戦場よさらばのレビュー・感想・評価
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良い演出で充分楽しめました
DVDには「武器よさらば」となっています 日本公開時の名前が「戦場よさらば」です 原作はヘミングウェイの名作です 1918年の第一次世界大戦の終戦から15年後の1932年末の公開で、日本はその翌年夏の公開 原作は映画化の3年前にベストセラーになっています この内容で戦前の日本でも公開できたのですね 日本で公開された昭和8年頃はまだ平常だったのこもしれません 4年後の支那事変以降は戦時体制となって、最早本作のような、愛を貫いて将校が軍を脱走するなんて映画はもってのほかで公開できなかったでしょう お話はほぼ原作どおりです 従軍看護婦と軍医療部隊の将校との悲恋物語です 映像演出が大変優れています 序盤の防空壕での、パンプスを彼女の足に履かせるシーンはシンデレラのモチーフで、運命の出会いであると一目でわかるようにしています 終盤の死の床での結婚式は特に名シーンです ベッドに横たわる彼女にほほ寄せて結婚の永遠の誓いを互いに述べ終わると共にこときれ、いつしか夜は開け、終戦を祝う鐘は二人の結婚を祝う教会の鐘のように鳴り響きます そして晴れ渡った空に受けて鳩が幾羽も飛び立っていくのです 今日の目からすればちょっと臭いのではと思うかも知れませんが、このようなスタンダードな直球の演出はこの時代に完成されたものですから、当時の観客に取っては初めて観る感動的な演出なわけです さぞかし涙を流して印象に残ったことと思います 21世紀のすれた観客でも素直に感動できるものです ゲイリー・クーパーが愛に必死になる姿はなかなか他の作品にはないものです 190センチもあるゲイリー・クーパーに対して ヒロインのヘレン・ヘイズは大変に小柄で身長差が30センチはありそうです キスもクーパーが屈み込んで彼女も真上を向くような姿勢になり大変そうです 監督が敢えてバランスを欠くほど背の低い彼女を配役したのは、それによる彼女のか弱さ、可憐さを強調するためですが、劇中で主人公が彼女を探す時に同じ看護婦の制服ばかりで背の低い看護婦を彼女ではないかと覗き込んでまわるシーンでこの身長差が見事に活きていました 撮影も当時にしては陰影や中間色の表現も良く、特に戦場表現は効果的でした なるほど撮影部門アカデミー賞を受賞しています 1957年のリメイクも観て観たくなりました
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