「「武器よさらば」とは厭戦による軍隊からの脱走のことだった…」武器よさらば KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
「武器よさらば」とは厭戦による軍隊からの脱走のことだった…
NHKの「100分de名著」の
ヘミングウェイスペシャルを見た後、
「移動祝祭日」と「老人と海」を読んだり等、
少し彼の世界を
囓っていたことがなければ、
たまたまNHKで放送されたものの
キネマ旬報でどなたからの1票も
獲得することのなかったこの映画を
鑑賞する気にはならなかったかも知れない。
前半は不要に思われるシーンが
長々と続き没入出来なかったが、
後半の要衝地からの撤退シーン以降になって
少しは作品の世界に入り込むことが出来た。
そこでは、戦争による悲惨さと理不尽さが
これでもかと叩き付けられるような描写が
続き、ようやく作品の要点が見えた。
そして、病院の攻撃シーンなどは、
現在のロシアによるウクライナ侵攻をも
思い出させられる。
ところで、戦時における
国際上の軍規のことは分からないが、
この物語の場合
状況的に難しいケースではあったろうが、
主人公は外国からの志願兵なので
厭戦なのなら脱走ではなく除隊すれば
よいと思うのだがどうなのだろうか。
また、戦争が遠因なのかも知れないが、
かなりのボリュームでの
最終話の難産による母子の死は
この物語全体の中でどんな位置付けなのかが
私には理解が出来なく、
全体に冗長感漂う雰囲気と共に、
この作品の評価そのものに影響している
ように感じる。
この物語、ヘミングウェイはどんな点に
ウエイトを置いて書いた作品だったのかは
分からないが、
少なくとも映像作品として
戦場シーンにお金を掛けた割には
演出力がついて行っていない感じを受けた。
それにしても中盤での
「ドイツは兵器開発に力を注いできた、
イタリアは文化に力を注いだが
戦争では何の役にも立たない」
との上官の話は、
他国へ軍事力で侵攻する国のある昨今、
不気味な台詞として心に残った。