて、人生を迷っている青年ベルモンドを偏屈親父のギャバンが無愛想ながらも優しく接してやるのが、心温まります。一方で、ギャバン自身も迷いや悔いがあり、自分自身をベルモンドに投影している感じです。モノクロ映像も美しく、海岸の仕掛け花火の下を二人が去っていく余韻のあるシーンは素晴らしいです。役者では、主演二人の酔っ払いぶりが圧倒的で、演技と言うより芸に近く、重厚なイメージのギャバンの演技の幅に感心しました。ベルモンドの鬱屈した青年役もナイスです。
冬になると迷い猿が・・・
戦争で中国へ行っていたのか、酔っ払いの戯言と黄河の模型に酒を入れるシーンが印象的だ。黄河に対して揚子江は青河と呼ばれる。その二本の大河を繋ぐと緑河になる。中国国民に春の緑色を分けてあげたいなどといった、戯言としか思えないところがいい。しかも外は大戦中。空襲警報が何度も鳴る。
酒の飲み過ぎを注意され、アメを舐めることになったとき、スペインからガブリエルという闘牛士気取りの男がやってきた。彼もまた酒癖が悪い。飲み屋で「タイクツな町」だと言って暴れ、アルベールのホテルへ運び込まれた。
終盤の花火のシーンが白黒ながら迫力あった。もちろん冒頭の空襲シーンも凄かった。女学生の集団は何かのメタファーなのか、よくわからなかった。
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