「受け入れて活かすこと。一途。」フォレスト・ガンプ 一期一会 movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
受け入れて活かすこと。一途。
人生2度目の鑑賞を子供とするとは。
フォレストは幼少期は脚が不自由で知能面で低IQの子供だったが、女手一つでフォレストを育てる母親の尽力により(というか校長と関係を持ち)養護学校に入らず、普通学校に進学できた。
そこで白い目で見ず優しくしてくれたジェニーと友達になるが、ジェニーは母亡き後父からDVか性被害に遭っていて、とにかく帰宅を避ける人生を辿る。
その間、フォレストはある日、いじめっ子から逃げるために全速力で走ってみたら矯正器具なしで群を抜いて速く走れるほどに脚は成長していて、脚の速さでラグビー推薦の大学進学、卒業、陸軍、ベトナム出兵、仲間を走って助け帰還し勲章、卓球で軍の慰安活動をし大統領に会うなど、どんどん人生が開けていく。
軍で仲良くなったババはベトナムで命を落としてしまったが、遺志を継ぎ約束を果たすために、エビ獲り漁船に大金を注ぎ込みババ&ガンプ社を立ち上げ、軍で上司だったが両足を負傷しなくしてしまったダン中尉を指揮官として船に乗せ、中尉と大金を稼ぐ。
中尉のはからいでアップル社にお金が投資されており、一生困らない資産を得たフォレストガンプはアメリカ全土を走って回ったり自由を得た。
フォレストの人生の節目節目で会えたり会いに来たりするジェニーのことを、子供の頃から一途にフォレストはずっと毎日想い続けている。
ジェニーは無意識に大切にされない記憶が根付いてしまっているのか自分に自信がなく、プレイボーイに載ったり、裸同然でステージでフォークソングを歌ったり、ライターDV男や薬中男とヒッピーをしたり放浪生活をしていてとにかく危なっかしい。
何度もジェニーを止めるフォレストを度々振り切るジェニーだったが、疲れ果てたある日、帰る家なく、母を天に看取った後のフォレストの家に戻ってくる。
そして、恋愛対象を超えた存在の、一番大切にしてくれる存在はフォレストだとやっと気が付くのだが、好きなだけ眠り続けた後、フォレストの求婚には応えず、出ていく。
そこからやっと生き直すかのように仕事をして、雰囲気も憑き物が取れたかのように変わるジェニー。
フォレストが再開した時には、ジェニーにはフォレストとの息子が産まれていて、一方ジェニーはウイルス性の病で最期が近付いていた。
ジェニーと結婚をし式をあげ、ジェニーを看取り、息子を1人育てるフォレストの人生となった。
作中、どちらも片親のフォレストとジェニーだが、愛をもって育ててくれる存在があったかで、人生がこれだけ変わるのかと比較の視点が与えられる。
フォレストは、周りの空気を読んで決めるような複雑な判断や、関わる人の心境を読んだうえでの会話はできない。でも、素直で、ひとつの命令を遵守するのは得意。なので人から好かれるし、とにかく走ったり、軍のトップダウン指示に従ったり、球をよく見て打ち返せば良い卓球などはとても向いている。
そのフォレストに軍の良き上司として接してくれていたダン中尉が、戦況が進んでも変わらず、爆撃を受けて足が吹っ飛んでも軍のメンバーを守り抜こうとしていたにも関わらず、お尻に弾が当たったもののダン中尉を救い出して勲章まで貰ったフォレストに対して罵声を浴びせる酒浸りになってしまった描写が哀しく印象に残った。
「運命は自分で決めるもの」と言っていたフォレスト母とは反対に、ダン中尉は、
「神父が神の道を「歩め」と言った。歩けないのに!神なんていたらどうしてこんな目に遭うんだ」と嘆く。
人生上手く行く時は良いが、思い通りでない時の方が長かったりするが、そこで神や運命なんだとすんなり受け入れられる人はそうそういないだろう。
でも、フォレストが守り、殉職で勲章を貰い損ねたダン中尉が、フォレストの海老漁船に乗り込んで脚がないのに海賊のように帆に登って指揮官となり、大漁を当てて人生が好転し、最後は「あの時助けてくれてありがとう」とフォレストに心から言う場面は本当に感動する。命あってこそなんだなと。
くさくさしかできない時にはしていても良いけれど、
なくした足や、なかった愛を嘆くより、
ある命を大切にできた時、初めて運が向いてきて運命を決められるようになるのかなと思った。
I'm Forrest, Forrest Gump.
必ず2回名乗るフォレストの名前の由来は、KKK創始者と、アラバマ州方言の間抜けやお馬鹿という意味から。図らずも救い主のようになっていく知的ハンディキャップを持つ主人公に合っている名前だと思った。
しかし、ジェニーの連れている子供が、自身の子供だとわかったフォレストが、「どこか悪いところはないのか?頭とか。」と聞く場面で、フォレスト自身も自分の持つ知的障害を自覚したうえで、受け止めて生きてきたのだと一気にわかる。
ジェニーから恋愛対象ではないとやんわり逃げられたりしても、「でも僕は君を殴らない」「君のお世話をして暮らす」と話していたのは、ジェニーの微妙な心境を理解できないからではなく、踏み込んでまで大好きなジェニーを守りたくて、物理的経済的にそうできる自信も
あったからなのかと気付く。なのに、想い続けても追わなかったフォレストは、とても一途な男である。
サブタイトル一期一会よりも、「一途」がしっくりきた。
きっと、フォレストの視点での半生振り返りでなければ、周りに迷惑をかけたりフォローして貰ったりも沢山あった人生だったと思うが、フォレストの開けていく人生をフォレスト自身が驕ったりは一切ない。
ただ、目の前を生きている。
まっすぐ全速runが人生に通じていくが、
オリンピックに出ることになり活躍、などではなく、
ダン中尉とジェニーが生きる喜びを取り戻す光になる脚本がとても良かった。
幸せは立場や仲間がいるかではなくて、生きたいと思えているかなんだなとしみじみと感じた作品。